【特集】励みは利用者の笑顔 「義肢装具士」と少年との絆
義足や義手は「義肢」と呼ばれ、障害の程度や要望に合わせて制作する専門家を「義肢装具士」と言います。今回の特集は、ある義肢装具士と、その技術を信頼してスポーツに打ち込む親子の姿を追いました。三次市三良坂町。ここにある「みうら義肢製作所」は、義足や義手を手掛けています。この工房を率いるのが、義肢装具士の三浦英敏さんです。ここで開発した設備や道具で義足や義手などの「義肢」を製作。輸入品に頼る人が多いなか、利用者の希望に合わせた製品を仕上げるのが信条です。
■三浦さん
「気に入ってもらえる喜んでもらえるようなかっこよかったり使いやすかったり軽かったりとかを考えながらどうしようかなと思いながら作ってます。」
三浦さんが手掛ける製品の中心は「股義足」。足の付け根の関節から下の部分を補う、人工の足です。この日、三浦さんが待ち受ける工房に到着した1台の車。名古屋からの長旅です。
父親と訪れた新美想真さんは、中学1年生。生まれつき股関節から下の右足がなく、右手にも障害があります。義足は日常の生活を支える大切な器具のひとつです。
■父親・新美 祥太さん
「時間はどのくらいかかりました?(愛知から)3時に出てきたんで6時間くらいですね」
ここを訪れるのは2回目。1年前に義足を注文しましたが、成長と共に、サイズが合わなくなった為です。製作のポイントは、依頼者の体の現状を正確に把握すること。取りかかったのは、「股義足」を装着する股関節から足先までの採寸です。
■三浦さん
「高さ的にはどんな?ちょっと低い?ちょっと高いかな」
この器具は、三浦さんが独自に開発。常に考えるのは、ユーザーの使い易さです。
■三浦さん
「型をとる方法が独特で他社になくうちだけやってる方法なんですよ」
三浦さんが送り出す、義足や義手など「義肢」の数々。その特徴は、これまでにない体に合った装着感と言います。
■新美 想真さん
「(今までの義足と)全然違って昔あった痛みとかもなくなったりして(三浦さんの気持ちが)いろいろ込めらて工夫とかがあってありがたく思います」
三浦さんとの出会いは、去年。父親の祥太さんが、インターネットで工房の存在を知ったのが、きっかけです。そして変わった日常。2023年9月には、国立競技場であった大会に、健常者とともに出場しました。
■新美 想真さん
「(三浦さんの股義足は)使いやすくて走ったりもいろいろすぐ慣れやすい義足だった」
■三浦さん
「股義足を)使いこなしてくれて良くなったと言ってもらえたので大変うれしかった義足以上に想真くんの努力のたまものだと思いますね」
「義肢」を使う人に欠かせないには、交流と情報交換。三浦さんが企画したこの日の会合には、全国から7家族が集まりました。目的はお互いの悩みの共有。今回が初めての開催です。
■会合に参加した人は
「こういうふうに座っていたらどうして立ち上がるんかなとワシはこういうふうにして立ち上がらんとだめですけどいい方法があれば立ったり座ったりするのが難しいことがある」
「立ち上がるときにこういうものがあれば楽勝なんですけどない時は義足の距離を短くしてこれが長いとわーってなりませんコンパクトに座っちゃうほうが楽かなと最近」
これらの率直な声が、新たな「義肢」製作の糧となります。
■三浦さん
「股義足に関してはまだまだパーツも少ないんでユーザーに合わせたパーツをもっと開発できたらなと夢ですけどね思ってます」
依頼された「股義足」の完成は1か月半後の予定。それまで、待ち遠しい日々が続きます。
■三浦さん・想真さん やり取り
「長さどんなもっと長い方がいいとかある長い方がいいです」「いい大丈夫です」
義足を着けて走り抜ける想真さん。その笑顔が、三浦さんの何よりの励みです。
【2023年12月12日 放送】