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進む水道管の老朽化 更新が進まぬワケ

2023年10月30日 21:56
進む水道管の老朽化 更新が進まぬワケ

全国で漏水による断水など、水道のトラブルが相次いでいます。その背景にあるのは、財政難と人手不足と言います。現状を探りました。

■女性
「起きてトイレ行ったら水が出ないから、自分ちが壊れたのかなと」
■男性
「炊事洗濯やろうかと思ったら、水が出なかったもんで」

異変が起きたのは、10月1日でした。広島県大竹市で、およそ9100世帯が断水。それは全世帯の4分の3に達し、多くの市民が臨時の給水所に向かいました。
学校では給食を提供出来ず、午前中で授業を打ち切ったり、臨時休校も…。
原因は、老朽化した水道管の破損による漏水…。直径はおよそ35センチあり、大竹市の広範囲に水を供給する主要な配水管でした。

■大竹市上下水道局 中司和彦課長
「ここらが割れたところですね。昭和20年以前くらいの敷設で70年以上経過しているので、老朽化による破損だというふうに考えています」

確認したのは、長さがおよそ1メートルの亀裂と、こぶし大の穴…。
水道管の多くは、高度経済成長期に敷設されており、全国では2割余りが、耐用年数とされる40年を過ぎています。

大阪で道路に水が噴き出したのは9月でした。破裂した水道管は、敷設からおよそ50年が経過…。
来年度、取り替える予定でした。

2年前には和歌山で水道橋が崩落し、およそ6万世帯が断水…。設備の老朽化は、抜き差しならぬ状態になりつつあります。

専門家に、水道管の更新が思うように進まない背景を聞きました。

■近畿大学経営学部 浦上拓也教授
「世間一般の物価が非常に上がってきている中で、水道料金を上げるという選択肢がなかなか取りづらい。結果的に事業計画として更新を先送りするという実態が今ずっと続いていますから、今回のような大きな事故につながるリスクはあります。」

戦前に当時の海軍省が整備した水道を引き継いだ大竹市。
その為、水道管の老朽化率は5割近くと、広島県内で最も高くなっています。

■女性
「こういうことが二度と起こってくれては困りますけどね」
■男性
「やっぱり点検することが第一じゃろうね。2~3年したらダメになるなというのは取り替える」

断水の影響が直撃した飲食店は…。

■店長
「お店に来て確認してダメそうだったので臨時休業した。新しいものを作り替えてほしい」

そんな思いに立ちはだかる現実…。
今、広島市西区で、敷設から50年が経った水道管を取り替える工事が進んでいます。
100メートルあまりにわたり、新たに直径10センチの水道管を設置します。
広島市では、比較的小規模な工事と言いますが…。

■広島市水道局 田屋淳課長
「周りの住民への工事の周知から始まって、作業している工事、断水、撤去、最終的には掘った跡をきれいにする本舗装工事まで終えて後片付けして全体で140日。」

工事の概要です。まず地中に新しい水道管を敷設し、水を流します。
そして、各家庭につながる給水管を設置後、古い管を撤去し、1つの工程ごとに埋め直します。
同じ場所を4回掘削することもあり、工期が1年になるケースもあります。

新しい水道管は性能が向上し、耐用は100年とも言われます。
更に耐震性も備わり、更新するメリットは計り知れません。しかし…。

■広島市水道局 田屋淳課長
「昨今の物価上昇、建設業界も働き方改革に取り組んでいる。このために、今後更新したい延長に対して、非常に費用がかかることを懸念しています」

大竹市の人口は2万5000人余り…。人手不足も深刻です。

■大竹市上下水道局 中司和彦課長
「技術職員、マンパワーが不足しているのかなというのは感じています。こうすれば飛躍的に更新率が上がるという、その方策は今のところ見当たらないので…」

新たな対策に取り組む自治体もあります。
広島県と14の市と町が、「水道企業団」を設立…。
浄水場の統廃合などを目指します。
しかし、広島市や福山市などは参加していません。
大都市ほど、単独で経営の効率化を進めやすくなる為と見られます。

■近畿大学経営学部 浦上拓也教授
「大きな事業体の技術力、組織力を十分に生かせる形が本来望ましいんでしょうけど、小さいところがそのまま取り残されていくことは、絶対に避けないといけないので、将来的にはもう少し拡大していくことが望ましい」

各自治体の水道局は、原則、水道料金を財源とする独立採算です。
人口減などで予算や人材が枯渇する今、その枠組みにとどまって水道事業の更新を怠ることは、将来へのつけ回しとなるはずです。

【2023年10月30日放送】

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