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【最新】“負の遺産”大阪ベイエリアの大阪府咲洲庁舎の賃料未払いホテル 経営会社の社長ら2人逮捕 大阪・関西万博にも影響か

2024年8月25日 9:00
【最新】“負の遺産”大阪ベイエリアの大阪府咲洲庁舎の賃料未払いホテル 経営会社の社長ら2人逮捕 大阪・関西万博にも影響か

 大阪・南港の大阪府咲洲庁舎に入る「さきしまコスモタワーホテル」が約5年前から賃料を滞納しながら営業している問題で、ホテル経営会社の社長ら2人が、差し押さえを免れるために資産を隠したとして逮捕されました。
 
 元々ベイエリアの「負の遺産」だった咲洲庁舎の「救世主」とも呼ばれたホテルですが、10月末には退去する予定で、ホテル需要が高まる大阪・関西万博にも影響を与えそうです。

■約900万円の“資産隠し”か

 強制執行妨害目的財産損壊の疑いで逮捕されたのは、同ホテルの経営会社社長の誉田喜博容疑者(62)と運営会社社長の小寺孝明容疑者(64)の2人です。

 警察によりますと、2人は去年8月から9月、賃料を滞納していたことによる差し押さえを免れるために、ホテルの宿泊代金約900万円を自身が管理する別会社の口座に隠した疑いがもたれています。

 2人は別会社の口座の名義をホテルと同じ名前に変更し、旅行予約サイトの運営会社に対して、宿泊代金をこの口座に振り込むよう依頼していたということです。振込先を変えることを不審に思われないようにする偽装工作とみられています。

 ホテルは約5年前から賃料を滞納していて、大阪府は支払いなどを求め提訴。ことし6月、ホテル側に約26億円の支払いと退去を命じる大阪高裁の判決が確定していました。警察は2人の認否を明らかにしていません。

 ベイエリアにひと際高くそびえたつ、地上55階建ての咲洲庁舎へのホテル入居には紆余曲折がありました。元々の名前はワールドトレードセンタービル(WTC)で、1995年に大阪市の第三セクターが約1200億円をかけて建設しましたが、バブル崩壊などのあおりを受け経営破綻。

 その後、当時の橋下徹知事の肝いり事業として、府庁の全面移転を目指し、2010年に大阪府が約85億円で購入しましたが、2011年の東日本大震災で長周期地震動による大きな被害が出て、耐震性の問題が浮上。結果、全面移転は頓挫し、府庁の一部の部署だけが入居、テナントの空室が目立つ、ベイエリアの「負の遺産」とされてきました。

 そうした中で「救世主」として、7階から17階部分に入居し、2019年1月に開業したのが「さきしまコスモタワーホテル」でした。

 豊臣秀吉の黄金の茶室をイメージしたロビーに、お好み焼きをイメージした客室など“大阪感”満載のホテルで、それまで64パーセントだったビル全体の稼働率は、84パーセントまで改善。府には年間約4億2000万円の賃料収入が入る見込みで、「負の遺産」が一転、「プラスの資産」になると期待されていました。大阪・関西万博が開かれる夢洲は、目と鼻の先で、多くの宿泊客も見込まれていました。

■約40億円の賃料等滞納…「エレベーター騒音問題」訴え

 ところがホテル側は開業から1年と経たずに、月額約3500万円の賃料のほか、水道や光熱費も滞納し始めます。賃料を滞納する理由について、ホテル側が主張したのは「騒音」でした。 

 ホテルの担当者(当時)
 「エレベーターの音は寝られる環境ではありませんでした」

 ホテル側は、エレベーターの騒音について、大阪府から契約時には知らされておらず、約4億円をかけて防音改修工事を実施した影響で経営状況が悪化したと主張。また、騒音を客室に適したレベルにするには計約36億円の費用が必要として、賃料などと相殺するよう求めていました。

 ただ、この点について、ある捜査関係者は、「2020年からの新型コロナウイルスの影響で経営が急激に悪化し、なんとか居座るための方便だったんだろう」と話します。

 一方、大阪府は「ホテルとして必要な備えなので、ホテルで改修すべき」と一蹴。議論は泥沼化して膠着状態になり、その後も賃料は滞納され続けたことから、2020年に大阪府は賃貸借契約を解除したうえで、巨額の賃料などの支払いと退去を求めて大阪地裁に提訴しました。

 府によりますと、滞納額は遅延損害金も含めて2024年7月中旬時点で、約40億円にのぼるということです。

■10月末にはホテル退去…今後は未定

 大阪地裁は2023年、「ホテル側が自ら望む用途で営業するための改修工事の費用を自ら負担することが想定されていて、大阪府が改修工事をする義務があったとは認められず、告知義務があったとはいえない」として、府の請求通り、支払いと退去を命じる判決を言い渡しました。その後、大阪高裁も一審を支持して、約26億円の支払いと退去を命じる判決が確定していました。

 大阪府は2024年8月、ホテル側に10月末までの退去を通告し、ホテル側も応じる意向を示しています。2025年12月までに約11万人の宿泊予約があるといい、府は代わりの宿泊施設の確保や従業員の再就職などを支援するとしています。 また、ホテルが退去した後の空きフロアの活用についてはまだ決まっておらず、近く市場調査を実施する方針です。

 大阪府の吉村洋文知事は23日、「13億円はほぼ回収可能。(今後は)できるだけ適切な事業者が入るよう審査したい」と話しました。

 2025年4月には大阪・関西万博が始まり、ホテル需要も高まるなかでのホテル退去で、観光客への影響は避けられません。「新しい救世主」はすぐに出てくるのでしょうか。

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