【活性化の鍵】訪日外国人数過去最多となる中で県内は伸び悩み…インバウンド呼び込みの動きが本格化(静岡)
訪日外国人の数は、2024年1年間で3600万人を突破し、過去最多に。こうした中、静岡県内でもインバウンドを呼び込もうという動きが本格化しています。
街で見かけることも多くなった外国人観光客。県内の外国人宿泊客は、2024年1月~11月までに速報値で約177万人。コロナ禍を経て、首都圏を中心に回復傾向となっていますが、県内はコロナ禍前と比べ7割程度と伸び悩んでいます。
こうした中、県はインド人観光客を呼び込もうと、インド人向けに国内旅行を手掛ける旅行会社のスタッフ向けに1泊2日のツアーを企画。
(県観光振興課 宇佐美 敦子 参事)
「西部中心に、ビジネスで来ている人も静岡で観光をしてほしいと思い、西部を中心に見どころを知ってほしいと行程を組んだ」
なぜインドに注目したのか―。来日するインド人の数は、2019年に約17万6000人でしたが、2024年に過去最多となる約23万3000人とコロナ禍前を上回るペースで増加していて、新たなインバウンド市場として注目を集めているのです。
ツアーには、インドとゆかりの深い場所が盛り込まれています。自動車メーカー「スズキ」の歴史をたどることができる「スズキ歴史館」。参加者の1人、インド人で都内で旅行会社の代表を務めるマルカスさんは。
(都内で旅行会社経営 マルカスさん)
「スズキの名前はインド人はみんな知っている。日本といえばスズキ」「インドのためにも勉強になる」
掛川市の「掛川花鳥園」では、来園者に人気のインコへのエサあげ体験やバードショーを楽しみました。ここにもインドとゆかりのあるものが…。
(都内で旅行会社経営 マルカスさん)
「ラクシュミーという女神はインドのお金の女神様。乗り物はフクロウだからちょうどいい」
一方で、園内を回ったマルカスさんには気になったことが…。
(都内で旅行会社経営 マルカスさん)
「看板があるじゃないですか。『注意してください』とか書いてあるが、英語がなかった」
インド人の集客への一番の課題を今回参加した旅行会社に聞くと…。
(旅行会社)
「やはり料理だと思います」
(旅行会社)
「食事が重要だと思います」
(県観光振興課 宇佐美 敦子 参事)
「やはり一番の課題は食事。インドはベジタリアンが多い。インド料理以外は口にしないと聞いている」
食の課題を解決しようと、袋井市の可睡斎で、県は、動物性の食材を使わない「精進料理」を提案。初めて精進料理を食べたというマルカスさんは。
(都内で旅行会社経営 マルカスさん)
「飾りや色使いがいい。目で食べる。一回食べないとわからない。食べた方がいい」
また、オーナーがインド人という、本格インド料理が楽しめる浜松市内の店も訪れました。
(都内で旅行会社経営 マルカスさん)
「辛い物が好きな人なら喜ぶ」「どこでもインドのシェフがいることはポイント」
県は、今後、インド人シェフがいる店の情報を発信し、インド人観光客の獲得に力を入れていくということです。
一方、静岡市内にも外国人観光客の姿が…。オーストラリアのから来たポールさん(34)とベッキーさん(32)。明治30年創業の老舗和菓子店「潮屋」の職人に教わりながら、桜の花びらをモチーフにした「練り切り」づくりに挑戦。初挑戦ながら、この出来栄え。
(エドワーズ・ベッキーさん)
「ベリーナイス…ワオ」
(ガイザー・ポールさん)
「イエス、ベリーグッド」
これは、県がスタートアップ企業と連携し、実証実験として実施したもの。県は、インバウンド集客に課題をもつ8つの自治体と民間企業をマッチングして、9つの実証実験を行っています。
2人が宿泊した、静岡市清水区の東海道沿いにある築120年の町家をリノベーションした一棟貸しの宿。県は、この宿を運営する企業と連携し、宿泊者限定でさまざまな日本文化を楽しめるツアーを開催しました。最も力を入れていたのは…。
剣道体験です。観光だけでなく、外国人に人気が高い武道を体験できる「武道ツーリズム」としてアピールしようと、県庁剣道部の職員が稽古を披露し、礼儀作法や面の打ち方を、一からレクチャーします。
(県庁剣道部の職員)
「竹刀を持ちます。竹の刀です」
竹刀を手に、いざ実践練習です。
(ポールさん)
「力が強すぎる?」
(ポールさん)
「 強いねえ」
(ベッキーさん)
「ちょっと怖い…」
(ポールさん)
「 もっと大きい声で」
最初は恐る恐るだった2人も、練習を重ねていくうちに…。
(ポールさん)
「 ヤ~メン」
みるみるうちに上達。体験を通して日本文化を感じることができたようです。
(ポールさん)
「本物の文化背景と相手へのリスペクトなど、正しい形を知ることができてとても貴重な体験だった」
奈良時代に創建され、1300年以上の歴史を持つ「清見寺」。徳川家康が幼少期を過ごしたことでも知られ、日本の歴史と深いかかわりがあります。その歴史ある寺で、特別に書道体験。墨をすって、好きな日本語を見よう見まねで書いていきます。最後に富士山を書いて大満足な様子。
さまざまな日本文化体験が詰まった今回のツアー。どんなところに魅力を感じたのでしょうか?
(ベッキーさんとポールさん)
「 東海道見たかった」
また、旅で一番重視していることは。
(ベッキーさん)
『いい料理といい宿泊施設。リラックスしてエネルギー補給をしたい』
ツアーを手がけた担当者も、手ごたえを感じています。
(KAI堂 牧田 裕介 代表)
「東京とか京都だけじゃなくて、もっとローカルな、リアルな日本を見たいというお話をもらったので」「今回の体験を特別なプレミアムな体験として」「1泊2日で10万20万で楽しんでいただけるようなクオリティにしたい」
県は、今後、インバウンドを呼び込み地元をさらに盛り上げていきたい考えで、インバウンドでの集客が経済活性化の鍵となりそうです。