相互理解と地域との交流の拠点へ “イスラム教徒の心の拠り所” 礼拝堂「モスク」長崎に誕生《長崎》
県内で初めて誕生したイスラム教の礼拝堂「モスク」。
イスラム教徒の心の拠り所、そして地域との交流の拠点に。期待と課題を取材しました。
長崎市川口町に4月1日、イスラム教の礼拝堂「モスク」が誕生しました。
作ったのは、イスラム教徒の支援などを行っているNPO法人「長崎イスラムセンター」。雑居ビルを購入し、改装したそうです。
集まって礼拝を行うのは、県内や隣県に暮らすイスラム教徒=“ムスリム”で、
長崎に「モスク」ができるのは、初めてです。
(スーダン出身 ムサブ ティマンさん)
「一番、私たちの夢だった。会いたい人と会うことができる」
(インドネシア出身 リダ ニングルムさん)
「長崎は今までモスクが無かったから、きょう初めて来て、すごく楽しい」
キリスト教、仏教とともに、世界三大宗教の1つに数えられる「イスラム教」。ムスリムは全世界に約19億人いるといわれていて、モスクは欠かせないものだとそうです。
ムスリムを40年以上研究している 早稲田大学の店田 廣文名誉教授は、モスクは「単に祈りをする場だけにとどまらない」と話します。
(早稲田大学 店田 廣文 名誉教授)
「宗教的な場ではあるが、彼らの生活にとって重要な場。単にお祈りをするだけではなくて、互いに情報交換や助け合う場でもある」
▼長崎にいても ”当たり前の日常” をつくりたい
モスク誕生に尽力した長崎イスラームセンターの代表、アハメド・ジュナエド・ウッデインさん42歳。
バングラデシュ出身で、来日15年以上です。
普段は鎮西学院大学の准教授として、国際経済学などを教えています。
(学生)
「普通の優しい先生」
(学生)
「(イスラム教徒は) ちゃんと規律を守る人たち」
(経済政策学科の学生)
「高校の授業とかで戒律があるとか厳しいというふうに習った」
(アハメド・ジュナエド・ウッデインさん)
「高校では厳しい宗教って習った?」
(経済政策学科の学生)
「規律の事とか多く書いていた。だから現代社会のことはあまり触れられていない。現代の人がどう生きているか、全くわからなかった」
(アハメド・ジュナエド・ウッデインさん)
「1度その教科書を読んでみたいな」
1日に5回の礼拝が義務付けられるイスラム教。
(アハメド・ジュナエド・ウッデインさん)
「きれいな場所でお祈りする義務付けがあって、床の上にマットを敷いてお祈りするのが習慣。西方向メッカの方向(を向いて祈っている)」
アハメドさんも、授業の合間の礼拝も欠かしません。
(アハメド・ジュナエド・ウッデインさん)
「特に夕方の会議になると、4回目の礼拝が厳しくなる時間も出てくる。重要な審議とかがなければ、先生たちに “お祈りしてきます”と言ったら、どうぞと言ってくれている」
普段の礼拝は自宅や職場などで行っていますが、イスラム教の休日である金曜日は、本来はモスクに集まり、集団で礼拝するのが慣例です。
モスクの完成前、アハメドさんは地域の公民館などを借りていたそうです。しかし、広さの問題から人数に制限をかけざるを得ない時もありました。
ムスリムにとって ”当たり前の日常” をつくりたい。
アハメドさんは4年前から物件を探しを始めましたが、宗教的な理解を得られず、なかなか契約には至りませんでした。
(アハメド・ジュナエド・ウッデインさん)
「お祈り場所をみんながどう思っているか、説明するのが大変だった。不動産業者を通じて話すと、そんな大勢の人が来るなら私たち売れないよと言うこともあった」
店田名誉教授によりますと、日本には133のモスクがありますが、中には建設を巡り、地域住民による反対運動が起きた場所もあったと言います。
(早稲田大学 店田 廣文名誉教授)
「福岡のモスクは建築の計画が始まって、反対する声も地域住民からあったと聞いた。ただ礼拝の様子を見てもらったり話し合いを続けることで、福岡モスクは最終的にできあがった」
アハメドさんも、ビルのオーナーに “ムスリムにとってモスクの意味”や、“礼拝の重要性”などを丁寧に伝え、理解も得られたことで、無事に契約できたといいます。
そして完成した「モスク」。
ムスリムにとって、仲間とのきずなを深められる場所でもあります。
いわば ”心の拠り所” なのです。
▼モスクを「食」や「文化」の “交流の場” に
4月10日は断食月、ラマダン明けの大祭の日。ムスリムにとっては、2大祝祭の1つで、特別な1日で、礼拝の後はともに食事を楽しみます。
(アハメド・ジュナエド・ウッデインさん)
「どうぞ、食べてみて。おいしいかどうかわからないけど」
(青木雄大アナウンサー)
「おいしい。スパイシー」
この日集まったのは約200人。毎週金曜日の礼拝時の4倍です。
(マレーシア出身 アハマド イマン ハムザさん)
「礼拝する場所がちゃんとあって、居場所がある感じがする。家族と一緒にいる気分になる」
(アハメド・ジュナエド・ウッデインさん)
「イスラム教の人が一緒のところに(多く集まる姿)、長崎では見たことない、初めて。このモスク作るために働いたことを全部忘れた。みんなを見て今までの疲れが全部とれた。そのくらいうれしい」
県内で暮らすムスリムが住みやすい環境になるようにと、先頭で引っ張ってきたアハメドさん。
次は、イスラム教をより多くの人に理解してもらい、ともに交流し、地域に受け入れられる場所にしたいと話します。
(アハメド・ジュナエド・ウッデインさん)
「(このモスクは)イスラムの文化センター.日本人と文化交流をする場所.そのついでに我々がお祈りできる場所でもある。イベントの時とか招待して、みんなに来てもらって話をして、一緒に食べたり、ちょっと辛いものを作ったねとか、話を聞いてみたい。生の声を聞いてみたい」