1月は火曜日にシリーズで「酪農大家族30年の記録」をお伝えしてきました。最終回は、突然体調を崩して田野畑村を出て盛岡で静養を余儀なくされたお母さん登志子さんについてお伝えします。

田野畑村の酪農大家族吉塚公雄さん一家を支え続けてきたお母さん登志子さんが、2022年の夏ごろから体調を崩してしまいました。登志子さんは田野畑村の自宅を出て盛岡に住む二女令子さんの家で静養していました。乳搾りはもちろん、家の事も一切できなくなってしまったのです。

登志子さん（65）
「なんかヘクサムシ（カメムシ）が友達でしたやたらヘクサムシが歩いている自分の友達みたいな感じでいっぱいいるなと思っていっぱい集まっているのでも常にいつも家族ですよね家族だったり自分の友達みたいになって家族みたいに感じた？結局7人いれば子どもだなあと思って9人いれば家族だなって不思議とそう思っていましたね」

ひとりでいられないほどの状態だった登志子さん。家族の支えで少しずつ回復し、不調の原因を振り返ることができるようになって行きました。

「ぶつかり合うという部分が自分自身悲しかった。どっちも大事 お父さんも大事 子どもたちも大事、それを見ていてもめちゃうでも終いにはやっぱりお父さん 子どもの気持ちも分かってあげてよってということから、お父さんはお父さんでストレスになっていたと思う。それを考えるとやっぱり実際お父さんが悪いとは思わない。思っていないけど自分は気持ちがついていかなくなっちゃったのかな 多分」

共に歩んできた45年。登志子さんは時々田野畑村に帰れるようになりました。
去年8月。公太郎さんの長男康希さんは小学校5年生になりました。私たちが初めて会った時の公太郎さんと今の康希さんは同じ年です。すっかり大切な戦力となって牧場を支える一人になっています。一家にとって牛は大切な家族です。

Q康希くん牛好きか？康希くん「牛は好き」
Qどうして？康希くん「なんか人懐っこいやつがいたり うふふ」
Q将来お父さんみたいになりたい？康希くん「うん なりたい」
Q牛を飼いたいんだ？康希くん「牛を飼いたいです」

去年9月16日。四国。徳島市でテレビ岩手が2019年に公開した吉塚さん一家を描いた映画「山懐に抱かれて」が上映されました。会場には、長女都さんの夫のお母さんが住む岡山県に移り住んだ都さん一家、6人家族が訪れ、吉塚さん夫妻と久しぶりに再開しました。

Q将来の夢みたいなことってありますか　
長女仁美さん「まだそんなにちゃんと考えていないけど山地に貢献できるようになりたいなって思います」
Q岡山から岩手に行くかもしれない？
仁美さん「うなずく」
登志子さん「そう思ってくれているだけでね嬉しい」
Q仁美ちゃんのお話聞いてどうですか　公雄さん「感激しちゃう」

長男 誠さん
「将来の夢ですかまだ決まってないんですけど一つの道としてじいじの方に行って手伝うのもありかなと思ったりもしています」
Qじいじの方に？
誠さん「山地の方に行くのもありかなって」

登志子さんが牛舎に帰ってきました。73歳になったお父さん公雄さんも元気にがんばっています。牧場を背負っている公太郎さんを夫婦で支えています。公太郎さんが牛の飼い方を工夫して、出る牛乳の量もずいぶん増えました。四男の雄志さんはチーズを作りながらお父さんに代わって山地酪農牛乳の社長になりました。うれしいことがありました。

宝物世界大会「チャンピオン イズ白仙山地ダブルクリーム」

社長業で忙しい雄志さんの代わりにシンガポールに行った公雄さんは晴れの舞台に立ちました。

吉塚公雄さん「本当にありがとうございます」

雄志さん「世界に通用するチーズを作りたいというのが私の夢だったのでさらに磨きをかけて山地酪農の味を存分に出せるよう頑張りたいと思います」

公雄さん「時代が後押ししてくれるというか自然循環型のサスティナブル（持続可能な）のというものに非常に時代が付いてきていますよね、だから今からね 本当に本領発揮できるんだという思いがあります」

半世紀近く前お父さんが一本一本植えたシバは緑のじゅうたんとなって牛を育んでいます。理想の農業は、実入りが少なく苦労しましたが最近はビジネスとしても成り立つようになりました。

長男公太郎さん「親父からもお前よくやった良くやったと最近やっと言われるようになってきたので努力してよかったなと思っています。あとは二代目が いや三代目がお父さんの跡を継ぎたいと言ってもらえるように親父みたいな継がせ方はしたくないので（笑い）気持ちはわかりますけど親父の気持ちも」

三代目を目指す康希さん。

登志子さん「大変かな無理ならばあばやるよ」康希さん「だいじょうぶ」

親から子へ 子から孫へ。山懐に抱かれた営みが続いています。