【災害②】若い力 大学生の活動 コミュニティに刺激も
9月は防災月間です。
プラス1では火曜日に3回のシリーズで災害に関わる課題をお伝えしています。
2回目の17日は、東日本大震災からの復興や今後の防災に役立ちたいと取り組む大学生の若い力を遠藤記者が取材しました。
9月7日、岩手県盛岡市の南青山アパートで「なつまつり」が行われました。
このおまつりは岩手大学のサークル三陸委員会「ここより」が主催して毎年、開かれています。
「ここより」は東日本大震災が発生した2011年、学生の力で被災地を応援しようと発足しました。
会場では輪投げやボーリングなどの遊びが行われたほか沿岸宮古の被災状況を紹介したポスターなども貼り出されていました。
岩手大学 三陸委員会ここより 伊藤康介副代表 (19歳・理工学部2年)
「家族が被害に遭ったのは曾祖母と親戚何名か被害に遭って失ってしまいました。このサークルに入ろうと思ったきっかけは宮城県石巻市出身なんですけど、当時、日本各地 世界の方々から支援を頂いてすごくありがたいなと思ったので自分は今度支援する側の人間になって恩返しをしたいなという気持ちがあったので三陸委員会に所属しました」
阿部遥斗さんは宮城県七ヶ浜町出身でやはり被災し、多くの人の支援を受けたことから今度は支援する側になろうとここよりに参加しています。
岩手大学 三陸委員会ここより 阿部遥斗さん(20歳・農学部2年)
「南青山アパートで活動していると実際に被災した方と話をする機会が多くあるんですけど、外の人間のような学生相手でも笑顔で明るく接してくれているので私たち自身もすごく楽しく活動出来ているし、こういったコミュニティー支援地域の住民の方と関わるような機会はあまりないと思うので今後も続けていきたいと考えています」
三陸委員会「ここより」は能登半島地震への支援として募金活動を行い被災地に送りました。
盛岡市の南青山アパートに住んでいる人の多くは沿岸の被災地から遠く離れた盛岡に移り住んで新たな生活を始めました。
それだけにコミュニティーを作るのは容易ではなかったようです。
コミュニティーの形成について岩手県立大学の研究者は住民の意識の高さが大きかったと言います。
岩手県立大学総合政策学部 倉原宗孝教授
「やっぱりそれなりの思いと覚悟をもって盛岡で暮らしていこうという強い思いをお持ちの方が多いのではないかと思う中で僕自身の感覚としては皆さん非常に真摯(しんし)にこの街のむしろアパート内の人間としてというよりも地域の人としてここで暮らしていこうという積極性が強いのではないか」
南青山アパートのコミュニティー形成に務めてきた「もりおか復興支援センター」は岩手県立大学と協力して学生にこのアパートに住んでもらうことを企画しました。
もりおか復興支援センター金野万里センター長
「コミュニティーを継続していくのはどうしたらいいか考えたときに若い世代の人たちにつなげていくということを思いつきまして、それで県立大学の先生と話をして大学生や、もしくは被災地から盛岡の大学に進学してきた学生さんに入居してもらえたら、そこでつながりが持てるのではないかと、それからコミュニティーの活性化に若い力が発揮してくれるのではないかということで、こういったこと(学生に入居してもらうこと)を考えました」
岩手県立大学2年生の佐藤颯香さんは盛岡市出身ですが、復興支援センターや県立大学の誘いに応じて南青山アパートに住むことを決め今年4月からここで生活を始めました。
県立大学総合政策学部2年 佐藤颯香さん(19歳)
「私の就職は街づくり関連の仕事というイメージしていましたので県立大学の倉原教授のお話を頂いた際にコミュニティー支援という実践的に早いうちから関われるのはいいチャンスじゃないかと思いまして判断させていただくことを決意しました。被災した方の貴重な体験ですとか高齢化も進んでいてそれを伝承していく方がいないといけないということもありましたので、今は南海トラフのこともありますので防災意識を高めるという面でもいろいろなお話が聞けたらと思っております」
県立大学総合政策学部 倉原宗孝教授
「新しい空気を作る場作りというかそういう刺激を期待するところですね。ただし、そのことが彼女にとってもプラスになるでしょうし、地域にとってもあるいは住んでいる人にとってもプラスになるでしょうし、多分これからの新しいエネルギーの循環というのはこっちかあっちかだけではなくて、双方が同時にプラスになっていくような、そういう仕組み仕掛けが必要だと思うし、その一つになればという期待がありますね」
9月7日のなつまつり。
佐藤さんは岩手大学三陸委員会のメンバーと一緒に「なつまつり」を盛り上げていました。
岩手大学の伊藤さんは宮城県から移り住んできて、岩手県民の温かさがコミュニティー再生にも大きな役割を果たしているのではないかと考えています。
三陸委員会ここより 伊藤康介副代表 (19歳)
「ここに住んでいらっしゃる方は出身地がバラバラということなんですけど、分け隔てなく温かみで関わりあえているのかなって思いました。新しい町内会みたいな感覚で皆さん仲よくなさっているので、すごく学生としても活動していて楽しいなって思います」
佐藤颯香さん(19歳)
「あまり出てこない方にも参加していただけるイベントを企画するということ私の得意分野のモノづくりですとか、ハンドメイドする、そういうイベントを開催して今まだ出てきたことのない方にも参加しやすく楽しめるイベントができたらと思っています」
東日本大震災で一瞬のうちにコミュニティーを破壊されてしまった三陸沿岸の人たち。
住み慣れた場所で生活再建を図っている人もいますが、新たな生活の場を得た人もいます。
学生の活動はコミュニティーに新たな刺激を与えると共に被災者の貴重な体験を語り継ぐ役割も担っています。