×

「私にはもう時間がない」~残された91歳の母の思い~ 世田谷一家殺害事件 未解決のまま22年

2022年12月30日 16:17
「私にはもう時間がない」~残された91歳の母の思い~ 世田谷一家殺害事件 未解決のまま22年
一人で暮らす節子さん

2000年12月30日、世田谷区上祖師谷の住宅で宮沢みきおさん一家4人が殺害された事件は未解決のまま、22年を迎える。91歳になったみきおさんの母・節子さんが願うのは、犯人の逮捕。一方で、「私にはもう時間がない」と焦りを滲ませる。

2022年12月30日。世田谷一家殺害事件の遺族、宮沢節子さん(91)の姿は息子夫婦と孫2人が眠る墓前にありました。節子さんは関係者に手伝ってもらいながら線香を置き、そっと目を閉じて、およそ30秒間、手を合わせ4人に祈りを捧げていた。

この時、墓前で節子さんは4人に、こう語りかけたという。

節子さん
「『解決できないでごめん』って。(犯人を)教えてもらえるなら教えてほしいと、そればかり祈っています」

2000年12月30日、閑静な住宅が建ち並ぶ世田谷区上祖師谷の住宅で一家4人が殺害される悲惨な事件は起きた。殺害されたのは宮沢みきおさん(当時44)、妻の泰子さん(当時41)、長女のにいなちゃん(当時8)、長男の礼くん(当時6)。

警視庁はこれまでおよそ2万9000人の捜査員を投入、現場には指紋やDNAなどの直接的な証拠が多数残されていたが、事件は未解決のままだ。

節子さん
「いなくなっても、親バカしてる」

発生から22年を前にした12月中旬、宮沢節子さん(91)は切り抜いた新聞記事を見て、ほほ笑みながらこう呟いた。事件以降、子供のころから恐竜が好きだった息子のみきおさんのことを思い、新種の恐竜の化石が見つかったなどの記事を見つけては切り抜いている。記事を切り抜くたびに、節子さんはみきおさんと「一緒に記事を読んでいる感覚でいられる」と話した。

節子さん
「わりと家で話す子だったんです。自分の知っている知識を『あれはこうだ、これはこうだ』と。いつも会話は多かった。それが全然できないのは、すごく残念ですね」

22年前の事件がなければ、家庭を築いたみきおさんとの時間は今も続いていたはずだった。

殺害されたみきおさんの私物を節子さんは今も大切に保管している。特に幼いころから好きだった本は「困るくらい」自宅に残っていると節子さんは話す。

「学校の勉強はしないけど、本は絶対に離さなかった」というみきおさん。お小遣いのほとんどは本に使っていて、学校のカバンには教科書よりも多くの本が入っていたという。学校の本を全部読むために図書係になったこともあったそうだ。

みきおさんの本好きの証は現場となった自宅にも残されていた。「ずいぶん難しい本を読んでいたんだなと思います」と見せてくれた英語で書かれた本は、事件後に警察官から渡されたもの。みきおさんが英語の本を読んでいたことを知らなかった節子さん。事件後に知る息子の新たな一面に「子供の頃から本好きは変わっていないんだなと思いましたね」と優しい口調で話してくれた。

節子さんは22年経った今も変わらず、犯人逮捕の知らせが来るのを待ち続けている。毎晩、眠りにつくのは日をまたいだ翌日の午前2時、待ち続ける中でこの時間に寝るのが普通になった。新聞配達が来たのを確認したあとに眠ることもあった。

定年まで担当してくれた警察官が退屈凌ぎにと持ってきてくれた数独(数字のパズルゲーム)も、いまや連絡を待ち続ける生活の中で時間をつぶす方法の1つになっていた。

節子さん
「なんかのきっかけで電話が鳴らないのかな…思うんですよ、見つかったとか、良い情報が入ったとか。それがないんですよ、待っているんですけど、それが未だにない」

警視庁には今年だけで127件の情報提供があり(11月末時点)、この22年間ではおよそ1万4000件の情報提供があったが、これまで犯人逮捕に繋がるような情報は提供されていない。

有力な情報が得られないまま「待つことが習慣になった」節子さんは、22年という年月が経過し、「事件の風化」に危機感を募らせていた。

節子さん
「事件から22年というと、22歳以下の人は知らないというのがほとんどになっているんだから、過去のことなんて本当に忘れられてしまう。早くしないと本当に分からなくなるんじゃないかと思う」

節子さんが願うのは犯人の逮捕。ただ、90歳を超えてから、残された時間についても意識するようになっていた。

節子さん
「(2010年4月に)時効がなくなったから(事件は)ずっと続いていくんだろうと思うんですけど、私の元気なうちに事件の解決、解決まではいかなくても目処はついてほしいなと思うんです。私にはもう時間がないと思っていますから、なるべく早く事件に近づくような、解決に近づくような情報が欲しいと思っています」

なぜ4人は犠牲になったのか、犯人の目的は何だったのか。91歳になった節子さんの心を支えるのは、「真実を知りたい」その気持ちだけだった。

2010年4月に殺人罪などの時効が廃止され、世田谷一家殺害事件にも時効がなくなり、解決するまでの捜査はこれからも続く。一方で、解決を見届けたいと願う遺族に残された時間は限界があるという現実も確かに存在する。一日でも早い解決のため、警視庁は引き続き、情報提供を呼びかけている。

※情報提供は成城警察署捜査本部 03-3482-3829 まで

    • 日テレNEWS NNN
    • 社会
    • 「私にはもう時間がない」~残された91歳の母の思い~ 世田谷一家殺害事件 未解決のまま22年