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「幻のそば」を広めて、諫早を「そばのまち」に 伝統普及に取り組む男性とベトナム人の挑戦《長崎》

2024年12月31日 7:00
「幻のそば」を広めて、諫早を「そばのまち」に 伝統普及に取り組む男性とベトナム人の挑戦《長崎》

生産量が少なく「幻のそば」と呼ばれる「高来そば」。

生産や販売を引き継いだ男性が、新たな取り組みを始めています。

諫早を「そばのまち」に。地域活性化の一歩です。

11月下旬、諫早市小長井町で開催された、まちおこしイベント「こなフェス」。

菓子やフライドポテトなどと並んで販売していたのは…。

(中瀬 謙さん)
「2杯ですね。ありがとうございます」

「高来そば」です。

旧高来町で古くから栽培され、香りの高さが売りですが、生産量が限られていることから「幻のそば」と呼ばれます。

特徴は食べ方にも。

注ぐのは、そばの「ゆで汁」です。

濃い味のつゆをかけ、地元でとれたネギなど薬味を添えれば、名物の「どろりそば」の完成です。

(来場者)
「食べてみたいと思っていて、初めて食べた。おいしい。そばは好きなので」

(来場者)
「いつものそばより出汁がきいている気がした。おいしい」

(来場者)
「どろりそばという名前にひかれて、どんな味なんだろうと」

この店を出したのは、中瀬 謙さん 51歳。

高来そばを栽培する農業生産法人の代表に11月、就任しました。

(中瀬 謙さん)
「どろりそばの味を知ってもらいたい」

中瀬さんの出身はベトナム。

1995年に来日し、現在は諫早市に暮らしています。

外国人の人材派遣会社で役員を務めるほか、今年春には、ため池を活用してツリーハウスを建てるなど、地域の活性化に積極的に取り組んでいます。

(中瀬 謙さん)
「そばを作って、まちづくりをしたい」

干拓地に広がるコスモス。

そのとなりに約1.4ヘクタールのそば畑があります。

例年は11月中旬から収穫しますが、猛暑の影響で成長が遅れ、これからが最盛期です。

(中瀬 謙さん)
「色が黒くなっている種だったら、ちょうど収穫時期で、緑が少し残っているのも香りがすごくいい」

松永 孝典さんは(74)約15年にわたって高来そばの普及に努めてきました。

(松永 孝典さん)
「ちょうどいいぐらい。出来が。そば屋も喜ぶと思う。香りがいいって」

地域の農産物を販売する農業生産法人を、2003年に設立。

もともとは、地域の人が自分たち用に栽培していたそばを、特産品にしようと少しずつ生産を拡大してきました。

一方で自身も高齢になり、1年前に中瀬さんと出会って、高来そばの未来を託すことを決意したそうです。

旧高来町にある直売所ではこの日、台風で壊れた看板のかけ替えが行われました。

(中瀬 謙さん)
「イメージが変わった」

デザインを手がけた中瀬さん、こだわりは…

(中瀬 謙さん)
「直売所のイメージが分かるように果物の絵を入れ、食事処も今まで認知してない方が多かったから」

高来そばをはじめ、農産物の販売。

5年前には食事処もオープンし、地域の魅力を観光客らに伝えています。

(松永 孝典さん)
「諫早市内に10軒程度、幻の高来そばを使ったそば屋ができればなと思っていた。体が続く間は彼を一生懸命下支えして、そばの食べ歩きができるまちづくりができるように、彼にお願いしたい」

(中瀬 謙さん)
「松永さんはいろいろな思いがあってやってきたので、私は引き継いで、それを守りながら拡大したい。地域おこしの目的で人気の店を作りたい」

食事処で提供するのは「どろりそば」と「ざるそば」のみ。

そこで、いま考えているのが “新メニュー”。

使うのは、地元で捕れたイノシシやカモ肉。ジビエを使ったメニューの試作を進めています。

(永尾 洋一さん)
「ジビエそばというのは(地元に)ない。せっかく捕れているので、それをおいしく食べてもらうようにしてもらいたい」

ジビエの加工、販売を行う組合の永尾洋一さんが協力してくれることに。

イノシシ肉をゆで、カモはじっくりと出汁を取ります。

(永尾 洋一さん)
「天然のものは、いろいろ食べているからおいしい。全然味が違う」

そばに盛り付けると、つゆにつけていただく「ジビエ山かけそば」と、温かい「カモそば」の完成です。

(中瀬 謙さん)
「おいしい。(そばと)相性はいい。これはいけると思う」

(松永 孝典さん)
「(そばは)水洗いもしないで、そのまま “かけそば” にすると、そばの香りがすごくしておいしい。これもそうした方がいいかもしれない」

そばだけでなく、イノシシ肉を使ったキーマカレーや丼も、新たに提供することに。

改良を重ね早ければ、12月にもメニューに並ぶ予定です。

中瀬さんにとって初めての、そばの実の収穫。

栽培、収穫や調理など教わることはたくさんあります。

(松永 孝典さん)
「私の場合は教えてくれる人が誰もいなかった。彼の場合は、私が十分知識を持ってるから短期間でやれる。たぶん」

(中瀬 謙さん)
「まだまだですね。まだ深い。深い、そば生産は。この味を知らない方が多いので、広めて皆さんに知ってもらいたい」

「幻のそば」を広めて、諫早を「そばのまち」に。

中瀬さんの挑戦は始まったばかりです。


【NIB news every.  2024年11月29日放送より】

最終更新日:2025年1月2日 15:21
    長崎国際テレビのニュース