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「パートナーと住みたい」LGBTQの部屋探しに立ちはだかるハードルとは

2024年6月30日 14:03
「パートナーと住みたい」LGBTQの部屋探しに立ちはだかるハードルとは
写真:イメージマート
生活にかかせない「住まい」。そこでパートナーと暮らす、そんな当たり前の日常を得るのにハードルを感じる人たちがいます。6月は性的マイノリティの権利などを考える「プライド月間」でしたが、依然として厳しいという、LGBTQのカップルの住まい探しについて、LGBTQ当事者で、一般社団法人fair代表の松岡宗嗣さんに話を聞きました。

■関係性が言えないまま…

現在、男性のパートナーと一緒に暮らしている松岡さん。初めて一緒に住もうと思い、家探しをしたのは7年前でした。

「もともとはそれぞれ別で住んでいて、私が大学卒業するタイミングで一緒に暮らそうってなりました。関係性をカミングアウトするかもあまり話し合わず、とりあえず部屋を探しに行きました」

不動産を仲介する会社の担当者は、二人の関係性について特に関心を示さなかったといいますが。

「家のオーナーさんがね…みたいな感じであんまり(部屋を)紹介できない感じの雰囲気が、結構もう、ひしひしと伝わってきていて」

結局、物件を紹介してもらえなかったといいます。その後、別の業者でも家探しをしましたが、そこでも壁にぶつかることとなりました。

「質問票に関係性の欄があって。書こうとした時に、こちらが何も言ってないんですけど、担当者から『全然”そっち系”じゃないと思うんですけどね!』と笑われてしまって。多分向こうとしては、ある種、気をつかったというか、男性同士のルームシェアで関係性を聞く方が不快に思われる、と考えたんだと思います」

その後、結局本当の関係性は隠したまま、いくつかの物件の内見に行ったといいます。

「担当者から『次紹介する物件は2DKなんです』って話から、『部屋が別なのでお互い女の子連れ込み放題ですね』みたいな冗談を言われて」「そのとき、自分でもびっくりするぐらい生ぬるい笑い声しか出なかった、笑ってかわすことしかできなかったです」

結局、二人で一緒に暮らすことがゴールだと考え、何も言わないまま紹介された部屋を契約したといいます。

「家を探す、という当たり前のことにも心理的、物理的ハードルをすごく感じました。偏見とか、そういうまなざしを我慢してくぐり抜けた感じでした」

■普通に扱われることがうれしい

それから2年。もう少し便利な所に引っ越したいと考えた松岡さんカップルは、再び部屋を探しました。「男性の担当者の方でした。大丈夫かなって思いながら、今回は関係性を聞かれたときに『パートナーです』と答えました」

担当者は「そうですか」と答え、特に深掘りすることもなく、淡々と男性同士のカップルが住める部屋を探してくれたといいます。

「カップルならベッド1つでいいから1LDKでもいいですねーなんて言いながら、本当にスムーズに話が進んで。こっちがあっけにとられるくらい」「こんな普通に扱われることに、ちょっとほっとするし、うれしかったです」

■ハードルはいくつも

前回から2年たち、不動産仲介業者の対応には変化を感じた部分もある一方、物件のオーナーや管理会社の扱いにはまだまだハードルを感じることもあったといいます。

「担当の方が『日本人男性2人なんですけど』とオーナーさん側に問い合わせるとすぐ断られてしまったり」「やっぱりまだまだ偏見が根強く残っているなという感じでした」

パートナーシップ制度についても、そもそも制度自体が浸透していないと感じたといいます。

■家をめぐる環境、実態は

大手の物件検索サイトでは、条件の項目に「LGBTQフレンドリー(注:そうしたカップルに優しい、理解があるという意味」と表記するなど、受け入れに積極的な物件を見つけやすくするなど取り組みも進んでいます。

松岡さんはありがたいと思う半面、同性カップルへの理解が進んでいない現実も感じると話します。「”ペット可”みたいな感じでLGBTQフレンドリーというチェック欄があったりしますが、やっぱりちょっとおかしいというか。フレンドリーとかではなく、そもそも差をつけていること自体が問題だという認識を多くの人が持ってくれたらいいなと思います」

東京・港区のある不動産仲介業者によると、LGBTQの当事者だと明らかにして物件を探しに来るカップルは月に3、4組ほどだということです。一方、港区ではパートナーシップ制度が導入されていますが、同性カップルに紹介できる物件は全体の1~2割ほどにとどまるといいます。

不動産仲介業者担当者「社会全体では理解は進んでいるとは思うけれど、家となると、やはり現実的にはまだまだ厳しいところがある」

■みんなで正しい知識をもって

同性パートナーと住む場所を探すことについて、自身の経験を踏まえて松岡さんはこう語ります。

「わざわざ差別をしようと思って差別してる人はあまりいないと思うけれど、やっぱり無意識の差別や偏見は内面化されてしまっているのかもしれない。それこそ、不動産のオーナーからしたら、トラブルなく長く住んでくれる人を探すという時に、無意識の偏見は、実は全然当事者の実態に沿っていないし、自分が身近に感じていないからただ怖いと思っているだけとか、そういう理由で排除してしまっているかもしれない」「冷静に、知識を得たり学んだり、当事者と実際に知り合ってもらったりして、改善していけばうれしい」

誰もが性別や関係性にかかわらず、自分の生活を選択できるようになるためにも、社会全体で知識を身につけ、理解し合える環境作りが求められています。

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