地震で全壊 輪島の老舗酒造、新たな地で酒造り「新酒」に込めた思い 解体で更地に…再建への葛藤も【斎藤佑樹×気になる!】
明治から受け継がれる日本酒、「能登末廣」。
中島酒造店8代目・中島遼太郎さん
「地震のあとはもうお酒、造れないと思った」
失意の中、前を向き、造り上げた「新酒」があります。その"造り手"の元へ、斎藤佑樹キャスターが訪ねました。
斎藤キャスター
「蒸気がすごい!こんにちは斎藤佑樹です」
中島遼太郎さん、36歳。昨年元日の能登半島地震による激しい揺れで、石川・輪島市にある「中島酒造店」の蔵は全壊し、8代目の中島さんは、酒造りの道具のほとんどを失いました。"新たな地"で、"新たな酒造り"への挑戦。
中島さん
「やっぱり水が大きく違う」
石川・小松市にある「東酒造」。震災後、中島さんはこの酒蔵の設備を借り日本酒造りに励んできました。案内してくれたのは、「仕込蔵」という場所。
斎藤キャスター
「お酒の香りがしますね」
中島さん
「いま発酵している酒があるのと、いま仕込んだばかりの酒もあるので」
いくつもある大きなタンクの1つに──。
中島さん
「この中に今年仕込んでまだ瓶詰めされていない瓶詰め待ちのお酒があります。ここの蔵で中島酒造店の『能登末廣』を仕込ませていただいている』
見せてくれたのは──。
中島さん
「初めに搾ったお酒、搾りたての生酒」
この冬にできた「新酒」です。「能登末廣」のラベルを貼り、出荷に向けた最後の仕上げをしていきます。
斎藤キャスター
「僕にもお手伝いさせてもらってもいいですか」
中島さん
「ぜひ、お願いします。横に引っ張りながら、下の線にあわせて…上手」
「いい感じです」
斎藤キャスター
「大丈夫?」
中島さん
「しわなくきれいに貼れています」
斎藤キャスター
「良かった、良かった」
斎藤キャスター
「遼太郎さん、これは手張りで普段やられているんですか」
中島さん
「そうですね、全部手張りで今季はやっています。機械でバーって貼られるよりも、貼りながらどんな人が飲んでくれるかなって思いながら貼っていくのが1本1本に思いが入っていく」
ただ、ここまで出来上がるには苦労も…。
中島さん
「やっぱり水が大きく違う、能登の水と小松の水。お酒の9割近くが本当に水なんですよ。お米を蒸す時、蒸すために水を吸わせる水も小松の水」
能登とは、異なる「水」や「米」。震災前とは味も変わったといいますが、それでも能登末廣を造り続けたい思いは変わりません。
中島さん
「また届けられる形になった。続けていきたいなって気持ちの支えになる」
新たな地で生まれた日本酒を試飲させてもらいました。
斎藤キャスター
「すっきりして辛口。あとからほんのり甘い香りがきて、面白い。最初と終わりで違う味が感じられる」
2人は、中島さんの酒蔵があった輪島市に向かいました。
斎藤キャスター
「電柱とかが斜めになっています」
酒蔵は1年がたち…
中島さん
「ここに店舗があって裏が蔵」
斎藤キャスター
「崩れていない家もある中で…」
更地になっていました。激しい揺れで酒蔵は全壊し、年末年始に解体が行われたといいます。
斎藤キャスター
「元々あった酒蔵がすべてなくなってしまった」
中島さん
「今の気持ちで言うと解体して、なくなってよかった」
斎藤キャスター
「思い出よりも?」
中島さん
「戻ってくるたびに崩れっぱなしを見るほうが、気持ちとしてもずっと前を向けない」
気持ちが前を向くことで“新たな悩み”も──。
中島さん
「この場所でやりたい気持ちはあるけれど…」
斎藤キャスター
「新しく造らないといけない予算も出てくる。相当大変だと思いますけど」
中島さん
「このあとの再建まで考え始めると、酒蔵を造るっていうのは莫大な費用がかかるので悩みがいろいろ出てくると思う。まだ、そこまで考えられていないので」
それでも"今やれること"を──。昔から取引がある輪島市内の酒店「酒いちば・しもはら」を訪ねました。届けにきたのは、あの「新酒」です。地元で愛され続けた1本。
斎藤キャスター
「新しいお酒ができたことについてどう思いますか」
酒いちば・しもはら 下原啓子さん
「元気でますね。頑張っておられるし、皆さんおいしいおいしいって、また買いに来てくださる。本当に1本でも多く売れたらいいね。頑張ってね」
中島さん
「ありがとうございます」
まだ先行きが見えず、不安もあるといいますが──。
中島さん
「お酒が造れない状況から造れるように、いろんな方たちの力でなったので、造れるお酒をよりおいしいお酒にしていって、みなさんに愛されるお酒を造っていきたい」
斎藤キャスター
「応援しています」
中島さん
「ありがとうございます」
(1月21日放送『news every.』より)