【クマ】市街地で銃猟可能に 自治体が判断 課題は
近年、各地でクマの市街地への出没が相次いでいて人身被害にもつながっています。
政府は先月、市街地での銃を使った駆除を条件付きで可能にする法律の改正案を閣議決定しました。
県内の現状と課題を踏まえ、法改正の影響をどう見るか専門家に聞きました。
クマ出没増加と法改正の背景
近年、全国各地で街なかに出没するクマの増加が問題となっています。
人身被害も相次いでいて、環境省によりますと、被害を受けた人は昨年度、全国で過去最悪の219人にのぼりました。
県内での被害は9人でうち1人が死亡しました。
こうした状況を受け政府は先月、野生動物の狩猟などについて定めた鳥獣保護管理法の改正案を閣議決定しました。
現在の法律では市街地での猟銃の使用は禁止されていて、クマが市街地に出没した時は別の法律に基づいて警察官がハンターなどに発砲を命じていました。
しかし、法律の改正後は住民の安全が確保できるなどの条件を満たしていれば、市町村長の判断でハンターが猟銃を発砲する「緊急銃猟」ができるとしています。
専門家が見る法改正の課題と対策
この政府の動きについて、クマ対策に取り組んできた県内の専門家は、これまで警察などと築いてきた連携体制が大きくかわることに不安を感じています。
【富山県自然博物園ねいの里・赤座久明さん】「富山県の場合ゆっくりですけども、現場に即した対応がなされてきている」
県内でクマ出没の多かったおととしには現場に駆け付ける警察官や救急隊員向けにクマ対策の知識を共有する研修会を開き現場での連携を見直してきました。
【赤座久明さん】「関係者が全部、同じ方向を向いて取り組む体制がかなり整ってきてると思ってるんです。ですからそれをあえて大きく変更するような、そういう必要はあまり感じてなかったわけですよね」
改正案では、クマが河川敷や広場に出没したり建物に立てこもった場合、市町村の職員が周辺の通行制限や住民の避難誘導を行い安全を確認、その後ハンターに発砲を委託する腕章などを渡しハンターのタイミングで発砲するとしています。
赤座さんは、各市町村の職員が現場で円滑な指揮ができるか注意する必要があると指摘します。
【赤座久明さん】「役所っていうのは2,3年で次の部署に行くとか次の部署に変わって全然今まで経験や知識のない人がそこについて いわゆる専門性とか経験値の積み上げみたいなものが現場でできるのかどうなのかっていう風なことがやっぱり一番問題だと思います」
赤座さんは法改正後もハンターと自治体、警察の三者で協力体制を築くことが大切だと話します。
【赤座久明さん】「場合によっては市町村長の判断でやらなきゃいけないこともあるかもしれないけども自分たちができる得意なところを発揮しあってみんなで協力するっていう体制それを作っていかなきゃいけないと思います」
一方、赤座さんは、柿の木の伐採や里山の整備などクマと人との距離を保つ取り組みを長期的に行う必要性についても指摘しています。
改正法案は今の国会に提出され、環境省は市街地へのクマの出没が増える秋までに市町村の体制が整うよう、準備を進めるとしています。