立ち食いのすし店も 函館市民の台所「中島廉売」 にぎわい再び“たこ焼き”店の挑戦 北海道
「朝市」「自由市場」と並んで“函館三大市場”と言われる「中島廉売」。
地元御用達として函館市民の食卓を支えてきました。
令和のいま、新たなにぎわいを生み出そうとしています。
カギを握るのは「子ども」、そして「たこ焼き」です。
(店の人)「はい、おまたせ」
(店の人)「お待たせしました、ありがとうございます」
年の瀬の「中島廉売」。
函館市民の台所はこのにぎわいです。
「安売り」という意味の「廉売」。
その名の通り、安くて新鮮な食材は90年以上にわたって函館市民の食卓を支えてきました。
(買い物客)「安いと思うし、鮮度が全然違うのでやっぱりいいですよね。身近ですよね。話しながら魚を買える。野菜でも全部揃うし、あったかいです」
(買い物客)「人柄というか人と接するのが楽しいから来ているというのはあります」
(店の人)「お姉さん久しぶりだよね」
(買い物客)「このあいだ孫と来たっしょ」
(店の人)「おばあちゃんも孫に弱いな」
(店の人)「そしたら千円にまけるから」
(買い物客)「ほんと?いいの?」
(店の人)「ほめられたもんあんたに。特別だよ。まければ怒られるんだよ、うちの父さんに怒られるんだ」
昔ながらの対面販売も中島廉売の魅力。
店の人も買い物客も、このやり取りを楽しんでいます。
(店の人)「お客さんが来て、安いよってまければ買ってくれる。うれしいこと、対面」
中島廉売には飲食店も軒を連ねます。
立ち食いスタイルの「シゲちゃんすし」はいつもにぎわっています。
大将・宗山滋さん。
中島廉売ですしを握り続けて30年以上。
「爆裂十五貫盛」は、このボリュームで2千円を切るというから、人気にも納得です。
函館名物・がごめ昆布の軍艦巻きなど、市場ならではの旬を握った函館市民にはおなじみのすし店ですがー
(岡山からの観光客)「路面電車を撮りに来ました」
(シゲちゃんすし 宗山滋さん)「すごいんですよ。去年来て、電車借りるんですよ、実費で」
(広島からの観光客)「地元じゃ食べられないものがたくさんあるので、初めて来たとき感動しましたもん」
(仙台からの観光客)「北海道初めて来てダントツくらいおいしかったです」
SNSの口コミ情報などで観光客にも知られる存在にー
(中国からの観光客)「おいしい」
インバウンドの活況で海外からの観光客もここ数年増えてきました。
(シゲちゃんすし 宗山滋さん)「ニコニコして感動して食べてくれるのですごいやりがいがありますね。比較的年齢の若い人にとってはすごい魅力のあるところなのかなって。こういう方に発信しながらこの界隈を活性化できればと、少しでも。昔みたくはいかないでしょうけど、違う形でって思いますけどね」
「昔みたいにはいかない…」
寿司屋の大将も嘆くように、中島廉売も時代の流れに抗えなくなっています。
これは今から30年ほど前の中島廉売の様子です。
現在の歳末のようなにぎわいが日常の光景でした。
令和のいまー
周囲の人口も減り、シャッターを下ろす店があとを絶ちません。
店の数は全盛期の半分以下。
客足は遠のくばかりです。
(加川尊規さん)「子どもの頃は本当に人でにぎわっていて、毎日お祭りをやっているような、小学校の頃はそんなような感覚でしたね」
加川尊規さん(40)。
子どものころは中島廉売が遊び場のようだったといいます。
2024年11月、一念発起し中島廉売に新たに店を開きました。
それがー
市場に来た人が手軽に食べられるたこ焼き店です。
昆布だしを使った生地がおいしさの秘密。
しかし、加川さんが賑わいを取り戻そうとする仕掛けは、たこ焼きの味だけではありません。
店の看板にその答えがー
え?「こども無料」の文字?
(みんたこ 加川尊規さん)「中島廉売って、いま高齢化が進んでいるところに、子どもたちを呼び込むきっかけができれば、地域も活性化するし、子どもたちの健全な育成にもつながるかなと思って、この店を始めたって感じです」
その仕組みがユニークです。
この日、中島廉売の青果店に小学生が2人やってきました。
(店の人)「少しその辺のところ掃除してくれる?」
机を拭いたり、はき掃除をしたり。
小学生が店の手伝いをします。
その手伝いが終わると…
(店の人)「お手伝いの分(チケット)ね」
(小学生)「ありがとうございます」
手伝いをした店からチケットがもらえました!
そのチケットで、加川さんの店のたこ焼き5個を無料で食べることができるのです!
(小学生)「めちゃくちゃ楽しいし、食べれて手伝いもいい気分になれると思います」
(小学生)「これからも営業してほしいと思います」
たこ焼きでつながる中島廉売と子どもたち。
協賛金やクラウドファンディングを活用した、加川さんの画期的な取り組みです。
中島廉売の人たちも、この取り組みにはー
(店の人)「廉売のためにも子どもたちも喜ぶだろうし、続けてやってほしいなと思っています」
(店の人)「子どもさん来てくれるのかわいいし、元気が出るしいいと思います」
(鈴木琉莉馬くん)「お手伝いさせてください」
小学4年生の鈴木琉莉馬くんは、きょうも理髪店でお手伝い。
そして、お楽しみのたこ焼きを食べに加川さんの店にやってきました。
この日は、サプライズを持ってきました。
(手紙)「いつまでもおいしくてほっぺたが落ちるたこ焼きを作ってください」
(みんたこ 加川尊規さん)「めちゃくちゃうれしいですね。このお店をきっかけに、子どもたちが集まって人が集まって、また昔みたいなにぎわう中島廉売になってほしいなと思っています」
昭和の風景が残る函館市民の台所。
新たな魅力を発信しながら、令和でもにぎわう中島廉売を目指します。