×

【ナゼ?】スマホやキャッシュカードを持っていたのに“身元不明”…飲食店で倒れ急死した男性、法的には“生きたまま”で税金など未納に?専門家指摘「これからの多死社会、同様のことが頻繁に起こる」

2024年11月1日 16:00
【ナゼ?】スマホやキャッシュカードを持っていたのに“身元不明”…飲食店で倒れ急死した男性、法的には“生きたまま”で税金など未納に?専門家指摘「これからの多死社会、同様のことが頻繁に起こる」
『行旅死亡人』ミステリーの真相とは―

 旅の途中、不慮の死に見舞われた人『行旅死亡人(こうりょしぼうにん)』―いわゆる“行き倒れ”のことで、明治時代に生まれた法律用語です。そして、今の時代に起きているのが、“令和版の行旅死亡人”ともいえる不可思議なケース。死亡したはずなのに、法律的には生きている―そんなあり得ない状況に陥った時、周囲にまで影響を及ぼす“困りごと”とは?少子高齢国家・日本で、もはや他人事ではない『行旅死亡人』ミステリー。その真相を解明します。

■飲食店で倒れ急死…スマホやキャッシュカード所持も、なぜか『行旅死亡人』に

 2024年1月9日に発行された『官報』によると、2023年6月11日、46歳(推定)の男性が京都市内のファストフード店で倒れ、東山区の病院に救急搬送されました。

 救急隊と受け入れ病院の間で、身元の確認が行われました。男性の所持品には、現金5万1893円の入った財布が一つ。他には、スマートフォン・カギ4本・キャッシュカード1枚・病院の診察券2枚などがあったといいます。

 男性は、入院から8日後の2023年6月19日、脳出血で死去。不幸なケースですが、これはいわば“誰にでも起こり得ること”です。

 しかし―。

(『読売テレビ』西山耕平ディレクター/京都・嵐山)
「2023年6月、こちらの家に住んでいたとみられる40代の男性が京都市内で倒れ、亡くなりました。しかし、身元が確認できないことから、『行旅死亡人』として扱われたということです」

■『行旅死亡人』は一年に約800人⁉“身元不明”と判断されたら…

 『行旅死亡人』とは、名前・住所が不明で、引き取り手がない遺体のことです。総務省の調査(2023年3月公表)によると、2018年4月~2021年10月までに2852件(年平均・約800件)あったといいます。

 『官報』によると、亡くなった男性は身元不明のため、『行旅死亡人』として東山区役所が火葬し、市営の墓園に埋葬したということです。

 しかし、男性の所持品にはスマホ1台・鍵4本・キャッシュカード1枚・診察券2枚・財布1個・現金5万1893円などがありました。また、『官報』には、男性の住所・氏名(推定)・年齢46歳(推定)まで記されていました。

 名前・住所が判明していても身元不明のままである理由について、京都市東山区役所の職員は「顔写真入りの身分証を持っておらず、身元の確定ができなかった。親族も調べたが、確定には至らなかった」と話しています。

 また、司法書士・太田垣章子氏によると、「原則、身元は親族に確認してもらうしかない。戸籍を追う作業は大変な労力がかかり、親族が見つかっても、関与を断られる可能性も。警察も、事件性がなければ積極的に調べないのでは」ということです。

■法的には“生きたまま”…専門家指摘「身元不明にならないためにできること」

 男性の自宅とされる京都・嵐山にある一軒家は、壊れた自転車が放置され、植木が枯れた状態になっています。近隣住民によると、約30年前に家族で引っ越してきましたが、ほどなくして男性の姉が家を出て、約20年前に両親が他界、その後は一人暮らしだったということです。

 近隣住民は、「警察などと話して、チラシ以外の郵便物は預かることになった」「通知が来ていたので、電気代・固定資産税が未納になっていると思う」「免許証の更新はがきもあった」と話していました。

 司法書士・太田垣氏によると、残された家については「住宅ローンが残っている場合、ローンが滞納されれば半年ほどで競売にかけられる。ローンが残っていない場合、家主の死亡が確認されなければ、そのままになる」ということです。

 京都市住宅政策課の空き家対策担当者は、「現時点で損傷などがなければ、空き家として対応できない。今後、傷みが出てきた場合、親族を調べるなどして空き家状態の解決に向けた対策を講じる」としています。

 身元不明にならないためにできることとして、司法書士・太田垣氏は「自宅のわかりやすい場所に、緊急連絡先を明示しておく。財布などに名前や緊急連絡先のメモを入れておく」としています。

 また、「国の明確なルールがないことが問題。これからの多死社会、国も個人も備えておかないと、同様のことが頻繁に起こるのでは」と指摘しています。

(「情報ライブ ミヤネ屋」2024年10月18日放送)

最終更新日:2024年11月1日 16:00
    読売テレビのニュース