「なぜ早めの避難ができなかったのか」観測史上1位の大雨 住民が語る当時と教訓<山形・秋田 豪雨1か月>
一級河川・最上川のほとり、山形県戸沢村の蔵岡地区では先月25日からの豪雨で約70戸に浸水被害があった。
ミヤギテレビは大雨の1週間後、現地に取材に入った。
<ミヤギテレビ 伊藤悠貴 記者>
「最上川の水は国道を越えて、集落に流れ込んでいったということです」
当時の状況を住民はこう証言する。
<山形県戸沢村の蔵岡地区の住民>
「津波の如く押し寄せてきたと思う。だからこういう被害が出た」
「天井が破けて断熱材が全部ぶら下がって」
戸沢村に近い新庄市での24時間の最大雨量は389ミリと観測史上1位。これまでの記録の約1.4倍に達した。
自宅2階からヘリで救助された男性は・・・
<ヘリで救助された住民>
「この辺まで水が上がってきていた。それから垂直避難。見る見るうちに水が上がってどうにもならなかった」
水位は1階の天井近くまで達し、夜が明けると窓の外は一面浸水。蔵岡地区では住民およそ40人が取り残され、その半数が自衛隊のヘリで救助された。
<ヘリで救助された住民>
「命も助かったということでそれはよかった。避難していれば一番良かった。今回はこういう形になってしまったので周りに迷惑をかけた」
男性は早めの避難が出来ていればと振り返る。
大雨によって、戸沢村では避難指示が発令された。
(戸沢村蔵岡地区 7月25日)
高齢者等避難 午前11時45分
避難指示 午後4時
緊急安全確保 午後9時38分
そして気象庁は、25日午後11時40分に大雨特別警報を発表。最上川中流では午前4時20分に氾濫が発生した。
この蔵岡地区に住む多くは高齢者世帯。なぜ高齢者等避難が出された時点で避難が出来なかっただろうか?
2018年、2020年と「内水氾濫」に見舞われ、住民の水害への意識は高いはずだった。これを受け、山形県は約14億円をかけて、集落を囲んで水の侵入を防ぐ高さ最大3mの輪中堤を完成させていた。
この地区の輪中堤は、最上川堤防に接続する形で長さ1kmにわたるもの。今回の豪雨では山側から流れる川の氾濫による水害は輪中堤が防いだとみられるが、最上川の水が堤防を越えてしまい、地区全体が浸水する事態となった。
「正常性バイアス」が避難の遅れに影響か
災害リスク学の専門家は、避難が遅れた理由をこう指摘する。
<東京女子大学 広瀬弘忠 名誉教授>
「安全だと思いたい気持ちと今まで努力してきて、いろんな災害に耐えてきた経験が一種の正常性バイアスといいまして、これから先もこのくらいだったら何とかなるはずだという気持ちを高めたのではないか」
住民からもそういった声が聞かれた。
<蔵岡地区の住民>
「最上川が堤防を越えてくるのは初めてなので」
「国道(の堤防を水が)越えてくるなんて予想していないんですよ」
「輪中提ができた時は出来たらいくらかいいかなと安心していたと思う。やっぱり水にはかなわないね」
<東京女子大学 広瀬弘忠 名誉教授>
「たとえば今、気候変動や温暖化など大きな変化が起こっている。それに対応して我々の意識もより敏感になっていかなくては いけない。それに対応・適応しながら、変化を自分の中に取り込んで行動していくことがこれからますます必要になっていく」
<ミヤギテレビ 伊藤悠貴 記者>
「想定外の異常気象が続くなか、ハードの整備だけに頼らない防災意識の向上が各地域でも求められています」