「整形外科で骨の欠損に使える所まで…」東北大の30年越しの悲願、骨の“再生医療”

宮城の研究にスポットをあてる「情熱ラボ」。
今回は、失われた骨を蘇らせるという医療技術についてです。
ネズミの大腿骨ー。
骨が欠損してしまっている状態ですが、東北大が開発した技術を使うと、8週間で失われた骨が修復され、元の骨に近い状態に戻るそうです。
病気や事故などで失われた骨を、今までよりも早く修復するとされる、医療技術の最前線を取材しました。
仙台市青葉区にある東北大学の星陵キャンパス
〝骨の再生医療〟を長年研究する、鈴木治教授です。
鈴木治教授)開発してきたOCP骨補填材になります。実際に、整形外科領域で骨の欠損に使える所まで研究してきました」
OCP「リン酸八カルシウム」。
骨を再生させる高い能力を持つといいます。
鈴木教授は、世界に先駆けてこの物質に目を付け「OCP骨補填材」という失われた骨を再生させる材料を開発したのです。
骨の病気や骨折などで骨の一部が失われた時に、その失われた部分にこの材料を埋めることで、通常より早く失われた部分の骨が再生していくというのです。
実験では、欠損しているマウスの脛骨が再生されている様子が確認できました。
鈴木治教授)ゴロリと見えているのがOCPの顆粒になります。この周囲に見えるピンク色これが新しく形成された骨
OCPは、ここで紫色に見えている「骨芽細胞」という骨をつくる細胞を活性化させる力があるため、骨の修復が早まるといいます。
鈴木教授がOCPに目を付けたのは、30年以上も前にさかのぼります。
鈴木治教授)元々OCPは、骨の中にある物質と考えられていた。骨の中にあるんだったら、骨の形成に働きかける作用を持っているんじゃないかと想像した」
鈴木教授と一緒にOCPの開発を進めてきた企業が、仙台市にあります。
技術顧問を務める細谷さんは、実用化に向けたOCPの量産は一筋縄ではいかなったといいます。
日本ファインセラミックス・細谷敬三技術顧問)ちょっと条件を変えると、同じリン酸カルシウムでも違うリン酸カルシウムができちゃうみたいな、とても難しい非常にシビアな条件を整えてあげないと、このOCPができない」
10年以上かけてようやく合成装置の開発にたどりつき、これまでは1回で数グラムしか作れなかったものが、50倍以上製造できるまでになりました。
細谷技術顧問)これからですよね。医療の分野でさらに拡大、東北大と一緒に拡大させていければいいと思っている」
医療の現場では、すでにヒトへの臨床が始まっています。
東北大学の整形外科学分野の研究チームです
森優講師)良性の指の骨腫瘍の画像。1か月の所で(OCPが)骨化して来る所があるように思います。2か月の所だと白く映っている部分、骨化している部分が拡大しているようにも見えます」
日本での骨の移植は、年間3万件ほど行われています。
これまでは、自分の健康な骨を採取し移植する方法などが主に用いられてきましたが、骨を取る時に激しい痛みや合併症を引き起こすリスクもあったといいます。
こうしたリスクを回避し、より早く骨を再生させるOCPは、今後 私たちの治療のスタンダードになる可能性も秘めているといいます。
相澤俊峰教授)OCPが大きい欠損骨のない所を埋められれば、非常に期待が大きいと思います。それくらいのポテンシャルを持っている人工骨であると、僕らは考えております」
鈴木治教授)今まで治癒に時間がかかっていた所が早く治るとか、患者さんにとってはメリットそういったことが期待できる