海外輸出額も右肩上がり!日本酒の酒蔵が次々開設する北海道は「異常エリア」⁉ 「伝統的酒造り」は無形文化遺産に登録 道産日本酒が注目される納得のワケとは?
うまい酒とおいしいアテ。
仕事終わりの体にしみる至福の時間。
天ぷらにしたワカサギは網走産。
和食にはやっぱり日本酒。
これは北海道の酒蔵で作られたもの。
(宮永キャスター)「北海道の日本酒、北海道の食材にもあいますよね。いま実は、北海道の日本酒が注目されているんですね。なぜなのでしょうか。きょうはその謎に迫ります」
札幌市内にある日本酒バーです。
店内にずらりと並ぶ日本酒はなんと、100種類以上!
しかもほぼ北海道産なんです。
(北海道産酒BARかま田 鎌田孝さん)「6~7年くらい前から道産酒という日本酒の呼ばれ方をして、ものすごい勢いで品質も向上しているし、ますます北海道のお酒は注目されていくと思います。北海道は蔵元が増えるという異常エリア」
というのも、現在北海道には日本酒を作っている「酒蔵」が16か所あります。
全国的には酒蔵の数は減っていますが、網走市と蘭越町で新たに2つの酒蔵が開設されることが決まっています。
なぜ今、北海道なのか。
それは、日本酒の原材料であるコメが関係していました。
(北海道産酒BARかま田 鎌田孝さん)「一等米比率というコメの良質な状態が北海道では保たれている。今、高温障害という問題点が本州にあるので、北海道の酒米を使うという傾向になっている。原料がしっかりしていると、やはり良質なお酒ができる」
全国的に注目されている北海道の日本酒を、愛好家たちはどう見ているのでしょうか。
(日本酒好きの人)「北海道ではお酒用のコメができてきて、各酒造が特性をいかして使うようになっている」
(日本酒好きの人)「少し前は獺祭とかを飲むのがステータスだったけど、今はやっぱり北海道のお酒を飲むのが好きだし、道外から来た人にはぜひ北海道のお酒飲んでくださいと勧めたくなる」
また、日本酒をたしなんでいる人の中にはこんなお客さんもー
(台湾からの観光客)「とてもおいしい。うまみがとてもいい。日本食レストランがあるので、台湾の人は日本酒を飲む機会がたくさんある」
いまや日本酒人気は国内だけにとどまりません。
国内での消費量はどんどん減っていますが、国外への日本酒の輸出量は右肩上がりになっているんです。
原材料となる良質なコメを作ることができる北海道の存在感は今後、日本酒業界で増していくかもしれません。
さらに、世界が日本酒に注目するきっかけになりそうな出来事があります。
11月5日、ユネスコの評価機関は、日本酒や焼酎・泡盛などを作る技術である「伝統的酒造り」について、「無形文化遺産に登録することが適当」と勧告を出していました。
そして、日本時間の12月5日、ユネスコの無形文化遺産に登録されることが決まったのです。
登録されたのは日本酒そのものではなく、作り方である「伝統的酒造り」です。
ポイントは「原材料の穀物を蒸す」「麹菌で麹をつくる」「発酵の技術」などで、その作り方は室町時代に原型が確立したあと、日本各地の気候風土に合わせて発展。
そして、現代まで受け継がれてきたことが評価されたといいます。
では、無形文化遺産に登録された「伝統的酒造り」とはどのようなものなのでしょうか。
(宮永キャスター)「小樽の老舗・田中酒造です。その歴史はなんと1899年。明治時代から続いているんですね。きょうはお酒の作り方を教えていただきます」
案内していただくのは、自らも杜氏である田中酒造の4代目社長・田中一良さんです。
(宮永キャスター)「無形文化遺産登録のカギになったのは何?」
(田中酒造 田中一良社長)「長い歴史・伝統・文化ですね。あとは日本酒独自の麹菌。麹の存在が大きいと思う」
(宮永キャスター)「この部屋は何の部屋?」
(田中酒造 田中一良社長)「麹を作る麹室、麹造り専門の部屋です」
(宮永キャスター)「カギとなる麹がここで!」
日本酒のラベルを見てみると、原材料はコメと米麹だけ。
非常にシンプルです。
さらに、米麹もその名の通りコメから作られているんですね。
その米麹を作るのが麹室です。
蒸しあげたコメを手作業で丁寧に広げて冷ましたあと、コメに麹菌の胞子を振りかけていきます。
白く舞っている粉のようなものが麹菌の胞子です。
麹の良し悪しでお酒の質が決まるとも言われるので、この作業はまさに日本酒造りの要なんです!
麹室内の空気が揺らがないように、作業中は私語厳禁です。
(宮永キャスター)「全部手作業でやっているんですね。手作業でないと出せないものってあるんですか?」
(田中酒造 田中一良社長)「微妙な手の感じ。温度とか水分量を感じたりと手はセンサーですので、それを利用する。そういう風に日本酒は作られてきたので、私たちは伝統的に継いでやっている」
こうしてできた米麹を、原材料であるコメや水とタンクに入れて発酵させます。
「櫂入れ」と呼ばれるかき混ぜる作業で発酵を活性化させます。
(田中酒造 田中一良社長)「香りをかいでみてください」
(宮永キャスター)「お酒の香りがしますね」
(田中酒造 田中一良社長)「酵母が発酵するときには泡が出るので、二酸化炭素が出るので泡がわいてきています」
(宮永キャスター)「本当だ!ぶくぶく泡が出てきています。まさに今、アルコールを作っている!」
2か月ほど発酵させたのち、ろ過して米麹などを取り除くと日本酒が完成します。
(宮永キャスター)「いただきます。さわやかな香りが口の中にパーッと広がっていきますね。お米のアルコールみたいなものがのどに入っていっておいしいですね」
この酒蔵では定番の日本酒だけではなく、初めての人にも親しんでもらえるような商品も作っています。
(田中酒造 田中一良社長)「これはこれから伸びていくのではないかと思っているクラフト酒。純米酒をベースにしたリキュールという分野で、ユズと一緒にしたお酒」
(宮永キャスター)「香りは完全にユズです!ユズのしっかりした香りが香ってきますね。飲みやすい。ユズのカクテルじゃないですけど、カジュアルな感じの」
(田中酒造 田中一良社長)「こういうのも日本酒の1つの分野かなと考えていて、特に外国のお客さまから非常に支持がある」
業界にとっては悲願だった無形文化遺産への登録。
世界中に日本酒の魅力を伝えるための大きなチャンスです。
(田中酒造 田中一良社長)「世界の酒の中でワイン・ウイスキー・日本酒と言ってもらえるような酒を目指していて。それが酒文化が残っていくために大事な過程だと思う。世界のお酒になる品質に持っていけるかというところに闘志を燃やして挑戦をしている」
ユネスコの無形文化遺産の登録により再び注目される日本酒業界。
無形文化遺産も登録されたことが、さらに魅力を広めるきっかけになるかもしれません。