【“使用”も禁止】改正大麻取締法で必要な支援とは
今月6日、参議院本会議で、「改正大麻取締法」が可決・成立しました。来年にも施行され、医療用大麻が解禁される一方、それ以外での「使用」は禁止されます。大麻依存で悩む人への支援のあり方はどう変わるのでしょうか。
■日本での大麻をめぐる動き
現在、日本では大麻から製造された医薬品の使用は許されていません。アメリカなど一部の国では、大麻の主成分の「CBD」から作られた、難治性てんかんの治療薬などがすでに承認されており、日本でも解禁を求める声があがっていました。
一方で、大麻は、覚醒剤などほかの薬物使用の入り口となる「ゲートウェイドラッグ」と呼ばれ、「身体への悪影響がない」といった誤った情報をもとに、友だちから誘われて試してしまうなど、若者を中心に大麻の乱用が問題視されています。現在、所持や栽培などは禁止されていますが、使用については規制がありません。若いうちから乱用すると、強く依存する危険性があることなどから、使用に関するペナルティーを科すことも議論されてきました。
■「大麻取締法」の改正で何が変わる?
今回の改正では、大麻から製造された医薬品の使用が解禁されます。今後、安全性と有効性が確認されれば、その薬は国内での使用が認められます。
また、麻薬取締法で大麻とその有害成分「THC」が麻薬に位置づけられることとなり、所持や栽培だけではなく、使用することも規制の対象となります。
■「使用罪」で何が変わる?
使用の規制で、これまで罪に問われなかったケースも、逮捕の対象となります。薬物依存症などからの回復をサポートする、一般社団法人回復支援の会が運営する木津川ダルク代表理事の加藤武士さんは、今回の改正に複雑な思いがあるといいます。
加藤さん
「若者を守るという観点だと、使用罪ができることは、積極的な治療とか回復支援、再犯防止を進めることにならないのではないか」「きっと大麻など薬物を使用したという事実を言い出しにくくなる。そうすると、自分だけで解決しようとしてしまう」
こう話すのには理由があります。実は加藤さんは、18歳で大麻を使用し、その後、薬物依存を経験した、かつての当事者でもあります。自身の経験を、あくまで大麻使用における1つのケースであり、個人の意見だとしたうえで、このように述べました。
加藤さん
「今の若い人たちの中には生きづらさをかかえている人もいると思う。そういう人たちが薬物や大麻を使っているのだとすれば、単純に“使ったらだめだ、逮捕するぞ”ということはあまり効果がないような気がする」
大麻事案での検挙者数は2014年から8年連続で増加し、2022年も5546人と高い水準です。特に30歳未満の若者を中心に乱用が相次ぎ、その割合は年々高まっています。
加藤さん
「今の若者は気持ちを外に出せずにひきこもりがちな人が多いのかなと思う。そんなとき、居場所のない居心地の悪さを解消してくれる手っ取り早いものが薬物なんじゃないかなと思う」「特にリラックス効果があるような薬物、大麻は使われやすいのかなと思います」
■大麻から抜けだすためには
大麻に依存していた加藤さんですが、人とのつながりや居場所ができたことで大麻をやめることができたといいます。その経験を踏まえ、「使用罪」をつくるのであれば、なおさら周りの支援が不可欠だと話します。
加藤さん
「大麻を使うということは、やっぱり大麻に何かしら求めているものがあると思う。それは何なのか。大麻を使わずにそれを手に入れることはできないのかと。一緒にそれを手に入れる、見つけることはできないだろうかということを一緒に考えたりできたら良いと思う」
一方、最近相次いでいるのが「大麻に似た成分」を含む製品による健康被害です。
直近では、大麻に似た合成化合物HHCHを含む、いわゆる「大麻グミ」を食べた人が相次いで体調不調を訴えるなどのケースが相次ぎました。これを受け、厚生労働省はHHCHを「指定薬物」とし、12月2日から所持、使用、流通を禁止しています。
しかし、類似成分については規制の対象外となっているため、わずかに構造を変えた化合物が次々と出回り、規制が追いついていないのが現状です。厚労省は年明けにも、類似の化合物を包括的に規制することを検討していますが、こうした依存性の高い成分を含む製品が出回らないよう、根本的な対策が急がれます。
■若者を薬物から守るには
大麻や類似の製品から若者を守るために必要なこととは。加藤さんはこう話します。
加藤さん
「お酒も大麻も使わず、人生を豊かにすることは可能だし、楽しくすることも可能だよということは、言いたい。ありのままでいいんだと。生きる価値がないだとか、自分に生きている意味がないだとか、考える必要がないと言いたいです」
厚労省は、大麻を「使用罪」の対象にするにあたって、教育現場などでわかりやすく正確な情報を発信し、薬物からの回復支援も充実させ、取り組みをより強化するとしています。