【特集】世界が注目!ヘラルボニー 初の海外進出 支持を集める理由と今後の展望は?
特集です。障がいがある作家のアート作品を扱う盛岡市の企業「ヘラルボニー」が、今、世界の注目を集めています。2024年フランスやアメリカで革新的なアイデアで急成長するいわゆる「スタートアップ企業」として相次いで表彰されたほか、フランスのパリに子会社を設立し、初の海外進出も果たしました。国際的なアート市場でヘラルボニーが支持を集める理由は何か?今後の展望も探りました。
盛岡市に本社を置くベンチャー企業、「ヘラルボニー」。障がいのある国内外の作家と契約し、彼らが手がけるアート作品をあしらった洋服や生活雑貨などを販売しています。
契約作家の数は、およそ240人にのぼります。作家の一人、八幡平市出身の工藤みどりさん62歳です。去年の秋、工藤さんの絵をあしらったスカーフが、フランス・パリのアートギャラリーで展示されました。
工藤さんが利用するデイサービス「るんびにい苑」の生活支援係長 千田由子さん
「すごい、すごいことだなと思うし、障がいのこととか、こういった方たちを知るきっかけになって、興味を持って頂けたら良いのかなと」
ヘラルボニーを創業したのは、金ケ崎町出身の双子の兄弟、松田文登さんと崇弥さん33歳です。起業の原点には、2人の兄・翔太さんの存在があります。
プレゼンする文登さん
「私たち双子の兄自身が知的障がいを伴う自閉症があったというのがありまして」
プレゼンする崇弥さん
「ヘラルボニーというこの会社名も、兄貴が小学校時代に色んな日記帳や自由帳に書いていた謎の言葉を会社名にしておりまして」「そういう重度の知的障がいがある人たちが、心では「面白い」と思っているけれど、発露できていないものを可視化させていきたいと思って、ヘラルボニーという社名にしました」
ヘラルボニーはこれまでトヨタやニコン、ヨネックスなど多くの大手企業とタッグを組んできました。中でも、業務提携を結んだ日本航空の国際線ファーストクラスなどで配布されるポーチを始めとしたアメニティーのデザインにも採用されました。起業からまだ6年余りと成長途上ですが、2024年、大きな転機が訪れます。
2024年5月、ルイ・ヴィトンなどの高級ブランドを傘下に持つフランスの大手企業が主催する「イノベーション・アワード」で、世界のおよそ1600社の中からファイナリストの18社に選出。日本企業として初めて「多様性部門」のカテゴリー賞を受賞したのです。さらに、2024年10月にはアメリカ・シリコンバレーで開かれた「スタートアップワールドカップ」で上位10社に選ばれました。
文登さん
「ヘラルボニーというそのものがどういう思いでスタートして、何を目指していて、何を変えようとしているのか、それで実例はこういうものがあるよということ(を発表した)」「『ワオ!』みたいな、非常に大きな反響はもらえていて」「『オーディエンス賞があったら絶対君たちだったよ』って色んな人たちから言われたのは、すごいうれしいことだったなと思います」
相次ぐ表彰を受ける中、2024年秋、ヘラルボニーは新たな挑戦に乗り出しました。海外の子会社、「HERALBONY EUROPE(ヘラルボニー・ヨーロッパ)」の設立です。パリにあるスタートアップ企業の集積施設、「Station F(スタシオン・エフ)」にオフィスを構え、初めて海外進出を果たしました。
「HERALBONY EUROPE」CEO・忍岡真理恵さん
「やっぱりパリといえばアートの本場。すごく相性もいいですし、一番本場で勝負できるってことで、パリだなってことをすごく思った。今後、現地の作家さんも増えてくるかなと思ってます」
2024年9月から10月にかけては、パリで障がいのある作家のアート作品の展示会も開きました。展示会の開催に協力してくれたのは、パリの著名なギャラリーオーナー、クリスチャン・バーストさんです。
バーストさん
「彼らはすでに成功を収めていた日本の事業を世界に拡大しようと模索していました」「喜んで歓迎しましたよ」
バーストさんは、ヘラルボニーが国内で手がけてきた事業を知る中で、ある「気付き」を得たといいます。
バーストさん
「私は長い間、こういう(障がいのある)アーティストを世の中や芸術界に注目してもらうには、自分のギャラリーで紹介するしかないと思っていました。でも、別の方法もあると気付きました」「公共の場にアートを持ち込み、ギャラリーや美術館に足を運ばない幅広い層に訴えかける方法です。とても興味深いと思いました」
今後の海外事業はまだ決まっていませんが、2024年12月には、障がいのあるアーティストが在籍するベルギーのアートスタジオとパートナー契約を結びました。将来的に所属アーティストの作品をヘラルボニーで取り扱うことを見据えていて、ネットワークは着実に広がっています。
忍岡さん
「私たちのモノの販売というところも、ポップアップをやりながら手探りで反応を見ていきながら、うまくいけば店舗も持てるといいなという風に思っています」
文登さん
「作品が良いだけじゃなくて、作品をもっとよく届けていくこと」
崇弥さん
「ヘラルボニーって言葉でボーンと全部理解されるっていうジャンルになればいいなと」
ヘラルボニーは2025年3月、盛岡市の「カワトク」に新たな旗艦店の開業を予定していて、さらなる活躍が期待できそうです。