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【解説】第7波で“新たな対応策”…「改良型ワクチン」10月半ばに 子どもは「努力義務」

2022年8月9日 19:53
【解説】第7波で“新たな対応策”…「改良型ワクチン」10月半ばに 子どもは「努力義務」

新型コロナウイルス“第7波”で再び医療現場がひっ迫する中、オミクロン株への“新たな対応策”の検討が始まっています。

「“オミクロン株対応ワクチン”とは?」
「小児接種“努力義務”って?」
「検査キット、ネット販売へ」

以上の3つのポイントについて、詳しく解説します。

■「改良型ワクチン」ファイザーが承認申請

まずは、新型コロナウイルスの感染状況からお伝えします。NNNのまとめによると、8日に全国で新たに確認された感染者は13万7859人でした。20万人を下回ったのは今月1日以来です。また、152人の死亡が報告されました。

東京都の新規感染者も約3週間ぶりに1万人台になりました。数字だけを見れば、感染者が減ってきたように感じるかもしれませんが、しかし、実際はそうではありません。

8日、後藤厚労相は「増加幅は小さくなっているものの、新規感染者数の急速な増加は継続している。感染レベルは最も高い水準になっている」と述べ、特に若い世代にできるだけ早い3回目のワクチン接種を呼びかけています。

こうした中、厚生労働省は、現在主流となっているオミクロン株にも対応する「改良型ワクチン」を今年10月半ばから、追加接種で使用することを決めました。この改良型ワクチンはファイザー社とモデルナ社が開発していて、従来株とオミクロン株の「BA.1」の両方に対応するタイプです。そして、オミクロン株の「BA.5」と「BA.4」にも一定の有効性が確認されているということです。

接種対象は2回目までを終え、3回目以降の接種を受ける人が対象となる方向です。年齢は18歳以上など制限する可能性もあり、現在は検討中ということです。

改良型ワクチンについては8日、さっそくファイザー社が製造販売のための承認を厚労省に申請しました。承認され次第、9月から輸入が始まり、自治体の接種態勢が整う10月半ば以降にも接種が始まる方針です。

■5~11歳 義務じゃないけど…「努力義務」

一方、オミクロン株が流行し始めてから、10代以下の子どもの感染が増えています。特に先月から急速に増え始め、厚労省によると、先月27日から今月2日までの1週間では、31万7486人の感染が確認され、第6波のピークの2倍以上となっています。

5~11歳への小児用ワクチン接種も今年2月から始まりましたが、2回目を終えた子供は、2割にも満たない状況です。

小児用ワクチンの接種を後押しするため、厚労省の専門家会議は5~11歳への接種を、保護者の「努力義務」にすることを了承しました。

保護者の「努力義務:とは、予防接種法の「接種を受けるよう努めなければならない」という規定です。「義務」ではないので、接種を強制するものではありません。あくまでも本人と保護者が納得した上で、接種に協力してほしいという趣旨のものです。

なぜこのタイミングで「努力義務」が適用になったのでしょうか。これまでも議論が続けられてきましたが、8日、厚労省の専門家会議で海外の新たなデータが示されました。シンガポール保健省によると、5~11歳の子どもが2回接種をした場合、感染予防効果は36.8%、入院予防効果は82.7%だったということです。

こうしたことなどから、オミクロン株に対する有効性の科学的知見も十分そろってきたということで、専門家会議は「努力義務」とすることを了承したのです。実際には法令改正なども必要で、適用は9月上旬ごろからかとみられています。

■検査キット「ネット販売」 今まで買えたものは…?

また、今は子どもに限らず、感染者の増加は続いていて、医療提供体制がかなりひっ迫しています。

発熱外来など。新型コロナの診療や検査を行う医療機関への受診が集中している事態を緩和するため、医療用の抗原検査キットのネット販売が、今月中にも解禁される方向で検討されています。

これまでも抗原検査キットはネットで購入できましたが、それらは「研究用」のもの。厚労省に承認されたものではなく、性能などが確認されていない、また、検査精度も不明のものです。

その一方、今回、解禁される方向なのは、医療用に承認されたキット。現在は、医療機関での使用や薬局での販売に限られています。

しかし、感染者の急増で、一時は薬局で手に入りづらくなったため、医療用キットのネット販売が解禁されればかなり助かると思いますが、あくまでも新型コロナ流行時の特例的な扱いにすること。そして、薬剤師がオンラインや書面で説明することなどが検討されています。

■「キット」手に入りやすくなると…医療機関の負担軽減?

では、医療用の抗原検査キットが手に入りやすくなることで、医療機関の負担は軽減されるのでしょうか。

国際医療福祉大学成田病院で感染制御部部長を務める松本哲哉先生は、「ただ手に入りやすいだけでは、改善は厳しい」と指摘しました。「『気になって抗原検査キットを使ってみたら陽性だったので、受診した』という人が、むしろ増える可能性がある」と述べました。

また、松本医師は「自己検査の結果が陽性だった場合、本人がオンラインで登録ができる仕組みを自治体が構築し、周知徹底する流れができないと、医療機関の負担は減らないのではないか」と話しています。

オンラインでの陽性登録は自治体によって対応がまちまちで、対象年齢が限られるところもあります。また、実施していない自治体も多いです。

     ◇

基本的な感染対策、ワクチン接種に努めていても、なかなか感染者が減らないのが実情です。ただ、同時進行でさまざまな対策も進められています。「今できること」、「かかった時にすべきこと」を取捨選択するために、新たな情報を上手に取り入れていきましょう。

(2022年8月9日午後4時半ごろ放送 news every.「知りたいッ!」より)