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【ナゼ】「きょうは何億稼ごうか」札束にフェラーリ…「年収1千万のレールに乗れる」実行役を募集か 逮捕された“トクリュウ”リーダーが狙った古典的犯罪「点検商法」の手口と増加のワケ

2025年3月2日 9:00
【ナゼ】「きょうは何億稼ごうか」札束にフェラーリ…「年収1千万のレールに乗れる」実行役を募集か 逮捕された“トクリュウ”リーダーが狙った古典的犯罪「点検商法」の手口と増加のワケ
斎藤容疑者のものとみられるSNSより

 実行役をSNSなどで集めて犯罪を繰り返す匿名・流動型犯罪グループ「トクリュウ」のリーダーとみられる男が逮捕された事件。このグループが狙ったのは、一戸建ての住宅を一軒一軒回って、必要以上に高額な工事を契約させる古典的な犯罪「点検商法」だった。犯罪グループが実行役を集めるために行った手口と、被害が増え続ける要因とは―。

■自称「挑戦と継続のオトコ」SNSで豪華な暮らしぶりのウラで…

 斎藤大器容疑者(33)「さあきょうは何億稼ごうか。同じ日は二度と来ない。良い一日は良い朝からだ。挑戦と継続の漢(おとこ)、牛飼のモーニングルーティーン」

 自らを「挑戦と継続の漢(おとこ)」と呼び、手にした札束を眺め、大阪の街で高級外車・フェラーリを乗り回す動画をアップするなど、豪華な暮らしぶりをSNSで発信する男。

 兵庫県芦屋市に住む斎藤大器容疑者(33)は、リフォーム会社の実質的オーナーで、期間内であれば契約を解除できる「クーリングオフ制度」を説明しなかったとして、特定商取引法違反の疑いで2月18日に逮捕された。

 警察によると、斎藤容疑者がオーナーを務める「新日立建託」が“点検”と称して家を訪問。必要以上に高額な工事を契約させる「点検商法」を繰り返していたとみている。

 さらに、斎藤容疑者は実行役をSNSなどで集めて犯罪を繰り返す匿名・流動型犯罪グループ「トクリュウ」のリーダーとみられている。

■「3か月もあれば年収1千万のレールに乗れる」実行役を募集

 斎藤容疑者は自身のYouTubeでこう語っていたー。

 斎藤大器容疑者
「教育システムしっかりしているので、3か月もあれば年収1千万のレールに乗れる。本当にしっかりと気持ちをもってきてもらえれば必ず稼がせる、自負も経験もある」

 実行役を募るために、斎藤容疑者はSNSで“言葉巧み”に発信していた。一見すると「接客業」や「テレアポ」を募集する一般的な求人だが、「年収/1億円可能」「人生本気で変わります」といった誘い文句が謳われている。

■押収された“営業台本” 能登地震で「煽りの念押し」

 関係先から押収されたノートにびっしりと書かれていたのは、点検商法の『営業台本』だった。

「こんにちは!お忙しいところすみません。この間、風が強い日に屋根の鉄板が外れかけているんですけど、気付いていないですか?水が入ると雨漏りの原因になるんですよ」

「最低でも20~30万はかかっちゃいますね。何もなければ費用はいただきません」

 さらに、台本には「煽りの念押し」というタイトルで、能登地震の話題で不安にさせ契約に持ち込む具体的な“セリフ”が準備されていた。

「能登半島地震があったと思うんですけど、倒壊したほとんどの家が、屋根のバランスが悪いことが原因で、積み木のように崩れてしまったんですよ。必ず直した方がいいです」

 警察によると、グループ内では「うまくやるやつは法律ギリギリのことをやる」などといった言葉で、実行役に対して発破をかけていたという。

■「屋根は素人では上がれない」巧妙な手口…無料のシロアリ点検で“腐った木と実物”

 取材班は同様の「点検商法」の手口で修理を持ちかけられたことがある男性(74)に話を聞いた。狙われたのは築およそ50年の一戸建て住宅だった。

 男性によると、ある日突然、見知らぬ業者が家を訪れ、屋根の点検を持ち掛けてきたという。

 業者
「お宅の屋根、ちょっとズレていますよ」

 男性
「確かにズレているね」

 業者
「近くで工事をやっているんですぐに直しますよ」

 男性は当時のことについて、「屋根は素人では上がれない。確かにそうだし、ウソを言っているわけではないので、そこでちょっと心が動いた」と振り返る。

「シロアリの点検をしたいということで、『無料』だって。これはプロに見てもらおうかと。そうしたら、『こういうのが出て気ました』と腐った木を見せて、そこに白アリがついている」

 業者を名乗る男が床下を点検し戻ってくると「白アリがいた」と実物を見せてきたという。

 男性は事前に床下を確認していたため、業者のウソに気づき、被害を免れた。

■「点検商法」増加のワケは…専門家「昭和の時代から続く犯行形態も今が“もうけどころ”」

「点検商法」は古典的な手口だが、トラブルは近年、全国的に増加している。

 国民生活センターによると、2024年度の相談件数は2020年度の2倍以上にあたる1万4388件に上る。そのうち、約2割が屋根の工事に関する相談だ。

 国民生活センター相談情報部の藤田樹さんは、「屋根工事は住んでいる人が自分では見えないことで、突然訪問してきた業者の言うことを信じてしまって契約してしまう」と指摘する。

 狙われやすいのは、『居住者が高齢者』『在宅率が高いこと』『築年数が経っている』場合などで、業者からの勧誘を受けやすい状況にあるという。

 なぜ今「点検商法」が再び増えているのか―。

 元警察官僚で犯罪に詳しい京都産業大学法学部の岡部正勝教授は、「手を変え、品を変え、昔からずっと続いている犯行形態。昭和の時代に作った建物やインフラがそろそろ傷んできているので、ここが“もうけどころ”と犯罪グループが目をつけたのかなという気がする」と語った。

 斎藤容疑者の会社では、わずか10か月間で、被害者から2億8000万円の振り込みが確認された。警察は、被害がさらに広がっている可能性があるとみて捜査している。

最終更新日:2025年3月2日 9:00
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