海の恵みを有効活用 “野菜もまちも元気に”「魚の廃棄部分から農業用肥料」産業創出も目指す《長崎》
平戸市が取り組む魚を活用したエコノミー事業。
農業用の肥料の製造から、新たな産業の創出を目指します。
高校生も一緒になって地域を盛り上げる取り組みです。
青々とした葉を茂らせて育つジャガイモ。
同じ畑でも場所によって成長に大きな違いが…。
(Green Peace 山口 一平さん)
「あの棒から(左右を見比べて)どうか?」
(KTX 松田 淳志さん)
「こっちの方が、葉がモリッとしているような…」
(Green Peace 山口 一平さん)
「左手が肥料をまいた方で、右手が肥料なし」
(KTX 松田 淳志さん)
「葉の照りがある」
別の場所で栽培しているブロッコリーも…。
(KTX 松田 淳志さん)
「あっちの方は、腰の下くらいまで葉が広がっているが、こっちは膝の上くらいなので、それだけでも(成長が)全然違う」
成長の差は、畑にまいた “肥料”。
日本で初めての取り組みが始まっています。
大型レーザー装置などで自動車部品の金型を造る、愛知県の企業「KTX」。
2021年に平戸市に進出しました。
ここで新たな事業として、地域の資源を活用した肥料の生産と、それを作る装置の製造に取り組んでいます。
担当するのは、松田 淳志さん 30歳です。
(KTX 松田 淳志さん)
「魚由来なので、アミノ酸が非常に豊富に含まれてることと、有機物なので(肥料を)まいた際に、土壌を豊かにする効果がある」
肥料の原料となるのは、魚の「アラ」と呼ばれるもの。
頭や骨のほか、内臓など調理した後に捨てられる部分です。
(KTX 松田 淳志さん)
「残渣を使って肥料を作るという、ごみの地産地消みたいなもの」
地元で水揚げされた新鮮な魚介類が並ぶ、人気の直売所『平戸瀬戸市場』。
肥料の原料となるのは、直売所から出る魚のアラです。
これまでは、焼却処分していたそうですが…。
(平戸瀬戸市場 髙木 和明店長)
「(これまでは)自分たちで捨てに行っていたが、行かなくていいことと、お金もかかっていたが、お金もかからず、今は夏でも2日に1度、来てもらえるので助かっている」
回収後は、専用の処理装置へ。
(KTX 松田 淳志さん)
「発酵してる気泡であったり、酸のような成分があるので、こういうブクブクとした泡が出ている」
乳酸菌の力で、わずか1日から2日で肥料に生まれ変わります。
これまでに、約16トンのアラを回収。
焼却処分をしないことから、約3トンのCO2削減につながりました。
この技術を生かそうと、市が今年度から始めたのが「サーキュラーエコノミー創出事業」です。
(黒田 平戸市長)
「田舎だから捨て置かれたものが “それは資源だ” と、新しい希望と夢が広がる。このことが若者の将来の定住や就業につながればいい」
事業では、肥料の製造装置を改良して県内外で販売するのほか、肥料を活用した “平戸のブランド野菜” の開発を目指します。
この肥料を使った野菜作りに取り組む、県立北松農業高校。
野菜の栄養価などを分析する「実証実験」を行っています。
肥料で育てた、ジャガイモや玉ねぎの味は…。
(生徒)
「甘い。サツマイモって言われて食べたら分からなくない?」
(KTX 松田 淳志さん)
「見ていて気持ちがいい。本当にありのままに話してくれるので。いいものを使って作った野菜は、いいんだなと生徒たちも分かってくれたと思う」
事業では、地元の若者による野菜を生かした商品開発や、新たな産業の創出もサポートします。
県立猶興館高校の1年生は地域の課題を発見し、解決するための事業をスタートさせることを目指し、取り組んでいます。
(生徒)
「平戸シイラ観光ツアー」
(生徒)
「ふるさと納税って、簡単に出せる?条件がない?」
(StartupMate 大﨑 結さん)
「ふるさと納税で寄付してもらうときにシイラの鍋も返礼品で送るけれど、ツアーも一緒につける。ツアープラス鍋セットにする」
(生徒)
「それいいかも」
全国で地方創生の支援をしている大﨑 結さんに指導を受けています。
3年がかりで、平戸を活性化させるビジネスを開発する計画です。
(StartupMate 大﨑 結さん)
「かなり具体的に提案内容、アイデアの解決策が出てきているので、何か会社を起こしたり、プロジェクトを組成して動くところをお手伝いできればと思う」
(生徒)
「平戸って魅力がないとか、ここにいたくないみたいに思っていたが、自分で変えれるなら変えてみたいなってすごく思って。
こういう取り組みが好きになった」
生徒たちの熱意に、松田さんの期待も高まります。
(KTX 松田 淳志さん)
「平戸でこういうことをやりたいといって帰ってくるとか、平戸の魅力ってここだから、平戸に帰りたいとか。
そういうふうな思いを持つ若者が増えてくれるとうれしい。僕らが帰って来れる場所を作れたら、最終的にはすごいうれしい」
平戸の海の恵みが新たな産業を生み出し、地域の活性化へ。
まちに新たな実りをもたらします。