アメリカ兵捕虜の足跡をたどる旅 被爆者・森重昭さんとアメリカ兵ゆかりの男性 巡り会った2人の思い
広島で被爆して亡くなったアメリカ兵捕虜の調査を続ける被爆者の森重昭さんが、アメリカ兵が搭乗していた爆撃機が墜落した現場を訪れました。そこは長年の調査のきっかけになった場所。同行したのは、捕虜とゆかりの人物でした。
■森重昭さん
「山小屋が左の方にない?山小屋」
山口県柳井市の山あいの町・伊陸。この日、8年振りに訪れた被爆者の森重昭さん。アメリカ人のマーク・シェイバーズさんと、戦争の痕跡を探していました。
アメリカ軍B24爆撃機「ロンサムレディー号」。対空砲火を受け、伊陸の山中に墜落したのは、広島に原爆が投下される直前の7月末でした。捕虜になった乗組員は広島に送られ被爆。6人が死亡します。
この経緯について調査を続け、身元を特定したのが森さんです。その功績が認められ、アメリカのオバマ元大統領と対面しました。伊陸を一緒に訪れたシェイバーズさん。ロンサムレディー号に、ある関わりがありました。機長のトーマス・カートライトさん。捕虜になった後、東京に送られ被爆を免れました。シェイバーズさんは大学の5年間、カートライトさんの自宅で共に暮らしていました。一方、森さんは、カートライトさんが2015年に90歳でなくなるまで、手紙のやり取りを続けました。シェイバーズさんの伊陸訪問の目的は、その足跡をたどること。墜落現場近くにある石碑は、地元の人が寄付を募って建てたものです。
■マーク・シェイバーズさん
「カートライト氏は伊陸の人にとても感謝していました。なぜなら生きてアメリカに帰れたから」
向かったのは、ロンサムレディー号に関する資料を集めた記念館。地元の人からの寄贈品など、100点以上を展示しています。ここに爆撃機の機体の一部が保管されています。
■シェイバーズさん
「大きい!信じられない」
森さんの活動を知った住民の自宅で、2023年の夏に見つかったばかりです。
■シェイバーズさん
「森さんがアメリカ兵の調査をして、話を広めてくれたおかげです」
ここでの出来事は、2人にとって過去の事ではありません。
■森重昭さん
「カートライトさんと長い間交流を続けたその結果、平和は与えられるものじゃないんだと、自分で作っていこう、それが一番大事」
原爆を落とした国と落とされた国の狭間で巡り会った2人。新たな歴史のページを刻んだ1日でした。
【2023年12月29日】