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【特集】林業を次世代へ 山を守る男性の取り組みに密着 広島・北広島町

2024年6月11日 20:02
【特集】林業を次世代へ 山を守る男性の取り組みに密着 広島・北広島町

広島県の面積の7割を占める森林。山を守ろうと、ある男性の挑戦です。林業の担い手不足は深刻で、森林は手入れされなければ土砂災害を引き起こす危険もあります。まずは、木に触れてほしい…男性の取り組みに密着しました。

道なき道を進み、山を登ります。

大内良三さん50歳です。北広島町大朝で林業を営み28年。家業でもあるこの仕事を続けることに危機感を募らせてます。

■大内良三さん
「どんどん林業をやる人が辞めていく状況になってくる。自分がやり始めたころは大朝地域でも4業者くらいあったけど、いま2業者になってお互いに担い手不足で自分たちの代で終わりかなと話している」

大内さんの会社では4人が現場を担当しています。しかし、人手が足りず、山の所有者から依頼を受けて3年も経った今でも、手入れできていない場所もあります。

■大内良三さん
「昔だったらすごく手入れされていて、下が大体見えたりとか、ツルが巻き付いてなかったりとか、すごく綺麗な山だったと思うんですけど、木材の単価が下がっていって、山に価値がないとみんな思いだしたときから山に入らなくなりました。こう荒れてしまっている状態で、中が暗いですよね。暗いということは光が入ってこないので、ひょろ長いのなんかは根っこが張らない。そうなると、大雨が降ったときに土砂災害で流れてしまう。」

仕事のひとつが間伐です。木を切り倒し間隔をあけることで残った木の成長を促し、災害に強い山に育てます。作業が終わったあとには、光が差し込みます。もうひとつは大きくなった木を切り倒す伐倒です。

■大内良三さん
「60年とか80年。あれは130年くらい経っているが、そういう木を今はお金にしてまた新たに植え替えていくっていう作業をしていきます。林業が成り立っていくというのは、60年から100年でサイクルしてあげる。」

数十年かけて成長した木も切るのはわずか数分。慎重にチェーンソーを入れます。それでも。

■大内良三さん
「失敗しました。」

木は真っ二つに。経験があっても難しい仕事です。気を取り直して。今度は狙った場所に切り落としました。それでも心残りがあります。

■大内良三さん
「あの木が大体80年ぐらい経ってる木なんですけど、折れた部分は、バイオ燃料に使うものにはなっていくんですけど、本来、形として残るものが残らなくなってしまったことに対して何か申し訳ない気持ちもある。大きくなってくれたものに対して、ちゃんと価値を引き出してあげれない自分がすごく情けないです。

この日、大内さんは島根県邑南町に向かっていました。木材の市場です。各地から持ち込まれ次々と競りにかけられていきます。大内さんが出品したのは、数日前に切った樹齢およそ130年のスギ。長さ4メートル直径50センチです。

■大内良三さん
「2万円いったらいい方かな。1万8000円とかだったら泣きそうですけど」

■競り
「2万5000円…1万8000円…」

高いときには5万円ほどの値がつくといいます。しかし水を多く含むこの時期の木材は、カビの原因にもなるため安値に。収入は安定しません。それでも山に向かうときには、この仕事の意義を感じます。

■大内良三さん
「手入れをするときに思うのは、普段60年や130年ぐらいの木を切らせてもらうときに、自分の孫がもし木を切るようになったときに、じいちゃんが植えてくれているから今これがあるそういう思いで手入れしているというか。大事に木を切る使命 があるというか、次に繋げてい く使命もあるというか、ありがたいなと思って、自分たち生き さしてもらってるというのを感 じる瞬間かなと。」

林業を次の世代へ。2年前から取り組むのが”空き家の再生”です。

■大内良三さん
「林業の担い手を作る。研修というか、宿泊施設みたいな形で、オープンしていこうかなと思っています。」

知人を通して、建築のデザインを学ぶ大学生も改修の手伝いに訪れました。木を身近に感じてもらおうと内装はむき出しにしました。今月オープンする予定で、まずは家族などでの田舎暮らし体験を想定しています。

■大内良三さん
「古民家を活用して自然体験みたいな形で、木にまずは触れてもらって、木に触れることによって林業、どうなんだろうっていうところに結び付けられるような宿にしたいなと思っていて」

5月。大内さんは、知人家族を招きました。

■大内良三さん
「小さい子供が今日いるけど、どういう形で喜んでもらえるか、むちゃくちゃわくわくです。」

まずは、木に触れてほしい。実際にチェーンソーを使った体験。そして薪割り。子どもたちとって、初めての経験でした。

最後は、ドラム缶風呂です。自分たちで割った薪を使って湯を沸かす。自然の醍醐味を満喫した時間です。

■子ども
Q薪を割った気分は?
「満足しました。達成感。今まで入ったお風呂の中で一番気持ちいいです。最高です。」
■父親
「のびのびと田舎だからこそできるこういう環境。いいなって改めて思いました。子供たちもすごい楽しんでくれたし、純粋にうれしいですね。」

そして、次の世代への思いを込めた古民家も完成しました。

■大内良三さん
「一つは、やっぱり子供さん家族とか大学生とか高校生もちろん大人もここで木に触れてもらう。もう一つは林業の担い手をつくる。つくっていかないとこのままでは林業成り立たなくなる可能性が高くなるので、この2つをモチベーションとしてやっていきたいと思ってます。」

木を切ることに感謝し林業の未来を考える。山を守る大内さんの挑戦は始まったばかりです。

【2024年6月11日放送】

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