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【高2自殺】我が子の死から4年 無駄にしたくない…少しずつ歩みを進める母親 福岡

2025年3月10日 18:34
【高2自殺】我が子の死から4年 無駄にしたくない…少しずつ歩みを進める母親 福岡

福岡県宗像市の私立高校に通っていた侑大さんは、高校の剣道部でいじめを受け、4年前、自ら命を絶ちました。3月10日は、命日にあたります。悲しみや怒りを共有する人たちと少しずつ歩みを進める母親。息子の死を無駄にしたくないと、くじけそうになる心を奮い立たせています。

■侑大さんの友人
「お久しぶりです。」
■侑大さんの母親
「久しぶり。こんにちは。」

2月下旬、息子の命日を前に、小学校や中学校時代の友人たちが訪ねてきました。

4年前の3月10日、17歳で自ら命を絶った侑大さんは、優しく穏やかで、小学2年生で始めた剣道が大好きでした。

■友人たち
「いまだに現実と思えてないもんね。」
「そうね、それはある、マジで。」
「俺、カレンダーに侑大の誕生日、毎年通知来るよ。」
「どっかにおると思っとうもん、マジで。ちょっと会えんだけで。」
「そうね。」

■侑大さんの母親
「みんながしゃべってるのが見ててうれしいですね。この家でしゃべってくれているのが。侑大を前にして。」

友人たちは今、社会人や大学生としてそれぞれの道を歩んでいます。けれど、母のまぶたに焼き付いた息子の姿は、17歳で止まったままです。

2019年4月、東海大学付属福岡高校に剣道部の特待生として入学した侑大さん。しかし、その2か月後、「死にたいけど死ねんかった」そう言いながら泣き始め、上級生の部員からあざができるほど殴られるなど、いじめを受けたと母親に打ち明けました。

侑大さんが命を絶ったのは、それから1年半後のことでした。

■侑大さんの母親
「触っても冷たくて目を開けてくれなくて。もうこれは生き返らないのって。」

■東海大学付属福岡高校・津山憲司 校長
「深くおわび申しあげます。」

学校が設置した第三者委員会は、2年にも及ぶ調査の結果、侑大さんが剣道部の複数の上級生から受けた10の行為をいじめと認定しました。

■第三者委員会・宇加治恭子 委員長
「ほかの部員もいるところで、先輩3人が生徒(侑大さん)の体を粘着テープで畳に貼り付けて。」

いじめの中には、警察が強制わいせつ事件として立件したものもありました。その様子は動画で撮影され、SNSで複数の生徒に送信されていました。

それでも、第三者委員会は「自殺の直接的な原因は特定できない」と結論づけました。

なぜ、いじめが自殺の原因だと認めてくれないのか。

輪をかけて不信感を募らせる出来事もありました。

第三者委員会は、剣道部の顧問を務めていた男性教諭について、侑大さんに「生活態度が悪い部員」とレッテルを貼り、無視していたことなどが自殺に影響を与えた可能性があると指摘しました。

学校側は第三者委員会の会見の翌日、男性教諭を剣道部の顧問から外しました。ところが。

■記者
「説明される予定は今後もないんですか。」

FBSが学校に改めて取材したところ、男性教諭は3か月余りで剣道部の顧問に復帰していました。理由については、現役部員や保護者から再三にわたり復帰を求める要望があったためとしています。侑大さんの母親には伝えていませんでした。

■侑大さんの母親
「おかしいですよね。まずはやっぱり失望でしたけど、失望のあとの怒りですね。どうしてもっと重く受け止めてくれないんだろうって。」

打ちのめされそうになる心を支えているのは、ある人がくれた「答え」です。その人に直接会うため、侑大さんの母親は3月、東京を訪れました。

■東京大学大学院教育学研究科・北川裕子 特任助教
「しんどい思いを抱えた時ほど、子どもたちは『助けて』が言えません。」

東京大学の特任助教・北川裕子さんです。北川さんは、子どもたちのいじめや自殺を防ぐための取り組みについて、研究しています。

侑大さんが自ら命を絶ったのは、いじめを受けてから1年半後のことでした。自殺の原因はいじめにあるのか。母は迷いを捨てたくて、息子の死の翌月、専門家の北川さんに弁護士を通じて連絡を取りました。

侑大さんが残した遺書を読んだ北川さんは「いじめが自殺に影響していないとは考えられない」と、はっきり答えを出してくれたといいます。

■侑大さんの母親
「私は先生が言ってくれたこの答えに、この時救われて。」

■北川 特任助教
「(いじめを受けたことが)すぐに自殺という行動に出るわけではなくて、PTSDやフラッシュバックに 長年苦しんで、ある時ポトッと。いじめが長期的な影響を及ぼしていくという視点に立つべきだと思います。」

息子の死を無駄にしないために、母は動き出しました。2024年の命日には、いじめの責任を問うため、当時の上級生4人を相手取り、損害賠償を求める訴えを起こしました。

■侑大さんの母親
「謝罪をしていただいたところで侑大は戻ってきません。それでも犯した罪は認めていただき、償っていただきたい。」

侑大さんの母親には、東京でもう一か所、足を運びたい場所がありました。

■侑大さんの母親
「侑大が来たいって言ったのかな。」

日本武道館です。侑大さんは小学6年生の時、ここで剣道の全国大会に出場しました。息子に付き添って訪れた、思い出の場所です。

■侑大さんの母親
「懐かしい。きょう東京に来れてよかったです。」

あの日、目に焼き付きけた息子の笑顔に、思いをはせることができました。

寄り添ってくれる人たちの存在が少しずつ、母を強くしています。

この報道を見て、つらい気持ちになった人がいらっしゃるかと思います。厚生労働省や自殺防止活動に取り組む専門家などは、悩みや不安を抱えている人は一人で解決しようとしないで、専門の相談員に相談してほしいと呼びかけています。

▽ふくおか自殺予防ホットライン(092-592-0783)※年中無休24時間
▽24時間子供SOSダイヤル(0120-0-78310)※年中無休24時間
▽きもち よりそうライン@ふくおかけん(LINE ID:@469xxbam)※月曜と木曜 午後4~7時

最終更新日:2025年3月10日 18:50
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