【特集】「地域の方にとってはやはりプラスになる制度」 広がりをみせるライドシェア 山間地など交通空白地の移動手段として期待される中、タクシー会社など交通事業者の維持という目的も

一般のドライバーでも有料で人を運送できるライドシェア。今年に入り、鳥取県米子市や島根県松江市でも導入が決まりましたが、取材を進めていくうちに地域における公共交通の実情が見えてきました。
■2024年に解禁された日本版ライドシェア
赤沢亮正 経済再生担当大臣を迎えに来た1台のタクシー。運転するのはタクシードライバーではなく、講習を受けた一般のドライバーです。今年度から全国で解禁されたライドシェア。
タクシードライバーになるには本来、二種免許が必要ですが、タクシー会社の管理の元、一般ドライバーでも有料で人を運ぶことできるのが日本版ライドシェア。今、全国で広がりを見せています。
赤沢亮正 経済再生担当相
「例えば買い物環境とかね。あるいは役場とか病院に行く足の確保とか、人口が減ってる地域でしっかり交通空白地域を解消してほしい。その本当に大きな力に、この日本版ライドシェアはなるだろうというふうに期待をしてます」
■経営環境が厳しさを増すタクシー業界
米子市の皆生タクシー。2025年1月から「日本版ライドシェア」に参入。需要が集中する週末の夜、3人の一般ドライバーが兼業でタクシーを運転します。
ライドシェアドライバー 原田淑恵さん
「業務前の車両の点検です」
Q.自分の車ではします?
「全然。初めて見る中身とか結構ありました。経験として楽しいなとは思うんですけど、人さまをお乗せするとなるとちょっと緊張はしますね」
ライドシェアに参入したわけとはー。そこには切実な事情がありました。
皆生タクシー 杉本真吾 社長
「これ全国的になんですけど、非常に(運転手の)高齢化が進んでいまして。そういったところでどうしても夜働いていただける方っていうのが、だんだん少なくなっていると」
業界団体によりますと山陰両県のタクシードライバーの平均年齢は60歳以上。
※鳥取 64.5歳 / 島根63歳 (全国平均 57.6歳)
ドライバーの高齢化に加え、燃料費の高騰が経営環境の厳しさに拍車をかけています。信用調査会社・帝国データバンクによりますとタクシー会社の倒産・休廃業の件数は去年、全国で82件と過去最多。タクシー業界は大きな転換点を迎えています。
皆生タクシー 杉本真吾 社長
「タクシー会社っていうのは存続していくのが一段と難しくなっていくかなと。それはかえって地域の足が少なくなっていく、ということにつながっていくと私は思っています」
安来市に住む深田周子さん88歳。ほぼ毎日外出を楽しんでいます。
深田周子さん
「おかげさんでね 毎日出ます。日曜日も出ます。祝日とかね、みんな出ます。ほんにありがたいと思っております」
深田さんが利用しているのは安来市が事業主体として関わり、民間タクシー会社と共同で行う「公共ライドシェア」。降りる場所は指定エリアのバス停があるところに限られますが、市からの補助があるため市営バスと同じ200円で利用することができます。
※75歳以上は100円
深田さんはこのライドシェアで、スポーツジムに通うのが日課です。
深田周子さん
「カーブス(ジム)に行ってね、それからお茶飲んでね。午後12時半か午後1時半にまたお願いして帰ります。それが楽しみです。バスだとね、こんなに出れんかもしれません。この年齢になってからはね」
公共ライドシェアの目的は、交通空白地の移動手段を確保することだけではありません。
安来市地域振興課 石川貢之さん
「タクシー会社が今後とも維持できていって、市民の皆さんの移動手段の1つとして継続していけるように、というのもあります」
公共ライドシェアを運行するちどりタクシー。8人いるドライバーの平均年齢は67歳です。
ちどりタクシー 小西基史 専務
「もう本当みんな高齢になってきて、募集してもなかなか(新しい人が)入ってこない状態なんですよね。だからみんな無理がかからないような格好で働いてもらってる状態ですね」
ライドシェアによる業務委託料は、年間約500万円。安来市は今後、公共ライドシェアの対象エリアを拡大する計画で、実現すれば新たな働き方による人材募集も考えられるといいます。
ちどりタクシー 小西基史 専務
「(ライドシェアの)時間が午前10時から午後4時っていう昼間の時間なんで、例えば子育てが終わった女性のセカンドキャリア、選択肢の1つとしてもらったらいいと思います」
島根県は2023年に立ち上げた専門者会議で、交通空白地を作らないためにライドシェアと既存の交通事業者の共存が必要だとしています。
島根県交通対策課 佐川賢一 課長
「(ライドシェアは)県民の方、あるいは地域の方にとっては、やはりプラスになる制度だと思ってます。それぞれの地域でどういうふうに交通体系を考えるか、という1つの選択肢になるのかなというふうに思っております」
新たにはじまったライドシェア。地域の足を守る一手となるのかー。
今後の広がりに注目です。