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作業環境は大幅に“改善”も…終わりの見えない廃炉作業が続く福島第一原発

2025年3月11日 19:44
作業環境は大幅に“改善”も…終わりの見えない廃炉作業が続く福島第一原発
14年前の地震と津波で水素爆発を起こし廃炉作業が進む福島第一原発
原子炉建屋から1キロほど離れた敷地内からお伝えします。(3月11日午後6時15分ごろ)
巨大な構造物は廃炉作業を進める際に放射性物質の飛散を防ぐため建屋を丸ごと覆うカバーの一部です。
この時間は日が落ちて現場での作業は終わっていますが日中は多くの作業員の姿がありました。
こちらでは約50メートルの建屋を覆う大型カバーをパーツごとに分けて作っているのですが、一つ一つの構造物も非常に大きく大型のクレーンや重機を使って作られています。
カバーは水素爆発によってがれきが散乱し、むき出しの状況となっていた1号機の原子炉建屋に設置されます。
現場では屋根を支える骨組みの組み立てが進んでいて、夏ごろには設置が完了する見通しです。

2024年、この第一原発では廃炉に向けた大きな動きがありました。それが溶け落ちた核燃料、燃料デブリの取り出しです。
こちらは実際に取り出した燃料デブリの模型ですが、私の手と比べますと指の先、爪くらいの大きさであることがわかります。今回、取り出せたのはわずか0.7グラムですが廃炉作業にとっては大きな一歩となりました。
廃炉の最前線を取材しました。向かったのは第一原発の原子炉建屋周辺です。
■1号機建屋下で野尻キャスター
「見上げる高さの1号機、未だ事故当時の激しい損傷が1部むき出しになっている、中の放射性物質が飛び散るのを防ぐための大型カバーの建設がことし夏頃の完成を目指し進められています」

14年前の水素爆発によって天井や壁が吹き飛び、がれきが散乱しむき出しの状況となっていた1号機。
東京電力は巨大なカバーで建屋を丸ごと覆い、がれきを撤去したり燃料プールに残る使用済み燃料を取り出したりする計画です。

一方、その隣の2号機で2024年、大きな動きが…
■野尻キャスター
「廃炉の最難関と言われるデブリの取り出しがこちら2号機でようやく2024年に始まりました」
廃炉の最難関とされる解け落ちた核燃料、燃料デブリの取り出し。
1号機から3号機には880トンもの燃料デブリがあるとされていますが、このうち2号機で2024年11月、事故の後初めてとなる取り出しが行われました。取り出した量は0.7グラムほどですが分析を進めることで今後につながる様々な情報が得られると国の廃炉担当者は話します。
■経済産業省 木野正登さん
「様々な組成の分析をしていて、どういうものが入っているかや、情報を得られると思っています」
■野尻キャスター
「以前、木野さんは廃炉は頂上が見えない山に上るもの例えていたが、頂上は見えてきそう?」
■木野正登さん
「まだ一つだけのデブリですべてわかるとは思えませんので、サンプルを増やしていく、分析をしていく、この繰り返しでデータを蓄積していくことが大事」
この春には2回目の燃料デブリの取り出しも計画されて、さらに分析も進められます。

そして、ここ数年で大きな進展があったのが第一原発にたまる処理水です。これまでにタンクおよそ100基分の放出が完了し、その解体も進んでいます。作業環境も大幅に改善し、今はほとんどのエリアで防護服なしで作業が可能になりました。

敷地内にある食堂では毎日、暖かい食事が提供されています。
■野尻キャスター
「今日のメニューは?」
■廃炉コミュニケーションセンター副所長・東京電力の木元 崇宏さん
「きょうは常磐もののさんまを焼いた定食」
この日のメニューは常磐ものの「さんまの開き干し定食」です。
特別に試食させてもらいました。
■野尻キャスター
「常磐モノのさんまがいただけるのはうれしいですよね、いただきます、いい塩加減でうまみがぎゅっとつまっています」

■木元 崇宏さん
「現場に休憩所ができて、食堂ができて、暖かいものが毎日食べられる、毎日の作業、現場で働く活力に大きく貢献している」
福島第一原発ではいまも1日に4千700人ほどが廃炉作業に当たっています。
廃炉には、30年から40年かかるとされていますが、いまだに廃炉後の姿は描けていません。事故の後、東京電力に入社した若手社員に話を聞きました。

■入社7年目 水処理計画グループの佐々木 和仁さん(27)
「私自身福島県のいわき市出身で、震災当時、県内で被災しまして廃炉を完遂することが皆さんのお役に立てると思いがあって、福島第一原子力発電所に志望した」
いわき市出身の佐々木さんは自ら、福島第一原発での仕事を志願したといいます。
■東京電力 佐々木 和仁さん(27)
「廃炉は誰かがやらなければならないものだと思いますし、廃炉までにはこれから数10年かかるといわれている中で若い人間から手を挙げて、進めていかないと今後継続していかないと思うので」

14年が経ってもなお終わりの見えない廃炉作業。
この先も福島が向き合い続けていく厳しい現実です。

今回、福島第一原発を取材して廃炉に向けてこの14年で進んだ部分がある一方、まだがれきの撤去すら終わっていない建屋や880トンもある燃料デブリの取り出しなどその完了までには長く厳しい道が続いていると感じました。

第一原発でも14時46分に合わせて黙とうが捧げられ、その後の訓示の中で東京電力の小早川社長は「3月11日は事故の反省と教訓を振り返る大切な日」と述べ、福島復興のため廃炉を進めていくことの重要性を強調しました。
最終更新日:2025年3月11日 19:47
福島中央テレビのニュース