【特集】商品化のきっかけは“ネイル女子” パックご飯の勢いが止まらない!? コメ農家も市場に参入 大手メーカーは増産体制《新潟》
私たちの主食・コメ。毎日、炊いているでしょうか?
早く食べたい時やもしもの時に活躍するのがパックご飯です。
その需要が増え続けているといいます。
パックご飯を手がけるのはいまや大手メーカーのみならず個人農家も…。
人気の理由とは?
■個人の農家も“パックご飯”市場へ参入
村上市でコメを作り続け300年。
13代目を受け継ぐ新耕農産の板垣嘉将さんです。
自慢は手塩にかけて育てた特別栽培米の「岩船産コシヒカリ」。
鉄分が豊富な土で育ったコメは粘りとうま味が強いといいます。
そのコメを出荷するというのでのぞいてみると…
自分たちで育てた岩船産のコシヒカリで作ったというパックご飯を箱詰めしていました。
お茶碗一杯分の150グラム。
加工は京都にあるメーカーに依頼して試行錯誤を重ね、炊飯器で炊いた時と遜色ない粘りや味を追求しました。
商品化のきっかけは妻・あゆ美さんの提案でした。
〈新耕農産 板垣 あゆ美さん〉
「(コメ研ぎは水が)冷たいです、特にいま冬なので。美容室に行ったら若い子たちから『ネイルやってるし、手冷たいし研ぎたくないんです。どうやって研いでますか?』と(聞かれ)『気合と根性だよ』と(答えた)。でも今それだけじゃやっぱりおコメは食べてもらえないので」
一方、夫・嘉将さんは…
〈新耕農産 板垣 嘉将さん〉
「正直驚きました。当たるも八卦当たらぬも八卦でもないですが…」
しかし、おととしから販売をスタートさせると、ふるさと納税などで年間7000個の注文があったといいます。
コロナ禍で学生支援の物資としても活躍し、若い人からも反響がありました。
〈新耕農産 板垣 あゆ美さん〉
「大学生や専門学校の女の子が購入していたので、もしかしたら少しはネイルをきれいに保つ手助けになっているかもしれないです」
■大手メーカーも増産体制
次から次へとレーンに流れてくる赤いパッケージ。
パックご飯「サトウのごはん」を手がけるサトウ食品の工場「サトウのごはん聖籠ファクトリー」です。
ここ聖籠町にある工場には、ことし2月、新たな生産ラインが増設され1日でなんと40万食の生産が可能となりました。
県内外の工場を合わせると毎日123万食を生産しています。
その工程で最も重要だというのが、巨大な釜を使う「炊飯」です。
〈斎藤久美子キャスター〉
「いま私がいる場所からカメラまでが60メートル、この長い釜で炊き上げるからふっくら仕上がるというんです」
60メートルの釜の中は温度の違う6つのゾーンにわかれています。
1パック分ずつ小分けにされたコメが35分かけてゆっくり移動することで、昔ながらの炊き方「はじめチョロチョロ、中パッパ、ジュウジュウ吹いたら火を引いて、赤子泣いてもフタとるな」が再現できるといいます。
原材料はコメと水だけ。
酸素を吸収する容器を独自に開発したことで、保存料を使わずとも1年間の長期保存が可能になりました。
生産量は近年、右肩上がりで、2013年から去年までの10年間でおよそ2倍に。来年は年間で4億食の生産を見込んでいます。
〈サトウ食品 経営企画部 浅川 梨乃さん〉
「近年の自然災害で需要が伸びたこともあるが、直近の生活スタイルの変化や、食が多様化したこともあって、家庭内の需要も伸びています。あとは、パックご飯『サトウのごはん』電子レンジで2分加熱するだけという簡便性もいまの消費者のニーズにマッチしていると思っています」
さらに、コロナ禍で自宅療養の支援物資に選ばれたことで、味と手軽さが広まったということです。
県産コシヒカリのほか、いまは全国各地の主力銘柄もラインナップに加わり60種類のサトウのごはんを販売しています。
〈サトウ食品 経営企画部 浅川 梨乃さん〉
「いろいろ(食が)多様化していると思いますが、ご飯は日本人ならではの一番の原点になるので、いつも変わらないおいしさを食べていただきたいと思っています」
自分たちで育てた岩船産コシヒカリでパックご飯を作る新耕農産です。
食べ盛りの子どもがいる板垣家。
ご飯が足りなくなった時には実際にこのパックご飯が活躍します。
白米のほか、すでに黒米や玄米をパックご飯にした新たなシリーズも手掛けています。
〈新耕農産 板垣 嘉将さん〉
「コメ食文化の若い人の入り口のアイテムとしてはおもしろいと思いますし、きっかけになってくれたら我々コメ農家としてもおコメ文化を未来につなげるので何よりも大事なことだと思うし、うれしいことだと思っています」
手軽でおいしいパックご飯。
食の多様化などでコメ離れが進む中、コメを食べるきっかけになるかもしれません。