【ラストラン】札幌の路面電車243号 最後の雄姿は復刻塗装で 秘話そして込められた思い
64年前の1960年に製造された、札幌の路面電車「243号」が、2024年5月10日で引退しました。
新型車両とは対照的な昔懐かしいデザイン。
深緑色とベージュの車体、真ん中には赤のラインが塗装されています。
1960年に造られた車両「243号」です。
2023年8月から往年のカラーに復刻塗装され、札幌市内を走行していました。
復刻塗装のプロジェクトを立ち上げたのは、路面電車の沿線で毎日電車を眺めながら育ったという和田哲さんです。
(和田哲さん)「この243号車が2024年5月で引退しますと、鉄道ファンや沿線に住む方から『もう一度あの色の電車を走らせたい』という声が上がり、リバイバルカラーに挑戦してみようと思った」
廃車になることが決まった243号を最後は往年の色で送り出したいと、クラウドファンディングで資金を集め、復刻塗装が実現しました。
(和田哲さん)「243号車は札幌にとってすごく大事な車両だとわかった。これらは札幌で作られた電車なんです。今の新型車両は本州で作られた車両だが、これは北海道札幌の中小の町工場が組合を作って作った電車なんです。町工場生まれ、下町電車なんです」
243号車を含む一部の車両は、昭和30年代に札幌で製造されました。
地元の町工場の技術とこだわりが詰まった「下町電車」だったのです。
復刻塗装には60年以上にわたってマチを支えてきた道産電車への感謝の思いも込められています。
そして迎えたきょう(5月10日)のラストラン。
札幌市中央区の電車事業所の前には多くのファンが駆けつけ、写真に残すなどして別れを惜しんでいました。
(札幌市民)「この色の電車がなくなってしまうのは残念です。もう少し走ってくれるとうれしい。涙を流さないように見送りたい」
(和田哲さん)「電車通りに住んでいると、市電が家族の一員のような感じがする。当たり前の風景がなくなるということで、みなさん寂しいと思う。いまの新しいマチの風景の中をツートンカラーの電車が走ってくれたことを、記憶の中にいつまでも残してもらえたらと思う」
札幌のマチとともに走り続けた243号。
多くの人に見守られ、60年以上の歴史に幕を下ろしました。