「復興の狼煙上げたい」 能登の老舗鍛冶屋4代目 新たな挑戦と地域への思い
地域に根付く町の事業者にスポットを当てる新シリーズ「なりわいの、未来へ」。初回は、能登町で長年続く鍛冶屋です。そこには、事業拡大への新たな取り組みと地域への思いがありました。
「鉄は、熱いうちに打て」
そのことわざには、こんな意味があります。
「チャンスを逃すな」
ふくべ鍛冶4代目・干場 健太朗さん:
「震災の象徴的な仕事したいなと思っていて、復興の狼煙を上げたいんですよ」
熱した鉄を鍛えながら理想の形に近づけるように。そこには、能登を思いながら確かな技術で新たなビジネスを開拓する経営者の姿がありました。
能登町で、明治時代から100年以上続く老舗「ふくべ鍛冶」。その店内には…
妻・由佳さん:
「海側に住んでいる人たちは、こういう角の鍬を好みます。山の方に入っていくと赤土だったり粘土質になってくるので、円(まる)を好む方が多いかなと思いますね」
農作業に使う道具から…
妻・由佳さん:
「漁師さんが使う万能ナイフで、能登マキリっていうそういう商品になりますね。これとかはサザエ取りですね。えい、こんな感じで」
漁師が使う道具まで。作業場で手掛けた商品が、ずらり!
店を守るのは4代目の干場健太朗さんです。
12年ほど前まで町役場に勤めていましたが、家業を継ぐことを決意。これまで妻の由佳さんや職人たちとともに、業績が低迷していた店の建て直しに力を入れてきました。
この日、届いたのはかごに入ったいくつもの平たい箱。一体、何が入っているのかというと…
ふくべ鍛冶4代目・干場 健太朗さん:
「今、月で1000件以上、年間2万本以上の包丁が集まってきてます」
それは「ポチスパ」と名付けた包丁を研ぐサービス。ネットで注文すると専用の箱が届き、そこに切れ味の悪くなった包丁を入れてふくべ鍛冶に送ると…およそ1週間で職人が研いだ包丁が返送されてくるという仕組みです。
サービスを始めたのは7年前。
その後、右肩上がりに急成長を遂げ、いまや売り上げの大きな柱に。今後は、なんとアメリカでの展開も予定されています。
ふくべ鍛冶4代目・干場 健太朗さん:
「ネットで今で簡単に包丁研ぎが依頼できるという仕組みは全国ではあまり少ないので、非常にそういうサービスがフィットしたんじゃないかなと思います」
創業、明治41年。能登町に開業後、奥能登の集落をまわりながら様々な道具の修理や製造を担ってきた「ふくべ鍛冶」。これまで100年以上に渡り、農業や漁業、そして人々の暮らしを支えてきました。
近年は「ポチスパ」のヒットもあり、猫の手も借りたいほど多忙を極める日々でした。
しかし、去年は、元日の地震で作業場や倉庫が被災し、一部の社員も退職することに。心が折れそうにもなりましたがそれでも干場さんはなりわいを諦めませんでした。
ふくべ鍛冶4代目・干場 健太朗さん:
「この震災ですごく建物や地面、人の心もボロボロになった部分はあると思うんですけども、これを機にですね、いろんなボランティアの方や企業さん含めて、いろんな技術とかアイデアがどんどん集まってくる地域にもなりつつあると思ってまして、ぜひ能登に復興に関わる企業、人にどんどん入ってきていただいて、たくさんの課題を解決していきたいなと。そういったところにうちも入れればなと思っています」
1月30日、干場さんは金沢市に足を運んでいました。参加していたのは…
「お願いいたします。ふくべ鍛冶の干場と申します」
新たなビジネスモデルを模索する起業家たちの会合です。
ふくべ鍛冶4代目・干場 健太朗さん:
「伝統的な技とデジタルを組み合わせて今やってるんですけど、年間2万本以上」
東京の経営者:
「預かってんの?」
ふくべ鍛冶4代目・干場 健太朗さん:
「それを海外展開どんどん今進めていくので」
東京の経営者:
「体制を築いた方がいいな。自分が全部預かってやれる。分け合って間に教育機関が必要なので、それを固めていくってことが重要だと思いますよ。一瞬で分かる。可能性がある。ただちゃんとやるステップだけ整理しないと」
鉄は、熱いうちに打て。いまが、そのチャンス。
ふくべ鍛冶4代目・干場 健太朗さん:
「こういうのこそ地方発な面がすごい強いから、震災の象徴的な仕事したいなと思っていて。修理に特化したもので。そうでしょう、やりたいです、復興の狼煙を上げたいんですよ」
能登に、ビジネスを。ビジネスで、復興を。干場さんが描くなりわいの、未来は。
ふくべ鍛冶4代目・干場 健太朗さん:
「いかに地域外からお金とナレッジ(知見)ですよね、人、情報、こういったものをいかに入れるかが重要だと思っています。能登で仕事づくりをする。ひいては能登で雇用の受け皿になったり、能登の経済を回していくというような、そういうところにつながってきますので、たくさんの人と僕が知り合いになって、情報を能登で拡散して、自分でも仕事をどんどん作っていきたいなと思います」