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原発事故 逃げるのは危険? 屋内退避の運用まとまる

2025年3月28日 8:54
原発事故 逃げるのは危険? 屋内退避の運用まとまる

原発事故で放射性物質が拡散する恐れがあるとなった場合、遠くに避難するのではなく、自宅など屋内にとどまって被ばくを避ける「屋内退避」をするよう決められている地域があります。一斉に遠くに逃げようとすれば、道路は渋滞し、支援の手も届かず、福島第一原発の事故の時のように、混乱の中で、かえって多くの命が失われる危険性があるからです。

原子力規制庁の検討チームは、「屋内退避」の運用について1年間議論し、28日報告書をまとめました。

■「屋内退避」の対象者は

原発から放射性物質が漏洩する恐れが高い「全面緊急事態」となった場合、・半径約5km圏内(PAZ)は避難・半径約5~30km圏内(UPZ)は自宅や近くの避難所に「屋内退避」することになっています。

原発から5キロ以上はなれているUPZでは、緊急時の目安となる被ばく線量を上回る恐れが極めて小さいこと。また全ての地域の人が一斉に避難すると、渋滞などで混乱し、かえって被ばくしたり、体調が悪化したりする危険があることを踏まえての方針です。

屋内退避をすれば、建物の気密性や遮蔽効果のため、内閣府の試算によると、一般的な家屋で被ばくが半分ほどに低減されるとしています。

■地震で家が倒壊したら

去年の能登半島地震では、震源に近い志賀原発は事故にはいたらなかったものの、その周辺でも倒壊建物が発生し、避難路が寸断されました。

自宅が損傷して屋内退避ができない場合、近くの避難所などで屋内退避します。しかし避難所も損傷したり、そこまでの道路が寸断されたりした場合、自衛隊などの協力のもと、原発から半径30キロ以遠のUPZ外に避難することになっています。

原子力規制庁は、能登半島地震で屋内退避できない事例がどれだけ生じたのかなど、個別の例については把握しておらず、今回は検討していないとしています。

一方、自治体からは、原発事故が自然災害と重なる複合災害となり屋内退避が困難となった場合、避難所に入りきれない事態が生じるのではないかとの懸念の声があがっています。

■屋内退避の期間は

報告書では、屋内退避を解除できる状態か確認するには、原発事故から数日程度は必要と記載されています。自宅に備蓄している食料で、少なくとも3日間屋内退避を継続できるものとし、その後も物資の供給などを受けて、屋内退避を続けることが基本としています。

物資が不足するなどし、どうしても屋内退避の継続が困難となった場合、地域毎に屋内退避から避難への切り替えを、国が判断・指示をするとしています。

■屋内退避中は外に出られない?

報告書では、生活を維持するための一時的な外出、例えば
・生活物資の調達
・透析や緊急性の高い治療
・屋内退避継続のための除雪
・家畜の世話などは可能
としています。

さらに、物資の輸送、道路やライフラインの復旧、緊急性の高い医療・介護に携わる人たちなどについては、放射線への対策をしつつ、活動の継続が必要とされています。

■まず自然災害から身を守る

報告書では、原子力災害の多くは、地震など自然災害との複合災害になると想定されるとし、まずは自然災害から身を守ることが基本と改めて記されました。備蓄の呼びかけや避難所の耐震化など、自然災害対策と連携を強めることが極めて重要としています。

しかし、対策の進め方や現状の問題点などについて、具体的なことは整理されていません。規制庁は関係機関との連携や、自治体・住民への周知を進めていきたいとしていますが、今回の検討チームの報告がどう生かされるかは、まだ見通しが立っていない状態です。

今後、報告書を基に、原子力規制委員会で原子力災害対策指針の見直しなどを検討する予定です。

最終更新日:2025年3月28日 9:23
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