オリーブオイルの価格が2倍に!? 高騰のワケは世界の異常気象 “負の連鎖”を断ち切るには…?
オリーブオイルの価格が高騰しています。そのワケを探ると、日本から遠く離れたスペインの異常気象に辿り着きました。日本の異変は、世界で起きている“負の連鎖”のひとつだったのです。異常気象を食い止めるに、私たちは何をすればいいのでしょうか…?
スペインの異常気象でオリーブオイルの価格が2倍に高騰
名古屋のイタリアンレストラン「オステリア ラウラ」で作っていたのは、オイルベースのパスタ。こうしたメニューに欠かせないオリーブオイルの価格が高騰しています。取材した日も、仕入れ業者が値上げを知らせる用紙を持ってきました。別のオリーブオイルも半年間で値段が2倍以上に高騰するという、異例の事態が起きています。
この店では、オイルを変更したり、メニューを工夫したりすることで値上げをこらえていますが、メーカー各社は家庭用の商品も5月納品分から値上げすると発表。
「オステリア ラウラ」の代表・野呂雅之さんによると、価格高騰の原因はスペインを中心に続いている干ばつだといいます。一体何が起きているのでしょうか…。
そこで、中京テレビ「キャッチ!」は、名古屋からスペインへ。そこで目にしたのは、取り返しのつかないまでに深刻化した被害でした。
乾燥に強いはずのオリーブが…枯れた畑に呆然とする農家
唯一無二の建築や芸術をはじめ、世界最大のオリーブ生産国でもあるスペイン。
先祖代々オリーブ農家を営むリャベリアさんの畑を見せてもらうと、乾燥に強いとされるオリーブが水不足に耐えられず、葉が黄色く変色していました。
水源だったダムからは水の供給が止まり、車で水を運んでまいたりもしましたが、まさに焼け石に水でした。リャベリアさんは「雨が降らなければ廃業しなければいけない」と話します。
こうした事態はスペイン全土に広がっていて、日本のオリーブオイル高騰に繋がっていたのです。
干ばつが作った絶景が新たな観光名所に
かつてないレベルの干ばつは“予想外の事態”を引き起こしていました。
町外れの森を抜けた先にあったのは、両側に切り立った崖がそびえるグランドキャニオンのような景色の中に、取り残されたようにたたずむ教会。
そこでカメラを持った男性・ジョアンさんに出会いました。11世紀に建てられたというこの教会を、毎週撮影しているそうです。ジョアンさん以外にも、周りには大勢の観光客の姿がありました。実は、この場所を訪れる人は、ここ数年で急増しているのです。それにはあるワケがありました。
もともと教会が建っている場所は貯水池になっていて、水が満杯だったときは教会の屋根の先端まで水があり、全貌を見ることができませんでした。しかし、干ばつによって貯水率はわずか1.1%にまで激減(3月4日時点)し、教会が姿を現したのです。
この異様な光景に多くの人が惹きつけられ、干ばつが新たな観光地を作り出していました。
連鎖する世界の異常気象 日本も人ごとではない…
こうした事態に、スペインのカタルーニャ州政府は干ばつによる非常事態を宣言。一部の町では住民に節水を呼びかけています。町の中心部にある公園の噴水にも水はなく、完全に干上がっていました。
町から配布された節水を呼びかけるチラシには、庭に水をまくことや、自宅で洗車することを禁止し、1人あたりの水道使用量は90リットルを推奨。違反者を見つけたら市役所や警察に通報ができ、罰金まであるのです。
スペインの干ばつはこれほどまでに深刻化していますが、専門家は日本も人ごとではないと指摘します。
三重大学 異常気象を研究 立花義裕教授:
「ヨーロッパで偏西風が激しく蛇行すると、日本も一緒に蛇行する。日本付近も寒い暑いの極端な気象が起きやすくなる」
偏西風は通常ほぼまっすぐ流れて、北が寒く、南が暑くなりますが、近年これが大きく蛇行。砂漠の気候がスペインにまで広がり、雨が降りにくくなったといいます。これには、地球温暖化の可能性も指摘されています。
この蛇行は日本でも起きていて、暖冬や猛暑、大雨をもたらすなど、世界の異常気象は連鎖しているのです。
三重大学 異常気象を研究 立花義裕教授:
「猛暑は災害みたいなものですね。災害を起こしているのは地球温暖化が一因であれば人為でもある。つまり我々は加害者であるかもしれません」
“負の連鎖”を断ち切るため一人ひとりが小さな活動を
異常気象を食い止める対策が求められる中、町の人たちはどんな暮らしをしているのでしょうか。
町を歩いていると、庭の池に水を流している家がありました。この家のジョルディさんに話を聞いてみると、家に雨水を貯めるシステムがあるといいます。
自宅にお邪魔して見せてもらうと、屋根から雨どいをつたい雨水を貯められる仕組みになっていました。以前から干ばつに備えて設置したといいます。他にも、水と空気を混ぜることで節水できる蛇口をつけたり、水圧自体も下げたりしているそうです。
ジョルディさん:
「私は人類が自滅の道を進んでいるような気がします。でも奥さんはそんなに悲観的にならないでといいます。小さな活動かもしれませんが、それが集まれば(異常気象に対して)効果は出るはずです」
深刻さを増す異常気象。今できる限りの対策を始め“負の連鎖”を断ち切らなければなりません。