上皇ご夫妻 バルト3国訪問 苦難の歴史と文化に触れた旅【皇室 a Moment】
ひとつの瞬間から知られざる皇室の実像に迫る「皇室 a Moment」。上皇ご夫妻は2007年、旧ソ連の支配から独立を回復したバルト3国を訪問されました。苦難の歴史と文化に触れた旅を、日本テレビ客員解説員の井上茂男さんと共にスポットを当てます。
■旧ソ連に支配された国々への歴史的な訪問
――こちらはどういう場面でしょうか
バルト3国のひとつ、ラトビアの首都リガにある「占領博物館」で、ソ連が支配していた時代の強制収容所の再現コーナーを視察される天皇皇后時代の上皇ご夫妻です。ラトビアは旧ソ連に併合され、指導的立場にあった人たちの多くが旧ソ連のシベリアの収容所に送られました。
2007(平成19)年5月、上皇ご夫妻はスウェーデンと英国の訪問の間に、エストニア、ラトビア、リトアニアの「バルト3国」を1日ずつ訪ねられました。旧ソ連邦の支配下にあった国々への初めての、そして歴史的な親善訪問で、各国で熱烈な歓迎を受けられました。
いま、ウクライナへのロシアの軍事侵攻が激しさを増していますが、バルト3国もウクライナと同様、1991(平成3)年のソ連崩壊で独立を回復した国々です。ソ連崩壊前後の動きは、平成という時代の始まりとちょうど時期が重なり、当時、上皇ご夫妻はこうした動きを大きな関心を持って見守られていたそうです。
バルト3国は、ロシアの西、バルト海の沿岸にあります。北からエストニア、ラトビア、リトアニアがあります。人口130万から約300万人の国々です。南側のベラルーシを挟んで、ロシアの侵略にさらされているウクライナがあります。
バルト3国は、ロシア革命を受けて、1918(大正7)年にそれぞれ帝政ロシア領から独立を宣言しましたが、1940(昭和15)年にソ連に併合されて独立を失い、先の大戦では、ドイツとソ連の戦いの戦場となって多くの命が失われました。
その後、ソ連の崩壊で1991(平成3)年に独立を回復し、レーニンの像が撤去されました。ソ連の支配下にあった国は15の独立国に分かれましたが、真っ先に独立を回復したのがバルト3国でした。現在ではEU、NATOに加盟しています。ご訪問は独立から16年後でした。
訪問前の記者会見で上皇さまは、「それぞれの国の苦難の歴史に思いを致し、それぞれの文化に対する理解を深め、我が国とこれら3国との相互理解と友好関係の増進に尽くしたいと思っています」と語られました。