漂着から約半年 沖縄で続く“軽石被害” 有効活用の動きも…
2021年10月、沖縄などに大量に押し寄せた軽石は、漁業やレジャーなどに深刻な影響をもたらしました。漂着から半年がたった今も、大きな被害が起きている地域がありました。
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2021年10月、大量の軽石が沖縄の海に突如流れ着きました。ビーチや漁港など広い範囲に流れ着き、漁業や観光、生活の足にも大きな影響を与えました。
沖縄・国頭村の辺土名漁港では、流れ着いた軽石で漁港が一面灰色になりました。軽石が漁船のエンジンに入り込んで詰まってしまうため、漁に出られない状況が続きました。
あれから約半年、青い海には軽石が漂流する様子は確認できません。
地元の漁師
「(軽石は)もうほぼないです。たまに流れてきた時がありますけど、出航できないみたいなのはほぼ無くなりました。うれしいですよね」
連日、回収を行ったことや、潮の流れにより港から出て行ったことで、今は影響を受けずに、漁に出られるようになったということです。
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軽石の集積所を訪れると、そこには一面に大量の黒い袋と巨大なブルーシートが置かれていました。これらはすべて軽石です。その量は10トントラック約3000台分です。しかし、これだけ回収しても、今も被害に苦しんでいる場所もあります。
県北部に位置する名護市と今帰仁村に面する羽地内海には、大量の軽石が残っていました。特に影響を受けているのが、沖縄では「アーサ」と呼ばれるアオサの養殖場です。
羽地内海でアーサを養殖 松田栄勇さん
「アーサの中に巻き込んで付いているのが、軽石ですね」
この海で養殖をする松田さんが、今年2月に撮影した養殖場の写真を見せてくれました。
「衝撃的ですよ。一生に1回あるかないか」
大量の軽石が付着し、海面はアーサの緑色が見えないほど灰色になっていました。収穫シーズンを迎えた2月に直撃した被害です。5か月かけて大事に育てた約10トンのアーサは廃棄したといいます。
松田栄勇さん
「これがどんだけ続くか。早く通常の仕事に戻ってほしいと願うばかり」
現在、自治体と補償について話を進めているということです。
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なぜ、ここまで被害が長引いているのでしょうか。そこには、地形が影響していました。
羽地内海の隣には島々につながるフェリー乗り場があり、運航に影響を与えないよう内海に入ってきた軽石をとどめるため、フェンスを設置しました。そのため、新たに軽石が入ってくることはないものの、流れ出て行くことはないため、回収するしか解決する方法がないのです。
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連日、回収は行われていますが、問題もあります。
沖縄県北部土木事務所 砂辺秀樹 技術総括
「日々、軽石が動くもんですから、回収作業も非常に困難を極めてまして」
風向きによって軽石が湾内を動き回るため、作業に手間取るということです。
取っても取っても、なかなか減らない軽石。そもそもの原因とみられるのが、約1400キロ離れた海底火山「福徳岡ノ場」です。先月撮影された最新の姿を見てみると、跡形もなく消えていました。
堆積していた軽石のほとんどが流れていったため、海洋研究開発機構・美山透主任研究員によると、「今後新たな軽石がこの場所から流れていく可能性は低い」ということです。
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一方、大量に発生した軽石を少しでも有効活用しようとする動きもあります。
モルタルマジック 池原正樹社長
「沖縄といえばシーサーが有名ですので、軽石を使ってシーサーを作ろうと」
軽石で沖縄の守り神・シーサーをかたどった新たなお土産品「軽石シーサー」です。軽石を細かく砕き、粉末状にしてシーサーの形に成形します。その1つ1つが、手作りでできています。
池原正樹社長
「やっかいなものではなく、ありがたい恵み。これをチャンスに変えていただけたらなと」
軽石シーサーの売り上げの一部は、被害にあった県内の漁業団体に寄付されるということです。