【専門家警鐘】「次のステージに入っている」千葉県東方沖で相次ぐ地震 大地震に繋がるリスクも…「バーンといってしまうと巨大地震に」メカニズムと今後の可能性を解説
2月27日から、千葉県付近を震源とする地震が1週間で30回以上観測されました。地震調査委員会は今後も“震度5弱”程度の強い揺れに注意するよう呼びかけています。首都直下型地震など巨大地震への影響はあるのでしょうか?地震学者の京都大学・梅田康弘名誉教授の解説です。
千葉県付近で相次ぐ地震、原因は“ゆっくりすべり” 「全体が動いてしまうと巨大地震に」
2月27日から、千葉県付近、特に東方沖で地震が相次いで発生しています。2月29日~3月2日まで、3日連続で震度4の地震を観測していて、震度1以上が32回となっています。地震調査委員会は、「過去の地震活動を踏まえると引き続き震度5弱程度の強い揺れが観測される可能性がある」としています。
日本列島は、いくつものプレートが押し合っている状況のところにあるので、いつどこで地震が起こってもおかしくない状態なのですが、千葉県東方沖では、3~6年程度の頻度で、“ゆっくりすべり”を伴う地震を観測しています。今回の“ゆっくりすべり”とはどういうものかというと、「通常時」は、海のプレートが沈み込むことで、陸のプレートも引きずり込まれて常に“ひずみ”が蓄積されていきます。
この陸側のプレートの“ひずみ”が限界に達して一気に跳ね上がると、大きな揺れが起こり、津波が発生するおそれもあります。今回千葉県東方沖で起こっている“ゆっくりすべり”は、このプレートの“ひずみ”が限界に達しているものの、一気に跳ね上がるのではなくゆっくり跳ね上がる現象です。この場合、揺れは感じず、津波も発生しないのが特徴です。
Q.ゆっくり跳ね上がるところでは何が起こっているのでしょうか?
(京都大学・梅田康弘名誉教授)
「ゆっくり動くというのは、陸側のプレート全部が動くのではなく、その中のごく一部がゆっくり動いているのです。全体が動いてしまうと巨大地震になってしまいます。ほんのわずかな部分がずるずるっと滑っているイメージです」
Q.今回ゆっくりすべりが起こったのは、同じ場所なのでしょうか?別の場所なのでしょうか?
(梅田名誉教授)
「ほとんど同じ場所です。そういう性格のある場所なんです。固着しているところが大半なんですが、ごく一部そういう弱いところがあって、そこが繰り返しゆっくりずるずるすべるんです」
Q.なぜ弱い部分があるのですか?
(梅田名誉教授)
「流体というものがあって、流体が上がってくるとそれが潤滑油のようになって滑りやすくなるんです。それが溜まってくると圧力が上がって、ずるずるずるっと滑るというメカニズムです。基本的には流体が入ると岩石が滑りやすくなるので、『横ずれ』でも『境界』でも『縦ずれ』でも同じように滑ります」
Q.千葉県東方沖というのは、もともとそういう特徴のあるところなのか?たまたまゆっくり滑ったのか?どちらなのですか?
(梅田名誉教授)
「そういう性格のある場所です。過去にも6回くらい2年ないし6年位で同じところで起こっています。これ自体は“ゆっくりすべり”で被害もないのですが、これが起こると周りにストレスを溜めてしまうのです。それが誘発地震を起こしてしまって、今回の地震活動になるんです」
“ゆっくりすべり”がきっかけで大地震が起こる可能性も…「周囲にストレスが溜まってしまう」
千葉県は2016年、3回にわたる地震被害を調査し最新の科学的知見を踏まえ、地震被害想定調査を公表しました。房総半島の東方沖、深さ25キロを震源とするマグニチュード8.2の地震を想定した場合、主な被害は津波によるもので、最大の波の高さは8.8メートルの高さになり、死者数は最大5600人、建物被害も全壊が約2900棟などとなっています。
Q.ゆっくりすべっていて、どこかで周りを巻き込んで大きく動いて、大地震が起こるリスクはないのですか?
(梅田名誉教授)
「それがあるんです。非常に恐ろしいんですよ。ゆっくりすべっているとそこのひずみは解消するのですが、周りにストレスが溜まってしまいます。今回はマグニチュード5ぐらいですが、バーンといってしまうと巨大地震になってしまいます」
Q.千葉の地震はまだ警戒が必要ですか?
(梅田名誉教授)
「過去6回の例をみますと、”ゆっくりすべり“そのものは2~3日で終わっていますが、それに誘発される地震は、数週間以上続く可能性があります」
Q.今回の千葉東方沖地震は、首都直下地震を誘発するものでしょうか?
(梅田名誉教授)
「ちょっと難しいんですが、『千葉県東方沖』は海なので、首都直下からは外れています。ですが、3月2日に千葉県南東部のちょっと離れたところの陸地でマグニチュード5.0地震が起きました。これは直下地震に入るんです。地震を誘発したのが“ゆっくりすべり”の周辺だけに止まっていれば良いのですが、離れたところに誘発し始めると直下型地震に繋がる恐れがあります」
Q.今回の「千葉県東方沖地震」と「関東大震災」は同じ「相模トラフ」で起きていると思って良いのですか?
(梅田名誉教授)
「そうです。相模トラフのほんの一部です。しかし、関東大震災は今から100年前に起こっていますので、あんな巨大地震は近々では起こらないだろうと我々はみています」
Q.相模トラフが動いたとして、東京都内にある活断層が連動して動くということはあるのでしょうか?
(梅田名誉教授)
「連動するかどうか、ちょっとそれは分かりません。私はないと思いますが、何とも言えません」
「次のステージに入っています」日本各地で起こっている地震 “南海トラフ地震”も「だんだん近づいてきている」
2月26日、愛媛で最大震度4の地震。また3月2日、宮崎で最大震度4の地震がありました。
Q.愛媛や宮崎の地震は南海トラフ地震につながるのでしょうか?
(梅田名誉教授)
「九州と四国の間の豊後水道でも“ゆっくりすべり”がずっと起こっています。そういうものが起こって、南海トラフ地震もだんだん近づいています。愛媛の地震も宮崎の地震もそれに関連して起こっているんです」
Q.今日本は地震の活動期なんですか?
(梅田名誉教授)
「そうです。活動期です。南海トラフ地震が起こって70年ほど過ぎていますので、次のステージに入っています。ですから西日本でも地震活動が活発になっています」
(「情報ライブミヤネ屋」2024年3月4日放送)