2022年、静岡・牧之原市で3歳の女の子が幼稚園の通園バスに置き去りにされ死亡した事件で、検察は、13日、元園長に禁錮2年6か月を求刑しました。出廷した千奈ちゃんの両親が語ったことは…。

牧之原市の川崎幼稚園に通っていた河本千奈ちゃん3歳。2022年9月、通園バスに置き去りにされ重度の熱中症で死亡しました。

（杉本 汐音 記者）
「増田被告が静岡地裁へ入ります」

この事件で、業務上過失致死の罪に問われているのは、当日、バスを運転していた元園長の増田立義被告と当時のクラス担任の女の被告。起訴状などによりますと増田被告は園管理者としての責任とバスの運転手として千奈ちゃんを車内に置き去りにした2つの責任。当時のクラス担任の被告は、千奈ちゃんが登園していないことを知ったあとも保護者に連絡せず、所在の確認をしなかった責任を問われています。13日、静岡地裁で開かれた3回目となる公判。

（高山 基彦 キャスター）
「きょう、元園長増田被告と、元担任の女の被告の裁判の結審です。また、千奈ちゃんの両親が法廷に出席し、事件について意見を述べると言うことです」

裁判で検察側は「事件は園のきわめてずさんな管理体制が原因であり、両被告人の過失や被害結果がきわめて大きい」などと指摘。元園長の増田被告に禁錮2年6か月、当時の担任の被告に禁錮1年を求刑しました。

裁判には被害者参加制度で千奈ちゃんの両親が出席。父親が法廷で千奈ちゃんの“苦しみ”を訴えました。

（千奈ちゃんの父親 ）
『信用する幼稚園に娘を殺されたのです』『大人ですら経験したことがない、地獄の苦しみを味わいながら亡くなったのです』『パパに会いたい、パパ大好きと話す生前の動画を見て、謝る気持ちしかありません』

また、千奈ちゃんの母親も初めて裁判で発言。言葉を詰まらせながら思いを述べました。

（千奈ちゃんの母親 ）
『事件から1年9か月がたった今も、涙を流さない日はありません』『たった3年11か月しか生きさせられなくてごめんなさい。わが子を失うことほど悲しいことはありません』『この悲しみを理解していただき、裁判所には私たちに少しでも寄り添った判決を望みます』『刑務所に行くことが少しの償いになると思います』『もう何をしても千奈は戻ってきません。実刑をのぞみます』

両親は判例よりも重い実刑判決を求めました。

（増田 立義 被告）
『事件後に運転手から降車確認をしなければならないと聞いて、あ、そうだったんだと思いました』

これまでの裁判で明らかとなった被告の過失。通園バスのドライブレコーダーには千奈ちゃんが別の送迎バスを見て「後ろから来てるよ」などと話しかける音声の記録が残っていました。なぜ、増田被告は千奈ちゃんに気付かず、扉を閉めてしまったのか、

13日、増田被告は法廷でドライブレコーダーの映像を確認。裁判所に「思い出したことはあるか」と尋ねられるも…。

（増田 立義 被告）
『ありません』

千奈ちゃんの声に気付かなかったといいます。

複数回あった千奈ちゃんの不在を確認する機会。なぜ、当時の担任の被告は保護者への連絡を怠ってしまったのか。当時担任の被告は前回の法廷で…。

（当時担任の被告）
『自分の意識の中で最初にお休みと思ってしまった部分がありました』

急きょ保育の予定が変わり、身体測定などが行われることとなり、確認や連絡を怠ってしまったと説明しました。

13日、スーツ姿で証言台の前に立った増田被告と当時の担任の被告。最後に、反省の意を述べました。

（増田 立義 被告）
『話を聞いて、一生償っていきたい、一生お祈りを捧げたいと言う気持ちでいっぱいです』

（当時担任の被告）
『毎日、事件当日のことを思い出し、自分のしたことを思い、自分の責任であり、申し訳ない気持ちでいっぱいです』『千奈ちゃんとご遺族の方には謝罪の言葉しかありません。本当に申し訳ありませんでした』

両被告は罪を認め反省しているなどとして、増田被告の弁護人は裁判所に寛大な判決を、当時の担任の被告の弁護人は執行猶予付きの判決を求めました。

何度も見過ごされて奪われた千奈ちゃんの命。判決は7月4日に言い渡される予定です。