【我慢せずに助けを求めて‼】“死にたかった” DV被害者の訴え
■4歳の娘を育てる橋口さん 夫からのDVに苦しめられた
鹿児島市に住む橋口明日香さん。4歳の娘を育てるシングルマザーです。大阪出身の明日香さんは21歳で結婚し鹿児島へ。しかし、夫の親や祖父母との同居生活に馴染めませんでした。
■橋口さんが体験したDVは・・・
(橋口 明日香さん)
「ご飯も毎日おかずと主食と汁物とちゃんと3つは作れとか、今日は何を作るのって言われてそれを作ってなかったら嘘つきだって言われたり」
夫も母親の肩をもっていると感じ孤独に苛まれました。授かった命を流産したときも…
(橋口 明日香さん)
「元旦那さん帰ってきたら、なんで寝ているの?今、お母さん皿洗いしているのだから、しなきゃと言われて、流産の手術をして帰って来ているのだけど。本当に一人だったから帰りたくて毎日泣いていた」
その後、再び妊娠するも、切迫早産になり入院。入院中、夫から告げられたのは「離婚してほしい」という言葉。新たな命の誕生。幸せの絶頂の…はずでした。
(橋口 明日香さん)
「早く離婚をしてくれないなら生活費は渡しませんと言われてしまって。家賃は向こうが名義だったから払ってくれていたけど、食費とか本当にどうしようもない状況。新生児は、思っているよりお金がかかる。もうどうしようもなくなって、生後まもない赤ちゃんと2人僅かな貯金を切り崩す生活。(産院に)新生児連れて離婚って言われちゃいましたどうしましょう、私はもう死ぬしかないですって(そう思い詰めてしまう状況ですよね)死にたかったですねあの時は…」
■去年 鹿児島県内のDV相談件数は2000件超える 専門家は・・・
こうした状況についてDVや虐待などの問題に詳しい専門家は。
(鹿児島女子短大・平本 譲准教授)
「まずは経済的な部分というところが大きなポイントもあります。間違いなく心理的なドメスティックバイオレンスというところになる」
県内では去年DVの相談が初めて2000件を超えました。精神的、経済的なDVは「自分が悪い」と我慢してしまう人も多く、実際にはその何倍も被害者がいるのではと言います。
(鹿児島女子短大・平本 譲准教授)
「困難な状況にある方たちというのは精神的なダメージも大きいので、その後の精神的なサポート、つまり寄り添い支援と見守り支援が重要になってくる」
■DV被害者に救いの手を・・・“女性自立支援施設“ “母子生活視線施設”とは
DVの被害者などに生活の場を提供し、自立に向けたサポートを行うのが女性自立支援施設や母子生活支援施設です。入所者の安全のため、場所などを明かさないことを条件に取材が許されました。
(母子生活支援施設・川添 大徳副寮長)
「緊急にショートステイや一時保護の方がいらしたときに生活してもらうところ」
案内されたのは、風呂やトイレもついた1DKの居室です。
(山下 香アナウンサー)
「急を要するというと、やはり暴力を受けたり保護が必要な方?」
(母子生活支援施設・川添 大徳副寮長)
「昼間とか夕方に暴力があって警察や役場の方と一緒に夜10時ぐらいに入ってくる方もいる」
着の身着のままで来るケースも多いため、食器やタオルなどの日用品もそろっています。緊急用に空けている、この部屋を除き、現在20室全てが埋まっていると言います。共有スペースには子どもが宿題などをする学習室や保育室も。保育園が開いていない時間などに保育士が子どもを預かることもあるそうです。
■入所者の心のケアを行う母子支援員は…
入所者をサポートする母子支援員に話を聞きました。
(母子支援員)
「(どういうサポートを生活の中でしている?)お母さんは傷ついた状態で入ってこられるので一番は心のケア。子どもたちは心理的虐待を受けているので本当に大人を信じきれないという部分があるので、そこをどうやって大人を信じてもいいというように思ってもらえるように寄り添いながら支援をすることには努めている」
■県内の母子支援施設の利用状況は⁉
心理士による心のケアと並行して離婚の手続きや職探しなどもサポートします。県内にはこうした施設が5か所あり、今年4月時点で60世帯が暮らしています。
■新たな一歩を踏み出した橋口さん “保育士”の道へ
精神的、経済的なDVを受けた橋口さんも4年前、0歳の娘を連れ母子生活支援施設に入所。離婚し養育費を受け取りながら、短大に通い「保育士」の資格を取りました。選んだ職場は未就学児の療育を行う児童発達支援センター、子どもはもちろん、悩む保護者に寄り添うことを大切にしています。
■橋口さんが取材を受けた理由
(橋口 明日香さん)
「自分の場合は勇気を持って(市役所に)相談してみたからこそ、今がある。一つだけでいいから勇気を持って何か行動を起こせば変わっていく未来があるかもしれないというのはすごく伝えたい」
■県内では面前DV が多い可能性が…
実はDVは児童虐待とも大きく関係しています。県内では昨年度、初めて3000件を超える虐待が認定されました。「虐待」と聞くと殴るなどの暴力を思い浮かべる方が多いかもしれませんが、実は最も多いのは「心理的虐待」。そのひとつに「面前DV」があります。家族間の暴力や激しい口論などを、子どもに見せることも虐待にあたるんです。全国の統計では主たる虐待者は母親が多いのですが、鹿児島は父親の方が多くなっていて、平本准教授は鹿児島では特に面前DVが多い可能性があると指摘します。
■“面前DV”が子供に与える影響を専門家は⁉
面前DVは子どもにどんな影響を与えるのでしょうか。
(鹿児島女子短大・平本准教授)
「例えば周りで大きな声がしたり怒鳴り声を聞いたりすると、フラッシュバックといって過去の状況を思い出してしまって体の震えが止まらなくなったり過呼吸の状態になってしまったり、安定した親子関係が形成されていないと子ども自身の自尊感情であったり将来自分の夢希望を持って元気よく生きていくということが困難になることが考えられる」
■「我慢せずに助けを求めて‼」DVに関する相談は・・・
DVは間接的に、子どもにも深い傷を残します。我慢せず助けを求める、周囲が手を差し伸べることが必要です。DVに関する相談は、県女性相談支援センターやサンエール鹿児島などで受け付けています。
(2024年11月28日 KYT news.everyかごしま 放送)