【100分の1ミリの世界】不妊治療のスペシャリスト“胚培養士”の仕事場にカメラが潜入
11人に1人が体外受精で生まれる今
「卵の時点でかわいい」
不妊治療を受ける女性はそう話します。
鹿児島市のレディスクリニックあいいく。年間200人以上の患者が体外受精により妊娠しています。許可を得てその現場にカメラが入りました。
女性の卵子を体外に取り出す「採卵」。医師が卵巣に管を入れて吸い取ります。その卵を託されたのは胚培養士。受精させて子宮に戻すまで育てる。治療の中核を担います。
100分の1ミリの世界とは…
(胚培養士・大谷直人さん)
「卵の周りに卵丘細胞というのがついてるんですけど、これがたくさんついてるほうが良くて」
もやのような細胞に包まれた丸い粒。これが卵子です。その大きさは僅か0.1ミリ。
扱うガラス管は溶かしてさらに細く引き伸ばして使います。操作は、なんと自分の息で。
(胚培養士・大谷直人さん)
「息でした方が微調整がきく。慣れているので」
採卵は女性にとって肉体的にも精神的にも大きな負担がかかります。1つも無駄には出来ません。とれた卵は患者の希望で全て「顕微授精」することに。卵子に直接精子を注入する、高い技術が求められる作業です。
形や動きを見極め良い精子を選びます。
(胚培養士・大谷直人さん)
「ここが培養士にとって悩む1つなんですけど。この精子を選んで果たしていいのだろうか?すごい葛藤があるんです。これですべてが決まる」
特殊なコントローラーを使って肉眼ではわからないほどの微細な調整を繰り返します。
“取り違え”は絶対許されない 受精卵は凍結保存
受精卵は数日培養し、正常に育ったものだけを移植まで凍結保存します。個人差はあるものの採卵してここまでたどり着くのは6割ほど。培養室に並ぶ容器には1つあたり約250人分の受精卵が保管されています。取り違えは許されません。