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【独自取材】ストレス発散・“お客様は神様”的な発想…そんなカスハラには「電話を切っていい」⁉言葉の暴力から社員を守るため、大企業が下した“強気の決断”

2024年10月29日 16:00
【独自取材】ストレス発散・“お客様は神様”的な発想…そんなカスハラには「電話を切っていい」⁉言葉の暴力から社員を守るため、大企業が下した“強気の決断”
首都高が策定した『切電マニュアル』とは―

 一向に減らない言葉の暴力『カスタマーハラスメント(カスハラ)』。電話対応のオペレーターたちは日々対応に苦しみ、心を痛めています。そんな中、『首都高速道路株式会社』が策定したのは、威圧的な口調などがあった時は電話を切ってもいいという『切電(きりでん)マニュアル』。大企業が下した“強気の決断”―その背景とは?

■「場合によっては、こちらから切ってもいい」首都高が策定した切電マニュアル、その背景とは?

 『首都高速道路株式会社・お客さまセンター』は、24時間365日フル稼働。一日約1700件・年間約63万件もの問い合わせや苦情に対応しています。

 高度経済成長の真っ只中だった1964年、戦後からの復興目覚ましい東京を舞台に、アジアで初めて開かれるオリンピック―この国家的大事業に合わせて、日本に2つの“大動脈”が誕生しました。それが、東京-大阪を結ぶ夢の超特急『東海道新幹線』と、東京の空の玄関口・羽田空港とオリンピック会場を結ぶ『首都高速1号線』です。

 そんな首都高は、いまや全長327.2km、一日の利用台数は約100万台。文字通り、日本の物流・観光・日常の移動を支えています。

 それゆえに、モンスターカスタマーからのクレーム電話も桁違いに多く、深刻な言葉の暴力によって、心に傷を負うオペレーターたち…。

 現状を見た首都高は、会社として、悪質なクレームへの対応マニュアルを策定しました。それが、2023年5月から導入された『切電(きりでん)マニュアル』です。「30分以上同じ内容の主張、要求内容が不当、威圧的な口調・罵声があった場合は、理由を伝えて電話を切る」ことが、明記されています。

 首都高速道路株式会社・CS・サステナビリティ推進部の恩田和典課長は、「今まで電話はこちらから切らなかったが、クレーム・罵声を浴びせられるなどがあり、社員を守るために導入した」「場合によっては、こちらから切ってもいいよという運用です」と話しています。

■「お前たちは何の役にも立たねえ!」「枕詞入れるな、教えてあげるから」「怒鳴ってねーだろうがよー!」実際にあった仰天電話と“切電”対応

 実際の音声をもとに、これまで首都高お客さまセンターが電話を切った事例を3件紹介します。

 首都高には『ジャンクション』と呼ばれる複雑な合流地点が多く、カーブや高低差もあるため、事故も多発します。車両事故の処理に時間がかかり、渋滞していることに対してクレームの電話がかかってきましたが…。

(オペレーター)
「何時に終わるというお約束・ご案内は、こちらではできかねます」

-(利用者)
-「お前たちは何の役にも立たねえ!」

(オペレーター)
「申し訳ありません。今の段階では…」

-(利用者)
-「バーカ。大丈夫か。運転してんだよ、おい」

(オペレーター)
「お客様…」

-(利用者)
-「毎度じゃねえか。本当によう、いつもいつもよう」

(オペレーター)
「お客様、そのように暴言を吐かれるようであれば、こちらから、これ以上のご案内はできかねます。恐れ入りますが、お電話切らせていただきます」

-(利用者)
-「切るの⁉」

 ツー、ツー、ツー…。

 今度は、オペレーターの発言が癇に障ったのか、いきなり上から目線の“お説教”が始まりました。

-(利用者)
-「大丈夫か?バカ野郎。聞こえているから言ってんだから。“聞こえていれば”って、枕詞(まくらことば)入れるんじゃねえ。大丈夫か、お前、失礼なこと5回以上繰り返しているんだぞ。わかっているか?わかっているか、お前?あのな、あのな、謝るのに枕詞入れるな。お前の勝手な枕詞入れるな。教えてあげるから。『わかりました』だ、それは」

(オペレーター)
「そうですね、わかりました」

-(利用者)
-「明るく言うな、怒ってんだから。いちいち教えないと、わかんないか?小学生でもできることだぞ、教えれば」

(オペレーター)
「申し訳ございません」

 ツー、ツー、ツー…。

 さらに―。

 目的地へのルートを間違って、一旦高速を降りて別のインターチェンジから再び高速に乗りなおすと、当然、改めて高速代が発生します。しかし、こんな常識に納得いかない人が存在しました。

-(利用者)
-「金取ってんだったら、そういうの全部ちゃんとやれよ!」

(オペレーター)
「怒鳴られてしまいますと、落ち着いてお話ができなくなってしまいますので」

-(利用者)
-「怒鳴ってねーだろうがよー!金払ってる以上は、そこらへんの管理・監督ちゃんとやれって言ってんだろ!ちゃんとやれって言ってんだよ!」

(オペレーター)
「今、お客様が…」

-(利用者)
-「何のために二重料金取ってんだよ⁉」

(オペレーター)
「怒鳴られてしまうのであれば、こちらでご案内できることはございませんので、こちらから失礼させていただきます」

-(利用者)
-「怒鳴ってねえって言ってんだろ!?」

(オペレーター)
「失礼します」

 ツー、ツー、ツー…。

■「より丁寧な対応をしようと前向きになれた」現場で対応するオペレーターに起きた劇的変化

 サービス利用者がカスハラする理由について、犯罪心理学者・出口保行氏は、「基本的に相手が悪いという思い込みがあり、自身を正当化しているので、怒りをセーブしようとしない。また、普段抱えているストレスを発散しようとし、相手がひるむほどエスカレートする。“お客様は神様”的な発想がある」と分析しています。

 マニュアルが導入された2023年5月~2024年9月末までに、実際に電話を切ったケースは26件。お客さまセンター統括は、「恐怖を感じながらも、最後まで丁寧に対応いたしますが、電話が終わった後も精神的なストレスを感じたり、『電話が鳴るたびに不安に感じてしまう』という声も上がっている」と話していましたが、マニュアル導入後の変化として、「『安心した』『恐怖心がなくなり、より丁寧な対応をしようと前向きになれた』などの声が上がっている」ということです。

(「情報ライブ ミヤネ屋」2024年10月18日放送)

最終更新日:2024年10月29日 16:00
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