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リヤカーで販売 顔と顔を合わせる老舗弁当店 市民の昼食支えて半世紀 

2023年12月10日 8:00
リヤカーで販売 顔と顔を合わせる老舗弁当店 市民の昼食支えて半世紀 

創業からずっと販売員がお客さんにお弁当を届け続けている店があります。

リヤカーで運ぶ「日信」。

札幌の街中で見かけたことがある人もいるかと思いますが、顔と顔を合わせた販売を続ける弁当店に密着しました。

札幌市民の昼食を支える老舗の弁当店

種類もボリュームも満点。

老舗弁当店・日信のお弁当です。

販売されているのは全部で35種類。

豊富な品で札幌市民のお昼を支えています。

たくさんの種類があるお弁当はすべて手作り。

およそ150人の従業員が、夜中からひとつひとつ丁寧に、1日3万食ものお弁当を製造しています。

午前8時。

工場から届いたお弁当を確認しているのは、販売員の大槻美智代さん59歳。

(日信 大槻美智代さん)「480円の幕の内。金曜日だけ混ぜご飯になっているので、金曜日の売れ筋弁当です」

販売員が弁当を選びリヤカーで販売

日替わり弁当のほかに曜日限定のメニューを作るなど、飽きさせない工夫もしています。

(日信 大槻美智代さん)「私が発注しています。販売員をやっていて売れ筋はだいたいやっているうちに、自分たちのお客さんで毎日やっているので好みとかわかってきます」

どのお弁当を持っていくかを決めるのは販売員の仕事。

それぞれの販売員が担当するエリアのニーズに合わせ、持っていくお弁当を決めています。

そして、お弁当を運ぶのに使うのが、車ではなくリヤカー。

札幌市内で見かけたことがある人も多いのではないでしょうか。

車で配達するとなかなか車を止めることができないため、通行の邪魔にならないようにとリヤカーが主流に。

いまやリヤカーは「日信のシンボル」となっています。

この日はあいにくの雨。

しかし、どんな天気でも移動はリヤカーです。

オフィス街を回り対面で弁当を販売

大槻さんが担当しているのは市内中心部のオフィス街で、1日およそ20か所まわります。

大槻さんの届けるお弁当が会社員のお昼を支えています。

最初に訪れたのは鍼灸院。

院内にたくさんの種類のお弁当が広げられていきます。

(日信 大槻美智代さん)「大河原さんレンコンサラダですよね?」

こちらの常連の男性は、毎日サラダを持ってきてもらうといいます。

(利用客)「バランスよくとりたいなということで毎日野菜も買っています」

(記者)「毎日会うからこそ良いことはありますか?」

(利用客)「要望とかあれば言いやすいですね」

大槻さんが回るのはもちろんここだけではありません。

(日信 大槻美智代さん)「おはようございます、日信です。お弁当よろしかったでしょうか」

次に訪れたのは建設資材のリース会社。

大槻さんが声をかけると、お弁当を買い求める社員が続々と集まってきます。

大槻さんはただ、お弁当の会計をするだけではありません。

販売を始めて以来、長年大切にしていることがあります。

(日信 大槻美智代さん)「きょうはお肉でいきますか?きのう魚でしたもんね。バランスよく食べていますね」

(利用客)「サラダないの?」

(日信 大槻美智代さん)「サラダはきょう全部出ちゃったんですよー」

(利用客)「まじすか」

(日信 大槻美智代さん)「野菜ジュースとかどうですか?」

(利用客)「いいわ!」

販売員の人柄と老舗の弁当が売り

それは、お客さんとコミュニケーションをとること。

会話をすることで好みを知るだけでなく、お客さんの食生活を把握し、食事のアドバイスをしています。

(利用客)「きょうは焼きチキン弁当。顔なじみになるので、(付き合いが)長いとお互いわかりやすいのでいいんじゃないですかね」

(利用客)「子どもがいうこと聞かないんですよと愚痴じゃないですけど聞いてもらって、そんな時期もあるよと会話してくれるのでほっとします」

(日信 大槻美智代さん)「自分と日信の弁当で売る。人柄とお弁当で売っていくというところ(が強み)。この販売方法は日信にしかないものなので、続けていきたいなと思っています」

「日信」の創業は1972年。

以来50年間ずっと弁当一筋でやってきました。

知り合いから譲り受けた弁当店でしたが、なかなか売れず苦戦。

そこで、お弁当を持って根気よく会社を回っていくうちに、次第に売れるようになったといいます。

高齢者宅への「配食サービス」も

そんな「日信」が最近始めたのが「配食サービス」。

会社だけでなく高齢者などの自宅を回っています。

この「配食サービス」はお弁当を届けるだけでなく、顔を合わせるからこそできることがあるといいます。

(販売員)「きょうは大丈夫?どこも行ってない?ずっとうちにいた?体調の方も大丈夫?」

(利用客)「うん、おかげさまで」

それは高齢者の「見守り」です。

札幌市と連携し、一人暮らしの高齢者に変わったことがないか確認しています。

そして、もし何かあったときにはすぐに対応できる体制もとっています。

連絡がつかない時や、いつも家にいる時間に出てこない場合は、登録されている緊急連絡先にすぐに連絡をとることになっています。

(日信 東範英さん)「身内の方でも毎日顔を出すというのは、よっぽど近くなければ行かないと思う。食事という部分では毎日召し上がらなきゃいけないものだし。それを届けてというのも何かあったときにすぐ対応できる。そこで大切なのかなと思います」

高齢者の見守りも 顔と顔を合わせる弁当店

配食サービスを利用している齋洋子さん87歳です。

(齋洋子さん)「もう娘みたいなもんですので。お元気で来てくれればうれしいし。ちょっと世間話をしたり。明るい気持ちで長く続けばいいかな」

一人暮らしで2年前からサービスを利用している齋さん。

お弁当と一緒にふれあいを届けてくれることにありがたみを感じているといいます。

この日のお弁当は、焼き魚に鶏肉とボリューム満点。

一人暮らしだからこそ、家事の負担が減り助かっているといいます。

(齋洋子さん)「手を痛めて細かい仕事ができない。ここは出来たままで来るので食べられる。そういう利点はよかったなと思います」

(日信 松村貴洋社長)「やっぱり皆さんなんだかんだいっても人と接することを求めているのかなと思うので、販売員にとってもお客さんにとってもプラスになると思う。(販売方法を)守っていきたいですね」

お客さんとつながる弁当店。

手軽に買い物ができる時代に、顔と顔を合わせる売り方がいまも札幌で生き続けています。

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