“1000億円”がいつの間にか“2000億円”に… 2倍に膨れ上がった『アジア・アジアパラ競技大会』の経費「Make Aichi Great予算」 開催まであと1年半…県民の不安も増大 愛知県
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大会経費最低でも2倍超えの見込み
予算規模が拡大した一因は、2026年9月に愛知県などで開催されるアジア・アジアパラ競技大会。最大45の国や地域から約1万5000人が集まるアジア最大のスポーツの祭典ですが、この大会の経費が膨れ上がっているのです。
当初の予定では、愛知県は約490億円を負担することになっていましたが、現時点で見込まれる経費は約862億円。名古屋市の負担額も約250億円から約623億円に拡大しています。
この理由について大村知事は、資材高や原油高、建築資材の高騰などを挙げていて、愛知県・名古屋市ともに、再来年度予算ではさらなる経費の追加が予想されます。
アメリカのトランプ大統領を意識して銘打ったという「Make Aichi Great予算」。県民にとってグレイトな予算となるのでしょうか?
愛知県の判断が裏目に?
アジア・アジアパラ競技大会まであと1年半。当初予定していた予算から大幅に膨れ上がり、組織委員会の会長である大村知事にとっては厳しい状況となっています。
これまでの経緯を見ると、2016年当初は大会経費全体を約1000億円と見込んでいましたが、今回出された県と市の新年度予算案では、最低でも2000億円はかかる見込みとなりました。経費増大の理由として、物価高や人件費の高騰などが挙げられていますが、当初の見積もりが甘かったのではという指摘も。
さらに、こうした大規模なイベントは予算規模も大きいため、県民の理解を得ることが必要不可欠ですが、アジア・アジアパラ競技大会については、これまで十分な説明がされてきたとは言いがたい状況です。2024年から一部報道で予算が高騰することは報じられていましたが、大会予算の全体の規模感というのは説明されてきませんでした。
これについては地元議員たちも反応していて「なぜ今まで説明がなかったのか」「もっと早く説明するべきだ」などと委員会で強く追及する場面も見られました。
なぜ今まで県民に対して具体的な説明がなかったのでしょうか。
関係者によると、組織委員会側は東京オリンピックや大阪万博で経費の拡大が批判される様子を見て、数字だけが独り歩きするのを避けたかったのではないかということです。さらに、公式に発表された情報ではないものの、大会の主催者であるOCA(アジアオリンピック評議会)側からも、設備などの充実のために予算は4000億から5000億円規模でという要望が出されたという話もあるといいます。
経費増大でもっとも影響を受けるのは“名古屋市民”?
アジア・アジアパラ競技大会の予算増大で、もっとも大きな影響を受けるのは名古屋市民です。
多くの競技が名古屋市で行われるということもあり、大会の予算は愛知県と名古屋市が2対1の割合で負担することになっています。つまり3分の1が名古屋市の負担なので、他の市町村よりもかなり大きくなっているのです。
当初の想定では約250億でしたが、現時点で約623億まで膨れ上がり、差額は373億円に。
こうした状況により、就任3か月にして大きな課題を突きつけられたのが、名古屋市長の広沢市長です。広沢市長は、市民税の減税を5%から10%に拡大することを公約として掲げていますが、この必要経費が約200億円。さらに、名古屋城の天守閣木造化にかかる必要経費は約505億円なので、差額の373億円があれば、市政でさまざまなことが実現できます。
広沢市長の計画では、来年度の予算は就任時にある程度決まっていたため、再来年度の予算で広沢カラーを前面に出していく予定でしたが、再来年度にも大会経費が影響するのは確実な状況です。
広沢市長に近い関係者によると、アジア・アジアパラ競技大会の費用がこれだけ大きくなっていることに広沢市長も驚いていて、「大会経費がなければ公約実現にむけて動けるのに」と話していたということですが、とはいえ、これが理由で公約を達成できなかった…では済まない苦しい立場。
まさに今、広沢市長の手腕が問われています。
県と市が考える“3つの策”で打開できるか?
アジア・アジアパラ競技大会の経費増大。県や市は今後どう対処するつもりなのでしょうか。
現状では、3つの策があると考えられています。一つ目は「経費の削減をさらに進める」、二つ目が「スポンサー集めをする」、三つ目が「国の支援」です。
しかし、大会の経費削減はすでにかなり進められているので、これ以上となると難しいのではないかという指摘も。スポンサーもどこまで集まるのか未知数であり、国への支援要請はすでに出していて、国がどう判断するのか待っている状況で、この3つの策は、いずれも不透明と言わざるを得ません。
アジア・アジアパラ競技大会の開催まであと1年半。県民市民はもちろん、出場する選手たちにとっても良い大会になるように、その動向をこれからもしっかりと注目していく必要がありそうです。