「外国からの注文が急増で生産が追いつかない」世界で『抹茶』が大ブームも…価格・ブランド保護が課題
京都府宇治市が一大産地の「抹茶」が、いま海外で大ブームになっています。しかし、その裏で頭を悩ませているのがお茶業界。一体、何が起きているのでしょうか。
京都にある宇治茶の老舗。
「お待たせいたしました、いらっしゃいませ」
開店を待ちわびていた外国人観光客が一斉に店内へ…。
お目当ては、この「抹茶」。次々と購入していきます。
サンフランシスコから
「上質な抹茶を探していて、ここが一番良い場所だと聞きました。4つから5つ買いました」
オーストラリアから
「ここの抹茶は、ソーシャルメディアで有名で 試しに来ました。心が安らぐし、美味しいなんてとても素敵です」
連日、欧米からの観光客が多く訪れ、30グラムで1万2千円する高級抹茶でさえ品切れ状態に…。
中村藤吉本店 中村省悟 社長
「特に高価格帯のもの、非常に品質の良いものはどれだ?とよく聞かれます。外国人のお客様からの注文や購買が急増し始めて、生産が追いつかなくなりました」
緑茶の輸出額は2023年、約292億円と過去最高を記録。その70%が、抹茶などの粉末状のお茶です。
主に海外への輸出を専門とする店では、さらなる需要があるといいます。
茶匠六兵衛 乃田真理子さん
「ガラッと状況が変わったのは、中東諸国やインドも含めてすごく人気。いま日本で一番ブームになっているのは抹茶じゃないかと思うぐらい、抹茶、抹茶と言われます」
抹茶ブームは中東諸国にも拡大。なぜ、そこまで人気が広がっているのでしょうか。
茶匠六兵衛 乃田真理子さん
「日本人は長寿国というイメージが世界の方にはある。日本人の女性は特に若くて美しいと、肌とか。毎日飲んでいるお茶に秘密があるのではないかと聞かれました」
抹茶に多く含まれるポリフェノールは老化を防止する効果があり、海外ではスーパーフードとして注目されているというのです。
空前の抹茶ブーム!しかし、業界ならではのある課題が…。
中村藤吉本店 中村省悟 社長
「日本の茶業っていうものとか全体、なかなか経済的に食べていくことが難しい」
人手不足が原因で、茶農家は茶畑を広げることができず、需要があるからといって生産量を急激に増やすことはできません。
そして、抹茶は碾(てん)茶と呼ばれる原料を茶臼で挽いて粉状にしていきますが、1時間にできるのは、たったの40グラム程度なのです。
さらに、抹茶人気が理由で、逆に納品数が減少してしまうことも。茶の生産と加工を行う会社では…。
播磨園製茶 播磨幸博 社長
「石臼の委託の工場がひっ迫しまして、需要に対しての供給ができない」
石臼業者が全ての依頼を受けることができなくなったため、自社工場で石臼を購入することにしました。ところが…。
播磨園製茶 播磨幸博 社長
「(石臼の)納品自体は半年から1年くらいです」
こうした状況を受け、専門店の多くが販売制限まで行う事態に。
さらに抹茶の希少さに目を付け、海外の通販サイトでは定価の約3倍以上の値段で転売されています。
波紋が広がる海外の抹茶ブーム。しかし、専門家はお茶業界にとって打開策になると指摘します。
龍谷大学経営学部 眞鍋邦大 准教授
「逆に言うと、高く買ってくれる人がいるということ自体は、すごく需要が強いということだと思う」
チャンスと捉えて、価格の見直しを図るべきだといいます。
龍谷大学経営学部 眞鍋邦大 准教授
「利益が還元されなくて、担い手が不足しているというのは、現状大きな問題としてある。今よりも高く売れる可能性があるという将来が描けるようになれば、後継者も お茶にもう1回取り組んでみようとか、未来があるものだと思って取り組めると思う」
世界的ブームをただのブームに終わらせないために、お茶業界には革新のチャンスが訪れているのかもしれません。
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今まさに抹茶ブームで、きっかけは「抹茶ラテ」だそうです。
抹茶を含む緑茶の輸出額は過去最高、約292億円だということで海外で大人気なんですが、一方でいろんな課題もあります。やはり「価格設定」と「ブランド保護」をどうしていくのかという問題があるようです。
海外で大人気なものの、日本国内ではやっぱり値上げしないでほしいという声があります。ただそうなってしまうと、なかなか利益につながらない、そうなるとお茶の農家さんが廃業してしまうということにもつながってしまうので、専門家の方は適正な価格設定で生産者の方に利益が還元されるべきではないかとおっしゃっています。
さらにこの「ブランド保護」という観点です。
過去にもシャインマスカットが人気で、種苗などが海外に流出しました。そして品質の低いものが、東南アジアなどで中国・韓国産が流通してしまい、「シャインマスカットって、そんなにおいしいわけじゃないんじゃない」とイメージが低下してしまい、日本のシャインマスカット自体もイメージが下がってしまった、ということが過去にもあったそうなんです。
福岡県の「あまおう」というイチゴでは、県内で生産を行う事業者のみ苗を販売するなどの対策を行っています。
国を挙げてブランドの価値を守るべきだと専門家もおっしゃっています。
生産者さんも守りながら、いかに日本のブランドを守っていくのかということが重要だと感じます