3歳児以上「主食持参」が主流? 富山の保育施設のナゼ
園児たちが楽しみにしている給食。
県内の保育施設では3歳児以上は、ごはんやパンといった”主食”を持参しないといけないところが多いことをご存知でしょうか。
”謎”という声もあるこのルールについて、中島記者が取材しました。
保育施設での給食の様子
「いただきます!」
育ち盛りの子どもたちにとって楽しみなのが給食。
こちらの2つの給食は、いずれも富山市内の別々の保育施設のものですが、実はある違いがあります。それは・・・。
こちらの子どもたちが取りに行ったのは弁当箱。
それぞれの家庭から白ごはんを持参していました。
中にはパンを持ってきている子もいます。
園児
「おいしい」
この保育所では、おかずなどの「副食」は提供されるものの、ごはんやパンといった「主食」は持参しなければなりません。
ごはんが入った弁当箱は給食室で温度管理がされ、昼食の際に配られます。
浜黒崎保育所 岡本智子所長
「今度はおにぎりにしてほしいとか、星型のパンを持っていきたいだとか、食事を通して家庭でのコミュニケーションにもなっている1つかと思います」
一方、こちらの施設では保護者から費用を徴収して主食を「提供」しています。
給食室で炊いたごはんが、子どもたちのもとに運ばれていました。
園児
「ほかほか」
園児
「おいしい」
城南もなみ学園 福井三智子園長
「湯気があったり、食欲にもつながりますし、足りない時は、お代わりもできるっていうのがとてもいいかなと」
施設によって違う「主食」への対応に、保護者の中には驚いたという声も。
埼玉県出身で高岡在住の女性
「富山に来てから初めて主食持ってこなきゃいけないんだっていうのは、こっちに来てから初めて知った」
実は県内では、主食を「持参」させる施設が多数を占めています。
KNBの調べでは「持参」させる施設は全体のおよそ7割で、公立の施設に限ればおよそ9割に達します。
民間の調査では、主食を持参させている公立の施設がある自治体の割合は富山が全国で最も高くなりました。
一方、持参させている自治体がゼロという県も。
なぜ3歳以上になると主食を持参する、というルールが生まれたのでしょうか。
保育の歴史に詳しい専門家は、戦後の食料不足が背景にあると指摘します。
白梅学園大学 井原哲人准教授
「食料状況が悪かったっていうのが絶対的な条件です。国もお金がなかった。(国が)3歳未満児のところに主食を出さないってのはミルクを出さないということで何も出さないに等しいので3歳未満のところには出さなきゃいけない」
戦後の給食への財政支援は2歳以下は副食と主食、3歳以上は副食のみが対象となり、これが長らく見直されずに続いてきました。
「主食」への補助がない中、「持参」してもらうか「費用を徴収し園で提供」するかのどちらかとなったときに「持参」を選択した自治体が多くを占めたのです。
補助制度が変わった現在も、主食持参のルールが続いています。
県内の各市町村に「持参」してもらう理由について聞いたところ、保護者から費用徴収への理解が得られるかわからない、給食室の設備が整っていない、 調理員の負担が増える、昔からそうしているからなどと答えました。
一方、県内では、氷見市と舟橋村のすべての施設で主食が提供されています。
氷見市は、JA氷見市からの寄付により費用の徴収もありません。
主食の「持参」を巡っては、朝にご飯を炊く必要がでたり、毎日弁当箱を洗ったりと、働く保護者にとっては、大きな負担になっているという指摘があります。
主食を提供する県内施設に子どもを通わせる保護者からは、好意的な意見が聞かれました。
保護者
「こちらのほうでは主食を提供していただいているので、炊き立てのごはんも子供はおいしく食べることもできますし、助かっている」
県内の自治体は今後「保護者の意見を聞きながら検討していきたい」などとしていて、このうち富山市は今年度、アンケートを実施するということです。
こうしたルールを巡っては、ふとんを持ち帰りするかどうかも施設によって対応は様々です。
核家族化や共働きの増加など社会のかたちが変わる中、子育て世帯からは負担が増えているという声も上がっています。
国や自治体には、現状に合わせて制度や補助の見直しを続けてほしいと思います。