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【五十嵐のエース論】燕・奥川恭伸に期待

2021年12月27日 17:08
【五十嵐のエース論】燕・奥川恭伸に期待

近年まれに見る接戦となった今シーズンの日本シリーズ。結果は4勝2敗でヤクルトがオリックスをくだし、20年ぶりの日本一をつかみ取りました。

この決戦の大事な初戦、ヤクルトの先発マウンドに立っていたのは高卒2年目、弱冠20歳の奥川恭伸投手でした。

ランナーを許すものの、丁寧なピッチングでオリックス打線に決定打を許さず、7回1失点の好投。試合はリリーフ陣が打たれ敗れたものの、奥川投手自身はオリックスのエース・山本由伸投手を相手に一歩も引かぬ投手戦を演じてみせました。

この第1戦をカギと読んでいたのが、ヤクルトとソフトバンクで日本シリーズに5度出場し、すべてで日本一を経験した五十嵐亮太さん。

「いい試合でしたよね。ある程度、投げ合いというのは誰もが想定していたと思います。2年目の奥川投手があの大舞台で投げたことは彼にとってもかなりプラスになるし、チームにとっても価値のあるものでした」

<日本シリーズ第1戦 両先発成績>

◆ヤクルト奥川恭伸投手 7回97球
  被安打6 奪三振3 四球2 失点1

◆オリックス山本由伸投手 6回112球
  被安打5 奪三振9 四球2 失点1


プロ1年目は1軍でわずか1試合の登板に終わった奥川投手。今シーズンは、中10日以上空ける変則的なスケジュールで18試合に先発しました。抜群のコントロールを誇り、54回1/3イニング連続で無四球を続けるなど、シーズントータルでも与えた四球の数はわずか「10」。チームトップに並ぶ9勝をあげ、リーグの新人特別賞を受賞しました。

「コントロールであったり抑えるためのコツみたいなものを投げながらつかんできたのかなと思います。ボールの意味、サインの意図というのを感覚的に理解していった部分が大きい」と五十嵐さんは言います。

さらに、「投手というのは自分のパフォーマンスがベストではないときにどうしなければならないか。ベストを追い求めるのか、それともその中で結果を残そうとするのか。奥川投手は前者、自分がベストでないときにベストを追い求めていたと思うんです。でもシーズン途中から、ベストでない中でどういうピッチングをしなければいけないか、どう持ち味を出すか考え方を変化させたと思います。ギアの上げ方や集中力、今シーズンかなり彼が成長したポイントかなと思います」と奥川投手の成長を分析しました。

星稜高校時代から甲子園を沸かせ、大きな期待を持ってヤクルトに迎えられた奥川投手。今シーズン、9勝を挙げ“プチ”ブレイクを果たしたことで、早くも「エース」として推す声もあがっています。

しかし、「エースと呼びたい気持ちもわかります。もちろん年間通してやったんですけど、じゃあ中6日でいけたかといえばそうではない。チームが彼の体や色んなことを考慮したシーズンでした。ここでエースと呼ばれるのは、彼も本望ではないと思います」と五十嵐さん。

「まだできると思っているでしょうし、勝ち星ももっと重ねられる。ある程度、年齢を重ねて、成績を残して初めて評価されるんです。気づいたときにはそう呼ばれているんです。僕もあえてここでエースと呼びたくないかなと思います。それでも、それくらいの自覚をもってプレーしてほしいという気持ちは強いです」

ヤクルトを背負う投手になってほしいという願いを込め、“未来のエース”へ辛口エールを送りました。