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「再び検事として戻れるように」署名提出へ 元検事正が女性検事に性的暴行を加えた罪に問われる裁判 先行き不透明でも広がり見せる"支援の輪"

2025年1月19日 9:00
「再び検事として戻れるように」署名提出へ 元検事正が女性検事に性的暴行を加えた罪に問われる裁判 先行き不透明でも広がり見せる"支援の輪"

 かつて、大阪地検のトップ「検事正」を務めた被告が、部下の女性検事に性的暴行を加えた罪に問われている裁判。去年の暮れ、元検事正は女性検事に対する謝罪表明から一転して、無罪を主張する方針を示した。次回の裁判期日は未定のまま、先行きは不透明な状況が続く。

 この裁判をめぐり、女性検事は被害申告後、検察組織内で職員から誹謗中傷を受けたことを明かした。こうした事態を重く見た女性検事の支援者らは、署名活動を実施。元検事正や職員に対する厳正な捜査と真相解明を求めて、検察庁などに近く署名を提出することを明らかにした。

 支援者は読売テレビの取材に対し「数多く届いている支援の声を形にすることで、女性検事が検事として再び職場に戻れるようにしたい」と話す。裁判は先行き不透明ながら、女性検事への支援の輪は広がりを見せている。

■“関西検察のエース”初公判での謝罪から一転無罪主張「同意があると思っていた」 “誹謗中傷”の訴えも

 法曹界で“関西検察のエース”とも呼ばれた大阪地検元検事正の北川健太郎被告(65)。検事正在任中だった2018年9月、大阪市内にある官舎で、酒に酔って抵抗が難しい状態だった女性検事に対し、性的暴行を加えた罪に問われている。

 北川被告は、2024年10月の初公判で「公訴事実を認め、争うことはしない」として謝罪。ところが、その2か月後には「同意があったと思っていた」などとして一転無罪を主張する方針を明らかにした。

 女性検事は、これまでの会見で「検察のトップにいた元検事正が主張を二転三転させて被害者を翻弄し、世にまん延する『同意があったと思っていた』などという姑息な主張をすることが、私だけでなく、今まさに性犯罪被害で苦しんでいる方々をどれほどの恐怖や絶望に陥れ、被害申告をすることを恐れさせているか」と訴えている。

 さらに女性検事は、北川被告の元秘書で事件当日の会食に同席していた女性副検事について、国家公務員法違反や名誉毀損などの疑いで大阪高検に刑事告訴・告発した。女性副検事が、北川被告側に捜査情報を漏洩した上、検察庁職員やOBに対して「女性検事は事件当時、酩酊状態ではなかったので行為に同意があったと思う。PTSDの症状も詐病で、金目当ての虚偽告訴ではないか」などと誹謗中傷し、虚偽の内容を故意に吹聴したとするものだ。

■女性検事への支援の輪が広がる 被告や副検事に対する厳正な捜査を求め署名提出へ

 こうした事件が明るみになった後、女性検事を支援する会が立ち上げられ、支援の輪は急速に広がっている。

 会の発起人は、過去に女性検事と共に、性犯罪を含む凶悪犯罪の捜査に取り組んだ元警察官の男性だ。また、女性検事が捜査を担当した事件で、被害者にともに寄り添った公認心理師も、中心メンバーの1人だ。

 2人は15日、読売テレビの取材に応じ、会を立ち上げた経緯について「検事としての女性は、誰よりも被害者思いだった。熱い心を持って事件捜査に携わり、被害者に寄り添っていた。そんな検事から『出勤途中に涙が止まらなかった』という言葉を聞き、いてもたってもいられなくなり、何とか力になれないかと思った」と話した。

 支援する会には、性犯罪被害者の支援団体や被害に遭った当事者、法曹・ジャーナリストなど各業界から有志が集まり、現在までに200人近くに上っているという。

 さらに会はオンライン署名を12日に開始。法務省や検察庁などに対し、北川被告と女性副検事を厳正に捜査して真相を解明することを求めるものだ。署名は17日午後4時半時点で約4万9000筆集まっていて、近く提出するとしている。

 支援者らは「たくさんの人が声を上げて支援のメッセージを送ってくれている。この声を形にして届けることで、女性検事が再び検事として職場に戻れることを目指す」と訴えている。


 一方、署名の提出予定先の1つである大阪高検は「コメントすることはない」としている。

 女性検事は支援の声について、「性犯罪被害を訴える際、誰にも理解されないのではないかと思い怖かったが、支援の声を受けて一人ではないのだと感じることができ、とても力になっている」と話した。

 主張が真っ向からぶつかる見通しの裁判。今後の行方を、女性検事にエールを送る多くの性犯罪被害当事者・支援者らが注視している。

最終更新日:2025年1月19日 9:00
読売テレビのニュース