強烈な幻覚……「新しい自分になる」と8階から飛び降り死 危険ドラッグ「1D-LSD」とは? お香に偽装も【#みんなのギモン】
そこで今回の#みんなのギモンでは、「『1D-LSD』摂取し飛び降り?」をテーマに、次の2つのポイントを中心に解説します。
●トラブル相次ぐ 規制できる?
●危険ドラッグ 検挙増加の背景
「捜査関係者によると今年2月、東京・新宿区で22歳の女性がマンションの8階から飛び降りて死亡しました。また1月には香川県に住む20代の男子大学生がマンションから飛び降りて亡くなりました」
「この2人に共通するのは、危険ドラッグである『1D-LSD』を含んだ製品を摂取したとみられるという点です」
「2人が相次いで死亡したことを受け、厚生労働省は2月、1D-LSDが含まれる3製品について医薬品医療機器法に基づき、全国の店舗やインターネットでの販売を禁止する命令を出しました」
鈴江奈々アナウンサー
「今は販売が禁止されているということですが、なぜそんな危険なものが流通してしまっているのでしょうか?」
富田解説委員
「なんで?って思いますよね。しかも簡単に手を出せてしまうというハードルの低さが問題ですし、こうした危険ドラッグに対して規制が追いつかないことも課題となっています」
富田解説委員
「そもそも1D-LSDとはどういうものなのか。これ自体どういう作用があるのかまだ不明な点も多いのですが、法律で規制されている合成麻薬『LSD』に似た成分が含まれていることは分かっています」
「LSDは溶液をしみ込ませた紙や錠剤やカプセルなどを使って摂取するケースが多く、非常に危険な麻薬とされています。乱用すると強烈な幻覚作用が現れて、衝動的な行動を起こすことがあるといいます」
「飛べると思い込んでビルの窓から飛び降りるなど、どんな危険な状況にあるのか認知できない状態に陥ってしまう場合があります」
「新宿区の22歳の女性は、このLSDに似た成分を含む製品の1D-LSDを摂取したとみられています。一緒にいた男性が警視庁に対して、摂取後に女性の様子がおかしくなり、『新しい自分になる』『飛びそう』などと言って飛び降りたと話したということです」
河出奈都美アナウンサー
「自ら飛び降りようとしてしまうことがとても怖いなと感じたんですが、これは最近になって流通し始めたものなのでしょうか?」
富田解説委員
「そこもはっきりと解明されてはいません。因果関係は分かっていませんが、2つの死亡例以外にもトラブルが相次いでいるということです」
「去年8月には東京・浅草の路上で1D-LSDを摂取したという20代の男性が全裸状態で発見され、首を切った痕が複数あったため、救急搬送されるという事案がありました」
「東京・町田市では16歳の男子高校生が摂取後に通行人に暴行を加えたり、路線バスや車を壊したりするなどして逮捕される事件もありました」
森圭介アナウンサー
「これまでのトラブルの年齢を見ると20代とか10代とか、若い世代に広がっているという印象を受けますよね」
斎藤佑樹キャスター
「因果関係は分からないということですが、こうしたトラブルがずっと続いているということになるとすごく深刻だと思うんですよね。どうやったらこれを解決できるようになるんですか?」
富田解説委員
「現状は1D-LSDの製品の販売を禁止するだけで、製品をつくるための成分までは規制ができていません。厚労省は今後速やかに成分を分析し、指定薬物にするか検討するとしています」
富田解説委員
「一方で、危険ドラッグをめぐる状況は深刻です。警察庁によると全国で危険ドラッグを使ったなどとして検挙された人数は、2015年は1196人でしたが、2021年には145人まで減りました。しかし一昨年と去年は再び増加傾向となり、去年は424人となりました」
「警察庁によると、去年その危険性が指摘された“大麻グミ”の成分であるHHCHなどが指定薬物となり、取り締まりの対象になった結果、検挙数が増えたとみられています」
森アナウンサー
「これまで見えていなかったものが明らかになって増えているように見えるということですが、大麻グミや1D-LSDはどこから日本にやってきてるんですか?」
富田解説委員
「危険ドラッグの有害性に詳しい湘南医療大学の舩田正彦教授に聞きました。舩田教授によると、LSDに似た成分の製品の流通は最近海外で増えている傾向がみられていたといいます。つまり、海外から日本に入ってきた可能性もあるということです」
「これまでの危険ドラッグも、先に海外で流通が盛んになっていたケースも多いということです」
鈴江アナウンサー
「これだけ海外と日本と行き来が激しい時代ですから、日本だけせき止めるということも簡単ではないんだと思いますが、その危険性を知らずに若い人が手を出してしまうのは本当に心配ですね」
斎藤キャスター
「こんな危険なものをどうやって手に入れるんですか?」
富田解説委員
「新宿区で亡くなった女性は、1D-LSDを含むとみられる製品をインターネットで購入したとみられています。東京都保健医療局によると、危険ドラッグはネット通販の他、雑貨ショップやセレクトショップを装って売られているということです」
「どのような形で販売しているのか。法の網をくぐり抜けるために、お香やバスソルト、ハーブ、アロマなど一見身体に摂取するものとは分からないように偽装されて販売されているそうです」
富田解説委員
「若者が危険ドラッグを使用する背景に何があるのか。手を出してしまう心理について舩田教授は『使っても捕まらないので、指定薬物に比べて抵抗感が少ないこと』や、規制がかかっていないため『危険ではないと思い込んでしまうこと』を挙げています」
「さらに動機としては『閉塞感や、生活や仕事がうまくいかずに逃げ出したいときに気分を変えるために手を出してしまうことがある』と言います」
「しかし舩田教授は『未知の製品であり、場合によっては指定薬物よりも危険な可能性もある。自分の身体で試すような行為は非常に危険』と指摘しています」
鈴江アナウンサー
「規制されていないから安全なもの、とは決して思ってはいけないということですよね」
富田解説委員
「そうですね。舩田教授もそのように指摘していました」
鈴江アナウンサー
「いたちごっこで規制がなかなか届いていないと分かった上で、大切な人生を壊してしまうリスクのあるものだと知ってもらいたいですね」
森アナウンサー
「何かうまくいかないことは大人にもあるわけで、それをうまく乗り越える力を身に付けてほしいなとは感じました」
鈴江アナウンサー
「絶対に手を出さないでもらいたいです」
富田解説委員
「厚労省は1D-LSDについて『乱用するとどういう症状が出るか分からないため、絶対に使用しないでほしい』と呼びかけています」
(2024年4月8日午後4時半ごろ放送 news every.「#みんなのギモン」より)
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