【特集】西日本豪雨から6年 家族3人を失った男性 救出された愛犬との誓い 広島・熊野町
西日本豪雨で、広島県熊野町の住宅団地では12人が亡くなりました。家族3人を失った男性は、崩れた家から救出された犬の存在に支えられ、6年間を過ごしてきました。
一瞬にして奪われた幸せと、生きていた奇跡
6年前、土石流に飲み込まれた熊野町の住宅団地。多くの家が倒壊しました。
■救出時のリポート(当時)
「家のがれきの下から、犬が救出されました。」
■上西美智春(かみにし・みちはる)さん
「生きていてくれたのが本当に奇跡に近い。僕を一人にせずに生きていてくれたのは、よかった。」
上西美智春(かみにし・みちはる)さん。愛犬の「福」と、広島県熊野町で暮らしています。9年前、上西家にやって来た福。犬が嫌いだった二男の健太くんも、一週間ほどで仲良しに。災害は、幸せな家族の暮らしを一瞬にして奪いました。
■上西美智春さん
「ここですね。福のケガがひどかったところじゃないんかなと思う。これもなんか刺さっていたのかも。」
上西さん自身も、右脚を切断する大ケガをしました。当時暮らしていた住宅団地では、土石流によって12人が犠牲となりました。上西さんの自宅も崩れ、妻と2人の息子が亡くなりました。
■上西美智春さん
「子供たちが中におって3人、福も全員中におって。僕だけ外の様子を見に行って。」
家の中にいた家族3人は、家の下敷きになり、3日後に発見されました。
■上西美智春さん
「早めに避難しなかったのも、悔いが残しても残しきない。」
家族それぞれの誕生日には、必ず会いに訪れています。
■上西美智春さん
「子どもがじゃがりことかコアラのマーチを結構食べていたので。大きくなっているから食べないかもしれないが、いいかなと思って。ジュースはよく飲んでいたものを買ってきた。きょうは福の誕生日なので、9歳になったことを報告して、元気に2人で頑張っているので、見守っていてほしいということを言った。」
災害後に深まった親交
やってきたのは、長男・優太くんの同級生の家族です。
■同級生の家族
「福、プレゼント持ってきたよ。」
大喜びの福でしたが…
■上西美智春さん
「あ、もうギブだ。耳が取れた。」
災害後に親交を深め、日常の出来事を報告し合う関係が続いています。
■上西美智春さん
「6年、ほぼ毎月来てくれて感謝している。」
■同級生の家族
「上西さんにとっては、(福は)かけがえのない家族だから。」
■同級生の家族
「(上西さんたちが)いつもここにいてくれるというのは、私たちや子供たちにとっても落ち着ける場所で、ずっとこれが続けばいいなと思う。」
これからも一緒に生きていく
散歩のコースは、いつも福の行きたいところ。福も、走れない上西さんのペースに合わせます。
■上西美智春さん
「福といろんなところに行ったり、ドライブに行ったりできたら、みんなそれはそれで喜んでくれると思う。いつも一緒にいてくれるので、元気ももらえるし、癒されるし、僕を守ろうとするときもあるし、守ってくれようとするときもあるし、福なしでは生活できない。」
6年前、福を救い出したのは神奈川県警の警察官でした。
■神奈川県警の警察官からの手紙
『我々の姿を見たときに大きな声で鳴き、助けを求めて、飛びついてくるような勢いでした。あれから早6年が経ちましたが、今でも福くんを抱きしめた、あの感触は忘れていません。ニュースでお二人の元気な姿を拝見させていただき、大変うれしく思いました。これからもお身体に気を付けてお過ごしいただきたいと思います。』
■上西美智春さん
「福は難しいかなと思っていたので、生きていてくれて、こうやって生活できているので本当に感謝しかない。福を大事にして、少しでも長く生きていられるように、一緒にいられるように二人で頑張っていきたいと思う。」
災害から6年。福に支えられて生きてきました。これからも一緒に生きていくことが、先だった家族への誓いです。
【2024年7月5日】