富山県周辺の活断層がもたらす被害 専門家が備え訴える
元日の能登半島地震を受け、富山県の周りにある活断層がどれほどの被害をもたらす可能性があるのか、国や県は調査を進めることにしています。
専門家は「最悪のケース」を想定した地震への備えや公的支援の重要性を訴えます。岡川記者のリポートです。
京都大学 川崎一朗名誉教授「地震学に問題を突きつけられたなと思っています。全体として百数十kmの長さで割れるような地震というのは、地震研究者はほとんど想定していなかったと思います」
京都大学の川崎一朗名誉教授は、能登半島地震を受けて県が設置した地震の専門家によるワーキンググループで座長を務めています。
能登半島地震で県内では、液状化現象による建物の沈下や上下水道・用水路の損傷が各地で起こりました。
これまでの県の被害想定では、密集した市街地や老朽化したライフラインなどが引き起こす被害について盛り込まれておらず、県はその見直しを進めることにしています。
川崎名誉教授は、富山市の呉羽山断層帯のように断層線のすぐそばに住宅密集地がある地域での被害想定を急ぐ必要があると指摘します。
川崎名誉教授 「呉羽山断層で地震が起こったら、水道管が至るところで破裂して、道路も段差ができて動けなくなる。陸の孤島化してしまう。消防車も救急車も入れない。生活用水も消防用水もなくなってしまう。そこで火事が発生したら、関東大震災の下町みたいに限りなく延焼する可能性がある。前回の呉羽山断層の被害想定の4000人を大きく上回る犠牲者が出る可能性があると思うんです。それをどこまで抑え込むことができるかというのが、これからの富山の地震防災の課題、あるいは最大の核心だと思います」
県内には他にも、高岡断層や魚津沖断層など、住宅や行政機関のすぐそばを走る活断層があり、被害想定の見直しが必要と川崎名誉教授は考えています。
さらに、被害を減らすには地盤の改良工事をして、耐震性のある家を建てるなど個人でできることに加えて、公的な支援も必要と強調します。
川崎名誉教授「多くの人が集まるような施設を作る場合は建築条件を厳しくして、海の近くに作る時は津波が起こった時の逃げ道をちゃんとしてるかとかね、そういうことも含めて建築許可を出すように、行政の介入って必要なんじゃないかなと思います」
一方県は、断層そのものの被害想定調査も新たに進めます。これまでは、海域活断層などの被害想定はされていませんでした。
川崎名誉教授「海底のことをやる研究者は色々努力してきたんですけど、なかなかよくわからないということがずっと続いてました。別に誰かが手を抜いてたとか、そういうのではないんですよ」
政府の地震調査委員会は8月、富山湾周辺の海域活断層の「長期評価」を公表しました。
富山湾周辺では「七尾湾東方断層帯」、新潟寄りには「上越沖断層帯」があります。いずれもマグニチュード7以上の大地震が想定されています。
発生確率はまだ評価されていませんが、能登半島地震を受けて予定よりおよそ1年前倒しして公表しました。
川崎名誉教授が注目するのは「七尾湾東方断層帯」です。長さは43km、想定される地震の規模はマグニチュード7.6程度。地震発生から10分以内に、高さ5m以上の津波が押し寄せるおそれもあるといいます。
川崎名誉教授「能登半島の南側にある堆積面は、10万年で30mから20m隆起しているんです。呉羽山は10万年で20m隆起しているんです。単純に考えたら、呉羽山(断層)よりもこっち(七尾湾東方断層帯)の方が隆起している。つまりこの断層が非常に活動的だということを暗示している」
また県は、南北にある複数の断層帯が同時に連動した場合の被害想定も新たに進めます。
川崎名誉教授「海底の断層が海岸まで上陸するようなところでは、激烈な地震動と津波と液状化がいっぺんに起こって、ひどいダメージを受けると思うんですね。そういう場所をどうするのかということも考えなきゃいけない。地球科学の視点から見ると、富山なんて1万年ぐらいの時間で見たら、むしろ地震が多い所なんですよね。そういうことを忘れないようにしていただきたい」
政府は富山湾周辺を含む25の海域活断層について、地震の発生確率を来年前半にも示すとしています。いつ起こるかわからない地震。改めて、備えは十分か確認してみてください。
専門家は「最悪のケース」を想定した地震への備えや公的支援の重要性を訴えます。岡川記者のリポートです。
京都大学 川崎一朗名誉教授「地震学に問題を突きつけられたなと思っています。全体として百数十kmの長さで割れるような地震というのは、地震研究者はほとんど想定していなかったと思います」
京都大学の川崎一朗名誉教授は、能登半島地震を受けて県が設置した地震の専門家によるワーキンググループで座長を務めています。
能登半島地震で県内では、液状化現象による建物の沈下や上下水道・用水路の損傷が各地で起こりました。
これまでの県の被害想定では、密集した市街地や老朽化したライフラインなどが引き起こす被害について盛り込まれておらず、県はその見直しを進めることにしています。
川崎名誉教授は、富山市の呉羽山断層帯のように断層線のすぐそばに住宅密集地がある地域での被害想定を急ぐ必要があると指摘します。
川崎名誉教授 「呉羽山断層で地震が起こったら、水道管が至るところで破裂して、道路も段差ができて動けなくなる。陸の孤島化してしまう。消防車も救急車も入れない。生活用水も消防用水もなくなってしまう。そこで火事が発生したら、関東大震災の下町みたいに限りなく延焼する可能性がある。前回の呉羽山断層の被害想定の4000人を大きく上回る犠牲者が出る可能性があると思うんです。それをどこまで抑え込むことができるかというのが、これからの富山の地震防災の課題、あるいは最大の核心だと思います」
県内には他にも、高岡断層や魚津沖断層など、住宅や行政機関のすぐそばを走る活断層があり、被害想定の見直しが必要と川崎名誉教授は考えています。
さらに、被害を減らすには地盤の改良工事をして、耐震性のある家を建てるなど個人でできることに加えて、公的な支援も必要と強調します。
川崎名誉教授「多くの人が集まるような施設を作る場合は建築条件を厳しくして、海の近くに作る時は津波が起こった時の逃げ道をちゃんとしてるかとかね、そういうことも含めて建築許可を出すように、行政の介入って必要なんじゃないかなと思います」
一方県は、断層そのものの被害想定調査も新たに進めます。これまでは、海域活断層などの被害想定はされていませんでした。
川崎名誉教授「海底のことをやる研究者は色々努力してきたんですけど、なかなかよくわからないということがずっと続いてました。別に誰かが手を抜いてたとか、そういうのではないんですよ」
政府の地震調査委員会は8月、富山湾周辺の海域活断層の「長期評価」を公表しました。
富山湾周辺では「七尾湾東方断層帯」、新潟寄りには「上越沖断層帯」があります。いずれもマグニチュード7以上の大地震が想定されています。
発生確率はまだ評価されていませんが、能登半島地震を受けて予定よりおよそ1年前倒しして公表しました。
川崎名誉教授が注目するのは「七尾湾東方断層帯」です。長さは43km、想定される地震の規模はマグニチュード7.6程度。地震発生から10分以内に、高さ5m以上の津波が押し寄せるおそれもあるといいます。
川崎名誉教授「能登半島の南側にある堆積面は、10万年で30mから20m隆起しているんです。呉羽山は10万年で20m隆起しているんです。単純に考えたら、呉羽山(断層)よりもこっち(七尾湾東方断層帯)の方が隆起している。つまりこの断層が非常に活動的だということを暗示している」
また県は、南北にある複数の断層帯が同時に連動した場合の被害想定も新たに進めます。
川崎名誉教授「海底の断層が海岸まで上陸するようなところでは、激烈な地震動と津波と液状化がいっぺんに起こって、ひどいダメージを受けると思うんですね。そういう場所をどうするのかということも考えなきゃいけない。地球科学の視点から見ると、富山なんて1万年ぐらいの時間で見たら、むしろ地震が多い所なんですよね。そういうことを忘れないようにしていただきたい」
政府は富山湾周辺を含む25の海域活断層について、地震の発生確率を来年前半にも示すとしています。いつ起こるかわからない地震。改めて、備えは十分か確認してみてください。
最終更新日:2024年10月10日 20:06