雪害事故発生件数 山形県内昨年同期比6倍 作業時の危険性や注意点は 天候も重要
私たちの暮らしに身近な出来事の現場を取材しその背景や影響を探る「THE現場検証」です。今回の大雪の影響で、屋根の雪下ろしや除雪中の雪害事故の発生が、急激に増加しています。発生件数は去年の同じ時期の6倍になる中、作業する際の危険性や注意点について、取材しました。
屋根から大量に落ちる雪。時として、その雪は重大事故を引き起こします。
山形県内でいま、頻発している雪害事故。除雪作業に潜む危険性と安全に作業を進めるポイントに迫ります。
先週、この冬一番の寒波に見舞われた県内。
雪かき「きのうよりひどい。これだけ連日積もっているのは久しぶりです」「屋根から雪下ろししないと家屋がもたないって言っているから。そうなると災害ですもんね」
大雪に伴い相次いだのが除雪作業中の事故です。最上町で8日、自宅で除雪作業をしていた60代の男性が屋根から落ちてきた雪に巻き込まれ、その後死亡しました。
飯豊町でも屋根から落ちてきた雪に巻き込まれた男性が死亡。今シーズンに入り、県内では除雪作業中の事故で3人が死亡しています。
屋根からの落雪の危険性を示す実験映像です。成人男性が乗ることのできる頑丈な木箱がいとも簡単に雪につぶされてしまいました。
雪氷防災研究センター・根本征樹博士「この大きさの雪の重さが約30キロ。これは重めの雪ではあるが、日常の山形県内の屋根の状況でも十分に起こりえる。それでも頑丈な木箱を破壊するくらいの大きな衝撃力を与える」
さらに、気温が上がると、屋根の雪は滑りやすくなる上、硬くなるといいます。
雪氷防災研究センター・根本征樹博士「冬の真っ只中でも、気温が高くて雨が降ったりすると、雪の塊が水も混ざった状態に。そうすると、同じ大きさでも密度はかなり大きくなり、落雪時の危険性は高まる」
県によりますと、この冬に発生した雪害事故は12日午前10時の時点で76件。中でも、除雪中に落雪に巻き込まれたり屋根から転落したりする事故が合わせて53件で、全体の7割を占めます。落雪や転落による事故の件数は去年(2024年)の同じ時期に比べ、6倍近くに増加しています。
雪氷防災研究センター・根本征樹博士「1月まではかなり雪が少ない状況が続いたが、2月に入って急激に雪が増えた。落雪などに関する危険性が極めて高くなっている」
番組では「除雪の際、安全装備を使っているか」YBCアプリのアンケートを実施しました。1008人から寄せられた回答の結果がこちらです。「使っている」が186人、「使っていない」が822人とおよそ8割が「使っていない」と回答しました。使っていないと答えた理由として「周りの家を見ても命綱やヘルメットを使用している人はいない」「命綱の話題にはなるがロープなどをどこに設置すればいいかわからない」「付けたほうがいいのは分かっているが仕事がやりづらいし面倒」。などの声が寄せられました。
安全な雪下ろしや除雪作業の仕方を伝える活動を行っている大石田町の二藤部久三さん(69)は、まずは「命綱」と呼ばれるものがどのような道具なのかしっかり把握することが大事だと話します。
克雪体制づくりアドバイザー・二藤部久三さん「ロープと安全帯、それからアンカー。この3つが揃ってはじめて”命綱”ということ」「このアンカーはホームセンターから購入して、1000円以下です。」
ロープを取り付ける「アンカー」という部分が屋根に設置されていないために命綱を付けることができないという声が番組のアンケートでも多く寄せられました。
アンカーは一般的な住宅には備わっていないもので、設置工事が必要です。
市町村によっては設置工事が助成金の対象になる場合もあるといい、雪が降る前に工事を終えておくのがよいということです。
命綱が使えない場合は、自身の安全を守るために「屋根に上らない」ことや「安全に作業できる人にお願いする」ことなどが大切です。
克雪体制づくりアドバイザー・二藤部久三さん(これはどういう状況?)「ここは空き家なんですけど、落ちてきた雪が隣の家をふさごうとしている」
今シーズン最強クラスの寒波による大雪によって県内はいま、多くの人が除雪作業に追われています。一方、そうした中で安全に作業するには、除雪をする時間帯や天候がポイントになるといいます。
克雪体制づくりアドバイザー・二藤部久三さん「ことしは屋根から真下に落ちている。屋根の上に雪が残っている状態では、くれぐれも注意 しながら軒下除雪をする必要がある」「やるとすれば午前中、朝の寒い時間帯がベスト。曇りの天気が一番いい。冬でも晴天の日は雪解けが進みます。ですから、落雪はいつ起きてもおかしくないので、その際はやめるのが大事」
今後雪解けが進んでいく中で除雪中の事故の危険性は高まっていきます。事故を防ぐためには自分自身で身を守る対策や意識が求められています。