フェンシングの折れた剣を包丁に再生 東京五輪金・見延和靖の地球に優しいプロジェクト
■産業廃棄物の折れ剣を包丁に再生
フェンシングでは年間4~5本の剣が折れ、それらは産業廃棄物として捨てられます。
剣はロケットや航空機にも使われる特殊な素材で作られるため、焼却の際に大気汚染につながるおそれもあるといいます。
そこで日本代表の練習場に折れた剣の回収ボックスを設置。それらを集め、再生させたのが“包丁”です。
見延選手は「社会に対して恩返しじゃないですけど、何か返せるような活動ができないかなという思いが一番の大きなことになったと思います」と話します。
■再生した包丁の切れ味は・・・?
私生活では、心を整えるために包丁を研ぐ独特なルーティンを持つ見延選手。再生された包丁の切れ味を確認すると、トマトを手で押さえなくてもスライスできるほどの切れ味でした。
見延「すごい切れ味ですよね。もう手を使わずしてすっと切れていくんですよ。なかなか普通の包丁でもここまでの切れ味は出ないと思うんですけど、ちょっと正直驚きました」
■特殊な素材由来の“しなり”と、世界と戦った結晶の“溝”
再生された包丁には剣の素材を生かした特徴があると言います。
それが”しなり”。
フェンシングの剣には、曲がる特殊な素材が使われているため、剣から再生した包丁もよく曲がります。曲がる包丁はプロのシェフが魚をさばく際に重宝すると言います。
さらに最大の特徴が、包丁の表面にある模様。この部分は、フェンシングの剣にある溝の跡が残ったもの。
この模様を残す意図について、見延選手は「もちろん模様を消すこともできるかもしれないですけど、あえて残すことで世界と戦うために汗水流したこの結晶を感じ取ってもらえたら僕としてもうれしいなという思い」と語ります。
見延選手の思いに賛同した地元・福井県越前市が、折れた剣から再生した包丁をふるさと納税の返礼品に採用しました。
見延「日本代表が思いを込めて使ったものを、その気持ちもアップサイクルしていくというところもこのプロジェクトに込められた思いであるので、今後も作っていけたらなと思っています」